オーストリア鉄道貨物、中欧シルクロード中回廊で物流量が数倍に video poster
ロシア・ウクライナ紛争以降、中国と欧州を結ぶ鉄道「シルクロード」の中回廊で貨物量が急増しています。国際ニュースとしても注目されるのが、オーストリアの鉄道貨物大手がこのルートで物流量を数倍に伸ばしているという動きです。
中欧シルクロード「中回廊」で何が起きているか
欧州で2番目の規模を持つ鉄道貨物会社ÖBB Rail Cargo Groupは、中国と欧州を結ぶシルクロード鉄道の「中回廊」で取り扱う貨物量をここ数年で大きく増やしてきました。同社によると、このルートの貨物量は「数倍」に増加しているといいます。
同社のクレメンス・フェルスト最高経営責任者(CEO)は、中国の国際メディアCGTNの取材に対し「特に2024年と2025年に非常にダイナミックな成長が見られる」と述べました。2025年現在も、その成長トレンドは続いているとみられます。
オーストリアの首都ウィーン南ターミナルには、中国からのコンテナがカスピ海経由のルートで次々と到着しており、これまであまり使われてこなかった中回廊が、近年急速に存在感を高めています。ÖBB Rail Cargo Groupは2008年から中国との直通輸送を手がけており、今ではこの中回廊が同社にとって重要な成長市場になりつつあります。
ロシア・ウクライナ紛争と制裁が変えた物流の構図
背景には、ロシア・ウクライナ紛争とそれに関連する対ロシア制裁があります。紛争の発生以降、多くの企業がロシアやウクライナを通過するルートの利用を見直してきました。
ÖBB Rail Cargo Groupもその一社で、従来はシベリア経由の「北回廊」を中心に運行してきましたが、ウクライナ関連の制裁措置などを受け、ロシアとウクライナを回避できる中回廊に重点を移しつつあります。この動きにより、中回廊はオーストリアだけでなく欧州全体の物流ネットワークにおいても重要性を増しています。
日本を含むアジアの企業にとっても、欧州向けサプライチェーンの安定性を考えるうえで、こうしたルートの多様化は無視できないテーマになっています。
「北回廊」との違い:ボトルネックと時間短縮の余地
従来主流だったシベリア鉄道経由の北回廊は、ロシアを横断する比較的一本の大動脈で、国境を越える回数も限られていました。それに対し、今回注目されるカスピ海経由の「中回廊」は、複数の国境と海上区間をまたぐ複雑なルートです。
具体的には、鉄道と船を組み合わせてカスピ海を横断する必要があり、その分だけ次のような課題が生じます。
- 通関や検査など国境ごとの手続き
- 鉄道と船を乗り継ぐ際の積み替え作業
- 港湾やターミナル設備の容量制約
こうしたボトルネックがある一方で、ÖBB Rail Cargo Groupは輸送時間の短縮余地があるとみています。
今後、各国間の手続きの標準化やデジタル化、港湾設備への投資などが進めば、中回廊の所要時間と信頼性がどこまで高められるかが注目されます。
オーストリアはなぜ「ハブ」になり得るのか
オーストリアは地理的に欧州のほぼ中央に位置し、ウィーン南ターミナルは中東欧や西欧への鉄道網が交わる結節点です。ここに中国からのコンテナ列車が直接乗り入れることで、中欧や南欧を含む広いエリアへ貨物を振り分けることができます。
ÖBB Rail Cargo Groupが2008年から中国との直通輸送に取り組んできたこともあり、同社は中国と欧州を結ぶ鉄道物流で経験とネットワークを蓄積してきました。中回廊の成長は、オーストリアを経由する新たな物流ルートが整いつつあることを意味します。
これにより、欧州内の企業は、海上輸送だけに頼らず、鉄道を使った中距離・長距離輸送の選択肢を増やしつつあります。
日本の読者が押さえておきたいポイント
シルクロード中回廊の拡大は、日本やアジアの企業・生活者にとっても無関係ではありません。いくつかのポイントを整理しておきます。
- 特定のルートや地域に依存しないサプライチェーンの構築が、ますます重要になっている
- 地政学的なリスクが、輸送コストや納期に直接影響する時代になっている
- 鉄道と船を組み合わせた「マルチモーダル輸送」が、国際物流のカギになりつつある
中回廊の整備が進めば、アジアから欧州への物流戦略はさらに多様化していく可能性があります。企業の調達や販売の戦略だけでなく、私たちが日常で手にする製品の価格や入手のしやすさにも、こうした国際物流の変化が少しずつ影響していくかもしれません。
Reference(s):
Austria's rail cargo 'multiplies volumes' on the middle Silk Road
cgtn.com








