解説:自民党新総裁・高市早苗氏は本当に首相になれるのか
自民党(自由民主党)新総裁となった高市早苗氏は、本当に日本の首相になれるのか――2025年10月の政局では、この問いをめぐって与野党の駆け引きが続いていました。本記事では、首相指名選挙を前に浮上していた3つのシナリオと、その背景を整理します。
石破首相退任と10月21日の首相指名選挙
2025年10月21日に召集された臨時国会(国会=日本の議会)では、退任する石破茂首相の後任を選ぶための首相指名選挙が実施されることになっていました。与党と野党は、この国会で誰を日本の新しい首相にするのかをめぐり、激しい駆け引きを続けていました。
なかでも注目を集めたのが、自民党の新しい総裁に就任した高市早苗氏です。自民党総裁は通常、首相指名選挙で与党第一党の候補として擁立されるため、高市氏がそのまま日本初の女性首相となるのかが焦点となりました。
自民党新総裁・高市氏と与党再編のインパクト
高市氏は10月4日の自民党総裁選で勝利し、党の新たなリーダーとなりました。しかし、その直後に長年の与党パートナーだった公明党が連立から離脱し、自民党は単独での政権運営を迫られる可能性が出てきました。
このことは、首相指名選挙での票読みを大きく複雑にしました。自民党は依然として国会で最大勢力ですが、過半数を確実にするには他党の協力がほぼ不可欠な状況となったためです。
野党3党の協議と共通候補模索
こうした中、立憲民主党、国民民主党、日本維新の会という3つの野党は、首相指名選挙に向けた共通候補の擁立を模索していました。3党はいずれも一定数の議席を持ち、結束できれば高市氏の首相就任を阻止する可能性もありました。
3党の党首は水曜日に会談を行い、連携の道を探りましたが、政策面での隔たりが大きく、合意には至りませんでした。
一方で、日本維新の会は木曜と金曜の2日連続で自民党と政策協議を実施し、連立や何らかの協力関係の可能性を探りました。共同代表の藤田文武氏は、協議が大きく前進したと述べ、最終的な合意に向けた調整に入るとし、他の野党2党との協議を打ち切る考えを示しました。
最大野党の立憲民主党は、日本維新の会が自民党との協議に軸足を移したことを受け、次の首相指名選挙では自党の野田佳彦代表に票を集める方向で検討を進めると表明しました。
カギを握る日本維新の会と政策のすり合わせ
首相指名選挙で自民党と高市氏を支えるかどうか、日本維新の会の判断は高市氏の首相就任の可能性を大きく左右すると見られていました。
自民党と日本維新の会は、憲法改正、外交、安全保障などの基本政策では一定の共通点を確認しています。一方で、消費税や政治献金といったテーマでは立場の違いが大きく、連立政権に踏み込めるかどうかは不透明でした。
日本維新の会の共同代表で大阪府知事でもある吉村洋文氏は、年末までに国会議員の定数削減について具体的な削減数を明記することが連立入りの絶対条件だと強調し、この点で合意できなければ自民党との連立には加わらないと主張しました。
これに対して、自民党のベテラン議員である逢沢一郎氏は、ソーシャルメディア上で、自己犠牲的な改革は必ずしも議員定数の削減を意味するものではないと反論し、吉村氏の案は地方の代表を減らしかねないとして、到底受け入れられないとの認識を示しました。
元外交官で現在は研究者の東郷和彦氏は、中国メディアグループの取材に対し、自民党と日本維新の会の間にはなお重要政策をめぐる深い溝があり、中でも政治とカネの関係が最も調整の難しい論点だと指摘しました。
東郷氏は、国民が何よりも求めているのは生活の改善と政治資金の透明性だと強調しました。また、外交面では、日本の国際的な信頼を損なわないことが重要であり、2006年から2012年にかけて6人の首相が短期間で交代した、いわゆる回転ドア型の政権運営を繰り返さない安定したリーダーが求められると述べました。
3つのシナリオ:高市氏が首相になる条件
10月時点の情勢からは、首相指名選挙の行方として大きく3つのシナリオが取り沙汰されていました。それぞれの意味を整理してみます。
シナリオ1:自民党+日本維新の会による連立政権
最初のシナリオは、自民党と日本維新の会が正式に連立を組み、高市氏が首相に選出されるパターンです。この場合、両党は政策の共通点を軸に協力し、憲法改正や安全保障などの課題に取り組む可能性があります。
ただし、この組み合わせでも衆議院、参議院のいずれにおいても単独での過半数には届かない見込みとされ、いわゆる少数与党としての船出になります。法案審議や予算成立のたびに他党の協力を得る必要があり、政権運営は不安定になりかねません。
さらに、日本維新の会が求める議員定数削減や税・政治資金改革で自民党とどこまで折り合えるかも課題であり、連立の枠組み自体が揺らぐリスクもあります。
シナリオ2:自民党単独政権での首相就任
2つ目のシナリオは、自民党が連立を組まずに単独政権を維持し、高市氏が首相に選出されるケースです。日本維新の会などとの連立が実現しなくても、野党側が候補者を一本化できなければ、自民党が国会内の最大勢力であるという事実を背景に、高市氏が首相指名選挙を制する可能性があります。
しかし、この場合も衆参いずれか、あるいは両方の院で過半数を確保できない可能性があり、政権運営はむしろ困難になります。法案や予算を通すたびに野党側との個別協議が必要となり、その過程で政策が大きく修正されることも予想されます。
シナリオ3:野党連立による首相選出
3つ目のシナリオは、複数の野党が連立を組み、自民党以外の候補を首相に押し上げるパターンです。現状では、いわゆる中道左派とされる勢力の合計議席は自民党に及ばない可能性があり、実現性は相対的に低いと見られていました。
もし野党連立が成立するとすれば、右寄りの政党も含む幅広い勢力が参加する形となります。その場合、たとえ首相指名選挙で多数を確保できても、連立内部の政策の違いが大きく、政権運営は非常に難しいものになると予想されます。
有権者の視点:数字よりも問われるもの
このように、高市氏が首相になれるかどうかは、単に国会の議席数だけでなく、どの政党がどの条件で手を組むのかという政治交渉の行方に大きく左右されていました。
一方で、東郷氏が指摘するように、多くの人にとっての関心は生活の安定と政治資金の透明性、そして日本の国際的な信頼をどう守るかという点にあります。誰が首相になるかという権力ゲームの背後で、こうした根本的なテーマにどこまで具体的な答えが示されるのかが、今後も問われ続けることになりそうです。
Reference(s):
Explainer: Can LDP leader Takaichi become Japan's prime minister?
cgtn.com








