米上院、ブラジル向けトランプ関税撤廃法案を可決 国家緊急事態を終了へ
米国の対ブラジル関税をめぐり、共和党が多数を占める米上院が、トランプ大統領の「国家緊急事態」宣言を終了させて関税を撤廃する法案を可決しました。貿易と物価、そして大統領権限をめぐる攻防が、2025年の米政治の重要な焦点になりつつあります。
何が決まったのか:ブラジル向け関税撤廃法案
上院は現地時間の火曜日、トランプ大統領がブラジルに課している関税を終了させる法案を、52対48の賛否で可決しました。共和党議員5人が造反し、民主党とともに賛成に回った形です。
この法案は、トランプ大統領が7月に宣言した国家緊急事態を終わらせる内容です。この緊急事態は、ブラジルがジャイル・ボルソナロ前大統領を「クーデター未遂」容疑で訴追したことへの対抗措置として宣言されたもので、その根拠に基づいて関税が課されてきました。
争点となる「国家緊急事態」とトランプ関税
今回の国際ニュースの背景には、トランプ大統領による国家緊急事態宣言の使い方への疑問があります。上院民主党は、トランプ大統領が一部の関税を正当化するために「虚偽の緊急事態」を利用していると主張し、強く反発しています。
民主党側は、こうした貿易措置によって対象となる品目や商品価格が上昇し、米国の消費者や企業が打撃を受けていると指摘。今後も繰り返し採決を迫り、関税を逆転させる動きを続けるとしています。
下院では「壁」 共和党主導の行方
可決されたブラジル向け法案は、次に共和党が主導する米下院に送られます。ただし、成立への道のりは平坦ではありません。これまで下院共和党は、トランプ関税を撤廃しようとする法案の扱いを繰り返し拒んできました。
実際に今年4月、上院はカナダ向けトランプ関税を終わらせる法案を可決しましたが、より広く大統領のグローバルな関税権限を制限する案は否決されました。いずれの法案も下院には進まず、今回のブラジル法案も同様に「下院の壁」に阻まれる可能性が高いとみられています。
ブラジル側の主張とトランプ政権の見方
ブラジル側は、過去15年間で米国がブラジルとの貿易で4100億ドルの黒字を出していると指摘し、米側が不当にブラジルを標的にしているとの不満をにじませています。これは、米国にとってブラジルとの貿易が大きな利益を生んでいるという主張です。
一方で、トランプ大統領の大統領令は、ブラジルが米国の国家安全保障、外交政策、そして経済を脅かしていると主張しています。また、ボルソナロ氏が「政治的に迫害されている」とも述べ、ブラジルの司法手続きに異議を唱える内容になっています。
物価と消費者への影響:民主党が訴える「関税のコスト」
上院民主党が関税撤廃にこだわる理由の一つは、米国内の物価上昇への懸念です。関税は輸入品のコストを押し上げるため、最終的には消費者価格や企業の仕入れコストに跳ね返りやすい政策手段とされています。
民主党は、ブラジルやカナダなどを対象にしたトランプ関税が、特定の品目の価格上昇を通じて米国民の生活を圧迫していると主張。物価高への不満が高まるなかで、「消費者を守る」というメッセージを明確に打ち出し、繰り返し採決を迫る構えです。
今後の焦点:カナダなど他国向け関税の行方
今回のブラジル向け法案は、上院で予定される3本の関税関連法案の「第1弾」とされています。法案が可決された当時、カナダや他の国々に対するトランプ関税を撤廃する動きも、同じ週に上院で採決にかけられる見通しだと伝えられていました。
ただ、今年4月のカナダ向け法案が下院で止まった経緯を考えると、ブラジル向け関税撤廃の試みも「上院は賛成、下院は抵抗」というねじれ構図が続く可能性があります。共和党の対トランプ姿勢がどこまで変化するかが、今後の大きな注目点です。
日本と世界への意味:大統領権限と通商政策の揺れ
今回の国際ニュースは、単に米国とブラジルの二国間関係にとどまらず、「国家緊急事態」を通じて大統領がどこまで通商政策を動かせるのかという、米国の統治システムに関わる問題でもあります。
世界最大級の経済大国である米国の関税政策が揺れると、サプライチェーンの再編や企業の投資判断を通じて、日本を含む他の国々にも影響が及びます。2025年の世界経済を考えるうえで、こうした米議会内の力学がどのように変化していくのかを、今後も丁寧に追う必要がありそうです。
Reference(s):
U.S. Senate passes bill to terminate Trump tariffs against Brazil
cgtn.com








