レバノン大統領、イスラエル軍の南部侵入受け軍に対抗指示
レバノン大統領、イスラエル軍の南部侵入受け軍に対抗指示
中東の国際ニュースとして注目されるレバノン南部情勢で、レバノン大統領ジョセフ・アウン氏がイスラエル軍の越境侵入を受け、軍に対して「あらゆる侵入に立ち向かう」よう指示しました。2024年11月の停戦合意から約1年が経つなか、国境地帯の緊張が改めて浮き彫りになっています。
この記事のポイント
- レバノン南部ブリダにイスラエル軍が侵入し、市職員が死亡
- ジョセフ・アウン大統領が軍に対し、あらゆる侵入に立ち向かうよう指示
- 停戦監視委員会に「違反の記録」から一歩進んだ対応を要求
- 2024年11月の停戦合意から約1年、国境地帯の緊張が続く
南部ブリダで何が起きたのか
レバノンの国営通信NNAによると、事件が起きたのは水曜未明の午前1時30分ごろです。イスラエル軍の部隊がレバノン南部の国境村ブリダに侵入し、国境線から1キロ以上レバノン側に進入したとされています。
部隊はブリダの自治体庁舎に突入しました。この建物には、夜間も勤務していた自治体職員イブラヒム・サラメ氏が滞在しており、イスラエル兵による銃撃を受けて死亡したと報じられています。
住民らは、作戦中に建物から悲鳴や助けを求める声が聞こえたと証言しており、イスラエル軍が撤収する午前4時ごろまで緊張が続いたといいます。
イスラエル軍は夜間にブリダで作戦を実施した事実を認めたうえで、「ヒズボラのインフラを破壊する作戦中に、即時の脅威を確認したため発砲した」と説明しています。軍は現在、この事案を検証中だとしています。
大統領、軍に「いかなる侵入にも立ち向かえ」と指示
こうした中、レバノンのジョセフ・アウン大統領は木曜日、首都近郊のバアブダ宮殿でレバノン軍司令官ロドルフ・ハイカル氏と会談しました。大統領府の発表によると、アウン氏は南部でのイスラエル軍の侵入を受け、レバノン軍に対し、今後あらゆるイスラエルの侵入に立ち向かうよう指示しました。
アウン大統領は、今回の襲撃を「イスラエルによる一連の攻撃の一部」だと非難し、この事件が停戦監視委員会の会合直後に起きたことを指摘しました。
停戦監視委員会には「記録以上の行動」を要求
大統領は、イスラエルとヒズボラの停戦を監視する委員会に対しても、従来のように違反を記録・報告するだけでなく、イスラエルに停戦合意の順守を迫る具体的な措置を取るよう求めました。
アウン氏は、イスラエルによるレバノンの主権と領土の「侵害」が続いているとし、2024年11月の停戦合意に基づく義務を履行させるため、より強い圧力が必要だとの認識を示しています。
米仏仲介の停戦から約1年、それでも残る緊張
ヒズボラとイスラエルの間では、米国とフランスの仲介により2024年11月27日から停戦合意が発効しています。この合意によって、ガザ地区での戦争のさなかに激化した両者の衝突の多くは沈静化したとされています。
しかし、停戦が続く一方で、イスラエル軍はレバノン領内への断続的な攻撃を続けており、「ヒズボラの脅威」を標的にしていると主張しています。また、レバノン国境沿いには5カ所の主要拠点に部隊を駐留させ続けています。
今回のように部隊が国境を越えて1キロ以上侵入し、住民がいる自治体庁舎で致命的な結果を招いたことは、停戦の「脆さ」を象徴する出来事だと受け止められています。
イスラエル側の説明とレバノン側の不信
イスラエル軍は作戦の目的を「ヒズボラのインフラ破壊」と説明し、発砲は即時の脅威に対処するためだったと主張しています。一方、レバノン側は、今回の襲撃を含む一連の行動を、自国の主権と南部住民の安全を脅かす攻撃だとみなしています。
犠牲となったイブラヒム・サラメ氏は、ブリダ自治体の職員として夜間も庁舎にとどまっていたとされます。住民が聞いたという悲鳴や助けを求める声の証言は、国境地帯で暮らす人びとが感じている不安と脆弱さを浮かび上がらせています。
市民生活への影響:日常と隣り合わせの緊張
南レバノンの村々にとって、国境の緊張は抽象的な安全保障問題ではなく、日常生活と切り離せない現実です。深夜の軍事作戦、上空を飛び交う砲声や爆発音、いつどこで衝突が起きるか分からない不安が、住民の暮らしに影を落としています。
今回のブリダでの事件は、停戦合意が続いている状況でも、地方自治体の庁舎のような「公共の場」が完全には安全とは言い切れないことを示しました。住民の安全をどう守るのかは、レバノン当局にとって切実な課題になっています。
日本から見ると遠い地域の国際ニュースに思えるかもしれませんが、停戦をどう守るか、市民の安全をどう優先するかという問いは、私たち一人ひとりにも考える材料を投げかけています。
今後の焦点:外交と軍事のバランス
アウン大統領が軍に対抗措置を指示したことで、南部国境では今後、レバノン軍とイスラエル軍のにらみ合いが強まる可能性があります。他方で、停戦合意を仲介した米国やフランスを含む国際社会が、緊張のエスカレーションを防ぐため、どのような働きかけを行うのかも注目されます。
国境の安全と主権の防衛を掲げるレバノンと、自国の安全保障上の脅威を強調するイスラエル。その主張の隔たりをどこまで埋められるのか。今後の停戦監視委員会の動きと、現場の住民の声の両方を追う必要がありそうです。
Reference(s):
cgtn.com








