カリブ海を襲うハリケーン・メリッサ、死者30人近くに ジャマイカとハイチで深刻被害
カリブ海で大型のハリケーン・メリッサが猛威を振るい、ジャマイカやハイチ、バハマなどで死者は少なくとも約30人に迫っています。記録的な強さと「遅さ」を併せ持つこの嵐は、すでに脆弱になっていた地域社会に深刻な打撃を与えています。
メリッサは現地時間水曜日までにカリブ海北部を通過し、キューバ第2の都市を激しく襲った後、数百にのぼる農村コミュニティを孤立させたと伝えられています。各地で道路や橋が寸断され、被害の実態把握が難しくなっています。
ジャマイカを直撃した観測史上最強クラスの暴風
現地時間火曜日、ハリケーン・メリッサはジャマイカに上陸し、観測史上ジャマイカを直接襲った中で最強となる暴風をもたらしました。最大風速は時速185マイル(時速298キロ)に達し、ハリケーンの最上位に当たるカテゴリー5の基準を大きく上回ったとされています。
米国の民間予報会社アキュウェザーは、メリッサをカリブ海で記録されたハリケーンの中で3番目に強く、かつ最も動きが遅い部類に入ると分析しています。そのため強風だけでなく、長時間にわたる豪雨と高潮が各地に大きな被害をもたらしました。
アキュウェザーは、ジャマイカだけで経済的損失と物的被害が220億ドルに達する可能性があると見積もっており、復旧には10年以上かかるおそれがあるとしています。首都キングストンは最悪の直撃を免れ、国際空港も木曜日に再開される見通しですが、水曜日の朝の時点でジャマイカ全体の約77%が停電したままと伝えられました。
メリッサはジャマイカ南西部に上陸し、昨年のハリケーン・ベリルですでに大きな被害を受けていた地域を再び直撃しました。農業地帯セント・エリザベスでは洪水により4人の遺体が流れ着いたと地元当局は明らかにしています。
ジャマイカ政府は復旧作業開始の「安全宣言」を出しましたが、家を失った人が後を絶たないため、今週いっぱいは避難所を開け続ける方針です。地方自治相デズモンド・マッケンジー氏によると、すでに2万5000人以上が避難所に身を寄せており、「避難所から誰一人として追い返してはならない」と強調しました。
病院で続いた懐中電灯の一夜
メリッサの爪痕は医療現場にも及びました。セント・エリザベス唯一の公立病院であるブラック・リバー病院には、屋根が吹き飛ばされた建物や、倒れた電柱、がれきで覆われた畑の様子が空撮映像で映し出されています。
アンドリュー・ホルネス首相が病院を視察した際、職員たちは、家族の安否を案じながら懐中電灯の明かりだけを頼りに一晩中患者のケアを続けたと語りました。
ある職員は「人生で最も恐ろしい経験でした。想像をはるかに超えるもので、ある瞬間はまるでミサイルがガラスを貫いていくかのようでした」と振り返っています。
直接上陸しなくても…豪雨に苦しむハイチ
メリッサは、カリブ海で最も人口が多いハイチ本土には直接上陸しなかったものの、数日にわたる大雨をもたらしました。ハイチ当局によると、首都ポルトープランスの西約64キロに位置する沿岸都市プチゴアヴを中心に少なくとも25人が死亡しています。
同地域では川が氾濫し、少なくとも子ども10人を含む多くの住民が犠牲となりました。行方不明者は少なくとも12人とされ、全国で1000戸以上の住宅が浸水、約1万2000人が緊急避難所に身を寄せています。
ハイチでは、長引く武装勢力の衝突によりすでに130万人以上が国内避難民となり、仮設キャンプでの生活を強いられています。そこへ今回の豪雨と洪水が追い打ちをかけ、地面がぬかるんで座ることも眠ることもできない状況だといいます。住民からは、行政や支援団体による物資の到着が遅いとの声も上がっています。
南部レカイに避難している男性フォーチュン・ヴィタルさんは、家族と離ればなれになり、もともと十分な食料もなかったとしたうえで「これだけの問題をすでに抱えているところに、ハリケーンまで重なれば、私たちは単純に死ぬしかない」と切実な思いを語りました。
バハマ、タークス・カイコス、バミューダも警戒続く
現地時間水曜日午後8時の時点で、メリッサはバハマ諸島を北東へ進むカテゴリー1のハリケーンとなり、強風と豪雨、高潮を伴っていました。バハマ政府はこれに先立ち、これまでで最大級とする避難作戦を実施し、約1500人を航空機で安全な場所に移送したとしています。
バハマや近隣のタークス・カイコスの住民は自宅にとどまり、暴風雨に備えて身を固めています。北東約1440キロ離れたバミューダでも、木曜日からのハリケーン級の荒天に備え、住民が準備を進めています。
「遅くて強い」ハリケーンがもたらす破壊
アキュウェザーは、メリッサをカリブ海で観測された中でも3番目に強いハリケーンであると同時に、極めて動きが遅い嵐だと指摘しています。進行速度が遅いハリケーンは、同じ場所に長時間とどまり続けるため、雨量が増え、浸水や土砂災害のリスクが高まります。
ジャマイカやハイチでは、インフラが十分に整っていない地域や、すでに紛争や過去の災害で疲弊している地域ほど被害が集中しています。昨年のハリケーン・ベリルに続く今回のメリッサは、短期間に連続して大きな嵐に襲われることの重さを改めて突きつけました。
世界各地で極端な気象現象が増える中、カリブ海のような島しょ・沿岸地域は特に脆弱だと指摘されてきました。今回の事態は、気候変動への適応策や、防災インフラへの投資をどのように進めるのかという国際的な議論とも深く関わっています。
これから問われる復旧と支援、そして備え
被害の全容はまだ見えませんが、現地ではすでに次のような課題が浮かび上がっています。
- ジャマイカやハイチ、キューバの農村部などで、安全な飲料水や食料、医療、仮設住宅をどう確保するか
- ジャマイカで広範囲に及ぶ停電をはじめ、道路や通信などのインフラをどの順番で復旧させるか
- ハイチで既に国内避難民となっている人びとに加え、新たな避難者をどう支え、避難所をいつまで維持するか
- 今後も続くとみられる大型ハリケーンに備え、早期避難や頑丈な避難所づくりなど、地域社会の防災力をどう高めるか
遠く離れたカリブ海の出来事に見えるかもしれませんが、気候危機や自然災害への備えという意味では、日本を含む世界共通の課題でもあります。この国際ニュースをきっかけに、私たち自身の暮らしや都市が同じような事態に直面したとき、何ができるのかを静かに考えてみる必要がありそうです。
Reference(s):
Death toll mounts to nearly 30 as Hurricane Melissa batters Caribbean
cgtn.com








