ウィーン「1日1ユーロ定期券」終了へ 財政逼迫で運賃値上げ video poster
世界有数の住みやすい都市として知られるオーストリアの首都ウィーンが、象徴的だった「1日1ユーロ」の公共交通定期券を終了し、運賃値上げに踏み切る方針を示しました。財政のひっ迫を背景にしたこの決定は、都市の魅力を支えてきた交通政策の転換として注目されています。
何が起きているのか
ウィーンはこれまで、公共交通の年間パスを「1日あたり1ユーロ」で利用できる画期的な制度を導入し、市民や訪れる人々の移動を支えてきました。しかし現在、市の財政が厳しくなっていることから、この「1日1ユーロ」パスは終了し、チケット価格が引き上げられる見通しです。
このパスは、ウィーンが世界の「住みやすい都市」として評価されるうえで象徴的な政策のひとつでした。安価で便利な公共交通は、車に頼らない生活を後押しし、環境負荷の軽減や都市のにぎわいづくりにもつながってきました。
トラムの街ウィーンと住みやすさランキング
作曲家ヨハン・シュトラウスやルートヴィヒ・ファン・ベートーベンゆかりの音楽の都として知られるウィーンは、「トラムと鉄道の街」でもあります。世界有数の規模を誇る路面電車網を運営し、公共交通の利便性は国際的にも高く評価されてきました。
こうした交通インフラを背景に、ウィーンは2018年以降、世界の住みやすい都市指数で5回首位に立ってきました。しかし2025年のランキングでは、テロへの懸念が高まったことから2位に後退しています。今回の運賃値上げは、この評価にさらに影響を与えかねない要因とみられています。
背景にある財政のひっ迫
報道によると、ウィーンが運賃の引き上げに踏み切る理由は、公共財政のひっ迫です。多くの都市と同様に、自治体財政の運営は難しさを増しており、ウィーンも例外ではありません。
短期的には、運賃値上げは公共交通事業の収入増につながります。しかし同時に、価格の魅力が薄れることで利用者が車に戻ってしまえば、渋滞の増加や環境負荷の悪化といった新たなコストを生むおそれもあります。財政と都市の持続可能性をどう両立させるかが、大きな課題です。
専門家「40年続いた戦略が変わってしまった」
ウィーン工科大学でモビリティ(移動)計画を専門とするヘルマン・クノフラッハー氏は、今回の方針転換に強い懸念を示しています。氏はCGTNのインタビューで、次のように指摘しました。
「過去40年間、ウィーンの戦略は、自動車への依存から離れ、歩行者空間の拡充や公共交通、自転車利用を重視する方向へと進んできた。しかし、公共交通の年間パスの値上げによって、この方針が変わってしまった。将来のランキングにも影響する可能性がある。」
クノフラッハー氏の見立てでは、安価で使いやすい公共交通は、単なる移動手段ではなく、都市のあり方そのものを形づくる基盤です。その価格を上げることは、車中心の社会に逆戻りするリスクをはらんでいるというわけです。
都市と移動のこれからを考える
今回のウィーンの動きは、世界の都市にとっても他人事ではありません。気候変動対策や渋滞緩和の面からは公共交通の強化が求められる一方で、財政の制約は現実として存在します。安さ、利便性、財政健全性のバランスをどう取るかは、多くの都市が直面する共通のテーマです。
ウィーンの「1日1ユーロ」パスは、これまで車に依存しない暮らしを後押しし、都市のブランドにも大きく貢献してきました。その象徴的な政策が終わる今後、街の移動の姿や国際的な評価がどのように変化していくのか。2025年以降の住みやすさランキングの動向とあわせて、注視していく必要がありそうです。
Reference(s):
cgtn.com








