米国で史上最長の政府閉鎖36日目 政治対立が生活と経済を直撃
米国で史上最長の政府閉鎖:36日目に突入
米国の連邦政府機関の一部閉鎖が36日目に入り、過去最長を更新しました。つなぎ予算をめぐる与野党の対立が解けないまま、航空の安全や食料支援、景気指標にまで影響が広がっています。
今回の閉鎖は、2018〜2019年の35日間にわたる政府閉鎖の記録を超え、米国史上最長となりました。現地時間の水曜午前0時1分の時点で36日目に突入し、出口はなお見えていません。
上院で14回目の否決、止まらない責任の押し付け合い
前日の火曜日正午、米上院は共和党が提出し下院で既に可決されている短期のつなぎ予算案(暫定予算)について、14回目となる採決に踏み切りました。しかし、可決に必要な60票に届かず、またも成立は見送られました。
1カ月以上続く政府閉鎖の中で、共和党と民主党の指導部は互いに相手を非難し続けており、具体的な妥協の兆しは見えていません。
下院少数党院内総務のHakeem Jeffries氏(民主党)は記者会見で、共和党が医療保険制度改革法(いわゆるオバマケア)の税控除延長を拒んでいると批判しました。これにより「数千万人の米国人の保険料や自己負担額が大幅に増える」と警告し、政府閉鎖の責任は共和党側にあると主張しています。
一方、下院議長のMike Johnson氏(共和党)は別の会見で、この状況を「シューマー・シャットダウン」と呼び、民主党上院院内総務のChuck Schumer氏に矛先を向けました。Johnson氏は、いまの政府閉鎖は医療政策などの中身ではなく、民主党指導部の政治的判断によるものであり、民主党は「党内左派の活動家からの反発を恐れ、政府閉鎖の長期化もいとわない」と批判しました。
暮らしへの影響:航空の安全から食料支援まで
言葉の応酬が続く一方で、史上最長となった政府閉鎖の影響は、人々の暮らしのさまざまな場面で現れています。とくに、航空の安全と食料支援プログラムへの打撃が深刻さを増しています。
- 航空の安全・運航への影響
- 低所得層向けの食料支援
- 無給状態に置かれる連邦職員
運輸長官のSean Duffy氏は火曜日、政府閉鎖が航空の安全リスクを高めていると警告しました。航空管制官が来週、2回目の満額の給与を受け取れない事態になれば、大規模な欠航や、場合によっては空域の一時閉鎖に追い込まれる可能性があるとしています。
米国のフライト追跡サイトFlightAwareのデータによると、全米で毎日、数千便規模の遅延が発生しているということです。
注目度の高い食料支援制度「補助的栄養支援プログラム(SNAP)」も大きな影響を受けています。2人の連邦判事の介入を受けて、トランプ政権は今月分の給付の半分を非常用資金で賄うと発表しましたが、州によっては完全な支給に戻るまで数週間から数カ月かかる可能性があるとされています。
しかしトランプ大統領は火曜日、ソーシャルメディア上で、救済資金の本格的な支給は政府が再開してから行うとの考えを示しました。SNAPは約4,200万人、国民のおよそ8分の1にあたる人々を対象としており、その多くは貧困ライン以下で暮らす人たちです。民主党側は、トランプ氏が「空腹を政治の武器にしている」として強く非難しています。
さらに、100万人を超える連邦職員が無給状態に置かれており、一部は無料の食料配給に並ばざるを得ない状況です。家計の圧迫は個人消費の減少につながり、米国経済全体の下押し要因になりかねません。
景気への打撃と「データの空白」
政府閉鎖は、統計の公表遅れという形でも米経済を揺さぶっています。重要な経済指標の発表が止まり、政策当局や企業が足元の景気をつかみにくくなっているためです。
連邦準備制度理事会(FRB)のJerome Powell議長は最近、政府閉鎖とそれに伴う重要な経済データの欠如が、年末にかけての金融政策決定にどの程度影響するかはなお不透明だと述べました。そのうえで、「霧の中を運転するとき、どうしますか。スピードを落とします」と語り、先行きが見通せない局面では、利上げや利下げといった判断にも慎重にならざるを得ないとの認識を示しました。
米議会予算局(CBO)は、政府閉鎖が長引けば、第4四半期の実質国内総生産(GDP)の年率成長率が1〜2ポイント低下する可能性があると警告しています。閉鎖が6週間続いた場合の経済損失は110億ドル、8週間に及べば140億ドルに達するとの試算も示されました。
有権者の不信感:両党とも「国民とズレている」
長期化する政府閉鎖は、政治そのものへの信頼も大きく揺るがしています。世論調査会社ギャラップの最新調査では、連邦議会を支持すると答えた人は15%にとどまり、約8割の米国の成人が「議会の仕事ぶりを評価しない」と回答しました。
ABCニュース、ワシントン・ポスト、Ipsosによる別の共同世論調査では、「民主党は多くの市民の関心や感覚とかけ離れている」と答えた人が68%に上りました。一方で、「共和党も国民の関心からずれている」と答えた人も61%に達し、政府閉鎖をめぐる対立が与野党双方への不満を同時に高めている実態が浮かび上がっています。
何が問われているのか:政治の機能不全と社会のコスト
今回の政府閉鎖は、医療保険の税控除をめぐる政策論争という側面を持ちながらも、政党間の対立構造そのものが妥協を難しくしていることを示しています。対立が長引くほど、その費用は航空の安全や食料支援、連邦職員の生活といった、社会の基盤を支える分野に広がっています。
今後の焦点は、
- 医療保険をめぐる条件でどこまで歩み寄れるのか
- 連邦職員や低所得層への支援をどのように確保するのか
- 景気への悪影響がどの段階で政治の妥協を促すのか
といった点に移りつつあります。
日本を含む海外の読者にとっても、米国の政治の行方は世界経済の不確実性を左右する重要な要素です。長期化する政府閉鎖は、「政治が機能しなくなったとき、そのコストは誰が負担するのか」という問いを静かに突きつけています。
Reference(s):
U.S. records longest gov't shutdown in history as it enters Day 36
cgtn.com








