米政府閉鎖が最長記録更新へ 上院が暫定予算案を14回否決
米連邦政府の一部閉鎖が続くなか、上院が暫定予算案の採決で再び行き詰まりました。2018〜19年に記録した35日間の閉鎖を上回る見通しとなり、米国史上最長の政府閉鎖に近づいています。影響は航空や食料支援、医療など、生活の基盤に広がりつつあります。
何が起きているのか 上院で14回目の否決
米上院は火曜日、政府機関の当面の資金を確保するための暫定予算案を再び否決しました。否決はこれで14回目となり、政治的な行き詰まりの深刻さが浮き彫りになっています。
今回採決されたのは、下院がすでに可決した暫定予算案で、現行水準の歳出を11月21日まで延長する内容でした。いわゆるクリーンなつなぎ予算で、他の政策条件を付けない形です。
しかし、共和党が多数派を握る上院での採決結果は賛成54票、反対44票。アメリカの上院では、議事妨害と呼ばれるフィリバスターを打ち切るために60票の賛成が必要なため、賛成が過半数を超えても、60票に届かなければ法案は先へ進めません。
この結果、政府閉鎖はなおも続き、2018〜19年の35日間の閉鎖記録を超える軌道に乗ったとされています。
記録更新の懸念 閉鎖長期化が意味するもの
政府閉鎖が長期化すると、連邦政府職員の給与支払い停止や、一部サービスの停止・遅延が広範囲に及びます。今回もすでに、複数の重要な分野で影響が広がっているとされています。
米議会予算局は、閉鎖が8週間続いた場合、米経済に最大140億ドルの打撃となり得ると試算しています。これは、消費や投資の減少に加え、政府サービスの停止が民間部門にも波及することを反映した数字です。
短期の政治的な駆け引きが、長期的な経済コストとして跳ね返ってくる構図が見えてきます。
生活への影響 航空・食料支援・医療にじわり拡大
今回の米政府閉鎖は、抽象的な政治ニュースにとどまらず、人々の生活の基盤をじわじわと揺さぶっています。影響が顕著になりつつある分野として、航空、食料支援、医療が挙げられています。
- 航空分野では、政府職員の勤務体制の乱れなどを通じて、混乱の拡大が懸念されています。
- 食料支援では、低所得層を支える公的プログラムが不安定になっています。
- 医療では、保険加入や保険料をめぐる不確実性が増しています。
食料支援SNAPに軋み 大統領発言も緊張を高める
特に注目されているのが、低所得者向けの食料支援プログラムであるSNAPです。SNAPは、全国で約4200万人、国民の8分の1程度をカバーしており、その多くが貧困ライン以下の所得で暮らしています。
二人の連邦判事が介入したことを受けて、トランプ政権は月曜日、緊急資金を活用し、今月分のSNAP給付の半分を維持すると発表しました。ただし、一部の州では完全な給付再開まで数週間から数カ月を要する可能性があるとされています。
一方で、トランプ米大統領は火曜日、SNSに投稿し、SNAP給付は民主党が政府を再開させてからにすべきだ、といった趣旨の主張を行いました。政府機能の再開をめぐり、食料支援が政治的な圧力の道具となっている構図が見て取れます。
医療保険も焦点に 補助金終了で保険料3割増の可能性
政府閉鎖は医療分野にも影を落としています。オバマケアと呼ばれる医療保険制度の新年度分の加入受付は11月1日に始まりましたが、そのさなかでの閉鎖となりました。
上院民主党のトップであるシューマー院内総務は、SNSで、来年の医療費高騰は共和党の責任だと主張し、医療費負担が増すことへの危機感をあらわにしています。
メディケア・メディケイドサービスセンターは、年末で強化された保険料補助が期限切れとなった場合、平均的な保険料が来年約3割上昇し得ると警告しています。政府閉鎖そのものに加え、補助金の行方が、数千万人の家計に重くのしかかる可能性があります。
責任のなすり合い 激化する党派対立
こうした中で、与野党の責任の押し付け合いは一段と激しさを増しています。
上院多数派である共和党のジョン・チューン院内総務は、Xへの投稿で、民主党側が政府閉鎖を政治的に利用していると批判しました。彼は、民主党指導部の発言を引き合いに出しながら、民主党の対応によって「日々、アメリカ国民の状況は悪化している」と訴えています。
これに対し、民主党のシューマー院内総務は、やはりX上で、来年の医療費高騰は共和党の責任だと反論しました。医療保険の加入期間が始まる中で、約2400万人が厳しい選択を迫られていると指摘し、政府閉鎖が医療費問題を悪化させていると主張しています。
世論は両党に厳しい視線 議会支持率は15%
ただし、世論はどちらか一方に明確な軍配を上げているわけではなさそうです。
世論調査会社ギャラップの最新調査によると、連邦議会に対する支持率は前回から11ポイント低下し、わずか15%にとどまりました。現在、成人の約8割にあたる79%が、議会の仕事ぶりに不満を示しています。
米ニューハンプシャー州のセント・アンセルム大学の政治学者クリストファー・ガルディエリ氏は、通信社の取材に対し、「私が見た世論調査は、政府閉鎖にも、どちらの党にも満足していないことを示している」と述べました。つまり、有権者は党派を超えて、政治そのものに不信感を強めていると解釈できます。
日本の読者への示唆 制度と政治文化が及ぼす影響
今回の米政府閉鎖は、日本の私たちにとっても他人事ではありません。世界最大の経済を持つ国の政治的停滞は、金融市場を通じて世界経済に波及し得るからです。
同時に、制度と政治文化が、市民生活にどう影響しうるのかという問いも突きつけています。例えば、
- フィリバスターのような議会ルールが、少数派にも強い拒否権を与える一方で、合意形成を難しくしていないか
- 予算や政府機能の停止が、政党間の交渉手段として常態化すると、最も弱い立場の人たちにしわ寄せが行かないか
- 政党対立が激化するほど、政治不信が高まり、結果としてどの勢力にとっても長期的な損失になっていないか
こうしたテーマは、米国だけでなく、多くの民主主義国家が直面する課題でもあります。日本でも、社会保障や財政をめぐる議論は避けて通れません。米政府閉鎖のニュースを、単なる海外トラブルとして消費するのではなく、自国の政治や制度を見直す鏡として捉える視点も持っておきたいところです。
今後、米議会とホワイトハウスがどのような形で妥協点を見いだすのか。政府閉鎖が長期化すればするほど、そのコストと教訓は大きくなっていきます。事態の推移を丁寧に追いながら、米政治の行方と世界経済への影響を見ていく必要があります。
Reference(s):
U.S. govt shutdown to break record as Senate fails to pass bill again
cgtn.com








