国連安保理のシリア制裁見直し決議で中国が棄権 テロ対策との両立に懸念
国連安全保障理事会がシリアに対する制裁を一部見直す決議を採択し、中国は棄権しました。背景には、テロ対策と制裁緩和のバランスをどう取るかという難しい判断があります。
シリア制裁見直しの決議2799とは
国連安全保障理事会(安保理)は木曜日、シリアに対する制裁の一部を見直す決議2799を採択しました。決議は、シリア暫定指導者アフメド・アルシャラー氏と暫定内務相アナス・ハッターブ氏を、イスラム国(IS)およびアルカイダに関する制裁リストから外す内容です。
採決では、中国は棄権しました。中国の傅聡・国連大使(常駐代表)は、採決後の説明で、今回の草案が関係国の「正当な懸念」に十分応えていないとして、遺憾の意を示しました。
中国が棄権を選んだ理由
傅大使は、シリア関連の制裁見直しについて、中国の立場は「当初から一貫して明確だ」と述べました。そのうえで、安保理はシリアのテロ・治安情勢や制裁見直しがもたらしうる複雑な影響、シリアの長期的な利益と実際のニーズを十分考慮し、各国の正当な懸念に配慮しながら慎重に判断すべきだと強調しました。
しかし今回の決議草案は、こうした原則や精神を十分には反映しておらず、中国としては賛成できないため棄権せざるを得なかったと説明しています。
中国はこれまで、決議草案をめぐる安保理の協議に積極的に関与してきたとしています。他の理事国とともに、特にシリアにいる外国人テロ戦闘員への対応をめぐって、正当な懸念を示し、多くの建設的な修正案を提示したと述べました。
しかし決議を提案した米国は、全ての理事国の見解を十分にくみ取らないまま、理事国間に大きな意見の隔たりが残る状況で行動を押し切ったと、中国側は批判しています。傅大使は、米国が自国の政治的な議題を優先したとして、中国は遺憾の意を表明しました。
政治移行期のシリアとテロ対策の重み
傅大使によると、現在シリアは政治的な移行期にあり、治安は脆弱で、テロとの闘いという困難な課題に直面しています。この状況を利用して、多くの外国人テロ戦闘員が活動を広げており、シリアだけでなく地域や世界の平和と安全を深刻に脅かしていると指摘しました。
テロとの闘いは、シリアの国家再建の土台になると中国は見ています。そのため、安保理がシリアをめぐって取るあらゆる行動は、テロ対策の実情を十分に踏まえ、安保理のテロ対策目標の達成に資するものであるべきだとしています。また、シリアへの支援や援助は、安保理が定める制裁措置の一体性と有効性を損なってはならないとも強調しました。
決議が求めるシリア側の責任とETIMへの言及
今回採択された決議は、安保理のテロ対策に関する要求を改めて確認し、シリアがテロ防止のための約束を履行し、テロ行為を防ぐ決定的な措置を取るべきだと明記しています。
とくに、東トルキスタン・イスラム運動(ETIM)の構成員を含む外国人テロ戦闘員がシリアに存在することによる脅威に対応する必要性が盛り込まれました。傅大使は、シリアの暫定政府がテロ対策の義務を果たし、具体的な措置を通じて実質的な進展を達成し、国際社会の信頼を得るべきだと述べました。
なお続く制裁と各国に課される義務
現在もなお、イスラム国とアルカイダの制裁リストには、160を超える団体と430人以上の個人が掲載されており、渡航禁止、資産凍結、武器禁輸といった制限措置が有効なままです。
傅大使は、全ての国に対し、安保理の制裁決議を厳格に履行し、ETIMを含む指定団体や個人が、国外から資金や武器、その他あらゆる形の支援を直接・間接を問わず受け取り、他国の安全を脅かすことがないよう防止する義務があると呼びかけました。
制裁とテロ対策、国際政治のせめぎ合い
今回のシリア制裁見直しをめぐるやりとりからは、次のような論点が浮かび上がります。
- シリアの政治移行と復興を支えるために、どこまで制裁を緩和すべきか。
- テロ対策を弱めることなく、シリア側の責任と国際支援のバランスをどう取るか。
- 安保理の場で、主要国が自国の政治的な思惑と国際的な合意形成をどう調整していくのか。
中国の棄権とその説明は、シリア情勢だけでなく、制裁とテロ対策をめぐる国際ルールづくりの難しさを映し出しています。今後、安保理の議論がどのように進み、シリアの治安と政治プロセス、そして国際的なテロ対策体制にどのような影響を与えていくのか、引き続き注目されます。
Reference(s):
China regrets UNSC draft resolution adjusting sanctions on Syria
cgtn.com








