イスラエルが南レバノン空爆 停戦から約1年、再び高まる緊張
南レバノンで、ほぼ1年続いてきたイスラエルとヒズボラの停戦を揺るがす新たな空爆が発生しました。住民への避難警告と民間人の死傷が相次ぎ、地域は再び大規模な衝突の瀬戸際に立たされています。
南レバノン各地で新たな空爆、住民に避難命令
イスラエル軍は木曜日、南レバノンに対する新たな空爆を実施し、「ヒズボラの軍事目標」に対する一連の攻撃を開始したと発表しました。軍報道官は、アル・タイッバ、タイル・デッバ、アイタ・アル・ジャバルなど複数の村の住民に対し、事前に避難を呼びかけています。
レバノン側の情報筋によると、南部トウラの自治体ではイスラエルの空爆により1人が死亡、8人が負傷したほか、タイル・デッバでも1人が負傷しました。
空爆を受け、標的となった地域からは新たな避難が発生し、道路には逃れる車両が集中して渋滞が発生しました。南部ナバティーエ地区では複数の私立学校が、安全確保のため翌金曜日の休校を決めています。
「火による圧力」政策か 11月だけで22回の作戦
今回の攻撃は、ここ数週間で強まっているイスラエル軍の作戦の一部です。レバノン側の情報筋によれば、イスラエル軍は11月第1週だけで22回の軍事作戦を実行しました。その内容は空爆、砲撃、家屋の破壊など多岐にわたります。
これらの作戦により、8人が死亡、10人が負傷し、6棟の住宅が破壊、4台のブルドーザーが焼失したほか、民間の建物やインフラにも広範な被害が出たとされています。今年10月にも、イスラエルの砲撃により28人が死亡、54人が負傷したとレバノン保健省は報告しています。
レバノンの政治アナリスト、ニダル・イッサ氏は状況を「イスラエルによる『火による圧力』政策の一環だ」と分析します。イスラエルが全面戦争に踏み込む前に、自らの条件を押し付けるための圧力をかけているとの見方です。
ヒズボラは抑制維持を模索 「抑止の均衡」を崩さず
一方でイッサ氏は、ヒズボラ側は全面戦争に引きずり込まれないよう注意深く動いていると指摘します。イスラエルが条件として求めているヒズボラの武装解除について、同氏は「レバノンに屈辱を強いるための要求だ」との見方を示しました。
ヒズボラはレバノンの大統領ジョセフ・アウン氏、国民議会議長ナビーハ・ベッリ氏、首相ナワフ・サラーム氏宛ての公開書簡を発表し、イスラエルとの政治交渉に慎重であるよう警告しました。書簡は、イスラエルが武装解除を停戦の条件に組み込もうとしていることを「受け入れられず、停戦宣言にも含まれていない」と批判し、「交渉の罠」に陥らないよう呼びかけています。
レバノン軍は南部で武装勢力排除を進行
軍事面では、レバノン軍も南部での活動を強化しています。レバノン軍の情報機関の高官は、リタニ川以南の地域から武器や戦闘員を排除するため、「全力で作戦を進めている」と述べました。
同高官によると、レバノン軍はすでに118カ所に拠点を設置し、数多くの軍事拠点やトンネルを破壊しています。与えられた任務の第1段階は約9割が完了しており、今年末までに終了する見通しだといいます。
国連は双方に自制呼びかけ 「誤算」のリスクを懸念
国際社会も緊張の高まりに懸念を示しています。レバノンに展開する国連平和維持部隊(UNIFIL、国連レバノン暫定軍)は、ブルーライン(レバノンとイスラエルを隔てる停戦ライン)沿いで双方の軍事行動が激しくなっていることに「深い懸念」を表明しました。
UNIFILは、全ての当事者に対し、自制と対話の継続を求め、「誤算」によって意図せぬ本格衝突に発展することを避けるよう呼びかけています。
形式上は停戦継続 それでも続く限定的な攻撃
ヒズボラとイスラエルの間では、2024年11月27日から停戦が続いています。しかし、イスラエル軍はヒズボラの「脅威」に対処する名目で、レバノン領内への限定的な攻撃を続けており、レバノン国境沿いの5カ所に主要な部隊を展開し続けています。
こうした状況について、政治アナリストのリファアト・バダウィ氏は、現在のエスカレーションは「ヒズボラとレバノン政府に、イスラエルとの直接または間接の交渉に応じさせるための圧力だ」と見ています。その先には、レバノンとイスラエルの関係を「正常化」させる可能性も含まれていると指摘します。
バダウィ氏は、イスラエルがこの圧力を通じて、レバノン南部からの撤退要求を封じ込め、現状維持を続けつつ、1949年の停戦協定の枠組みに戻そうとしているとの見方を示しました。
日本の読者が注目すべきポイント
今回の一連の動きは、単なる国境紛争にとどまらず、中東全体の安定と国際社会の安全保障にも影響を与えうる問題です。ほぼ1年続く停戦の下で局地的な攻撃が繰り返される構図は、「戦争でも平和でもない」不安定な状態が長期化しつつあることを示しています。
今後、注目すべきポイントは次の3つです。
- イスラエルの限定攻撃が、どの時点で全面的な軍事衝突に発展するのか、それとも抑制が維持されるのか
- ヒズボラとレバノン政府が、武装解除や停戦条件をめぐる「交渉の罠」をどう避けるのか
- レバノン軍と国連の存在が、南部の安全保障と民間人保護にどこまで実効性を持てるのか
レバノンのある分析家が語ったように、「レバノンは新たな対立の瀬戸際」にあります。停戦から約1年がたつ今、緊張と抑制の微妙なバランスが、2025年末の中東情勢を象徴しているとも言えそうです。
Reference(s):
Fresh Israeli airstrikes hit S. Lebanon, testing fragile ceasefire
cgtn.com







