国連「難民は紛争と気候危機の悪循環に」 COP30に資金拡大を要請
国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)は、世界の難民が紛争と気候変動のダブル危機に閉じ込められた「悪循環」にあると警告し、次回のCOP30サミットで最も脆弱な人々への資金支援を強化するよう訴えました。
国際ニュース:難民と気候変動が絡み合う「悪循環」
国連による最新の報告書は、気候変動がすでに存在する貧困や不安定さを増幅させるだけでなく、新たな強制移動を生み出し、難民や避難民のリスクを複雑にしていると指摘します。紛争から逃れても、今度は極端気象に追い立てられ、再び避難を余儀なくされる人が増えているという構図です。
報告書は「気候変動は既存の脆弱性を増幅させるだけでなく、移動の傾向そのものを加速させている」とし、多くの難民がその影響から「逃げ場を持たない」状況に置かれていると警鐘を鳴らしています。
1億1700万人が強制移動、その多くが気候リスクの高い国に
UNHCRによると、2025年半ばの時点で、戦争や暴力、迫害によって故郷を追われた人は1億1700万人に達しました。この数字は、国際ニュースとしても異例の規模です。
- 強制移動を経験した人:1億1700万人(2025年半ば時点)
- そのうち約4人に3人が、高度から極度の気候リスクにさらされる国に居住
- 過去10年間の国内避難(国内での移動)のうち、約2億5000万件が気象関連災害によるもの
紛争・迫害による避難と、気候変動が引き起こす洪水や干ばつ、熱波といった極端現象が重なり、もともと脆弱な人々の生活基盤を一層不安定にしています。
「逃げても、また逃げなければならない」現場からの声
国際ニュースでたびたび取り上げられるように、避難生活はそれ自体が大きな負担ですが、UNHCRのフィリッポ・グランディ難民高等弁務官は、気候変動がその苦難を二重化していると強調します。
グランディ氏は声明の中で、次のように述べています。
「極端な気象現象は家や生計手段を破壊し、多くの場合、すでに暴力から逃れてきた家族に、再び逃避行を強いています。彼らはすでに計り知れない喪失を経験しており、今また同じ hardship と破壊に直面しているのです。」
干ばつや洪水、記録的な熱波の被害を最も強く受けるのは、もっとも回復力の弱い人たちです。報告書は、こうした人々こそが「復興のための資源を最も持たない」と指摘しています。
難民キャンプを直撃する「危険な暑さ」 2050年の深刻な予測
気候変動の国際ニュースの中でも、UNHCRが示した将来予測はとくに切迫感があります。報告書によれば、今後15年ほどの間に、世界の難民のほぼ半数が暮らす地域が、極端な気候ショックに「非常に高い」レベルでさらされる恐れがあるといいます。
さらに2050年までの見通しとして、世界で最も暑い難民キャンプ15カ所(ガンビア、エリトリア、エチオピア、セネガル、マリなどに所在)が、年間ほぼ200日にわたり「危険な暑さ」の熱ストレスにさらされると予測しています。
報告書は、極端な高温と高い湿度が重なることで「多くの場所は今後、居住不可能になる可能性がある」と警告しています。これは単に暑くなるというレベルではなく、人間の生命活動そのものが持続しにくくなる環境に近づくことを意味します。
また、気候関連リスクに「極度に」さらされる国の数は、現在の3カ国から2040年までに65カ国へと大幅に増える見通しだとしています。これら65カ国は、現在紛争で避難を余儀なくされている人々の45%以上を受け入れているとされ、負担の集中が懸念されています。
資金不足が深刻化、COP30に向けて「実行」を要求
こうした中、UNHCRは、COP30サミットに向けた気候資金の議論に強い期待をにじませつつ、現状の資金不足に危機感を表明しています。国連による国際ニュースの発信の中でも、今回は資金面への言及が目立ちます。
報告書は、伝統的に最大のドナー(拠出国)であった米国が、ドナルド・トランプ前大統領の下で対外援助を削減し、UNHCR予算への拠出も縮小したと指摘しています。かつて米国はUNHCR予算の4割超を占めていましたが、近年は他の主要ドナーも財政的な余裕を失い、全体として資金が細っています。
グランディ氏は「資金削減は、極端気象の影響から難民や避難民の家族を守るわれわれの能力を深刻に制限している」と訴えました。そのうえで、「さらなる移動を防ぐためには、気候資金が、すでに崖っぷちに立たされているコミュニティに直接届かなければならない」とし、「このCOPでは、空約束ではなく実際の行動が必要だ」と強調しています。
環境再生を「チャンス」に:地域に仕事とレジリエンスを
一方で、UNHCRの報告書は、難民を受け入れている地域の多くで、森林破壊や土壌劣化などの環境悪化が進んでいる現状を「機会」として捉え直すべきだとも提案しています。
持続可能な資金を動員して環境を回復させるプロジェクトを進めれば、その地域で新たな雇用が生まれ、難民と受け入れコミュニティ双方の生活改善と気候変動への適応力(レジリエンス)向上につながる可能性があるという考え方です。
たとえば、再植林や水資源管理、再生可能エネルギーの導入といった取り組みは、エコシステムの回復と同時に、現地での仕事づくりにつながります。紛争・気候の二重危機に直面する地域でこそ、こうした「環境と生計を一体で支える」投資が求められているといえるでしょう。
私たちがニュースから読み取るべき問い
今回のUNHCRのメッセージは、「難民問題」と「気候変動」を別々のニュースとしてではなく、一つの連続した現象として考える必要性を突きつけています。紛争で家を追われた人が、今度は気候危機によって再び移動を迫られるという現実は、気候政策と人道支援の切り離せない関係を示しています。
次の国際会議で、各国がどこまで具体的な資金拠出と行動に踏み込めるのか。気候変動や国際協力に関心を持つ読者にとって、今後のCOP30をはじめとする議論の行方は、注意してフォローしたいテーマになりそうです。
Reference(s):
UN says refugees stuck in vicious cycle of conflict and climate
cgtn.com








