米陸軍長官がゼレンスキー氏と会談 ロシアは要衝クピャンスク掌握
米陸軍長官がゼレンスキー氏と会談 ロシアは要衝クピャンスク掌握
ロシアによるウクライナ東部での軍事行動が進むなか、米国が新たな和平案を軸に外交攻勢を強めています。今週、米陸軍長官がウクライナのゼレンスキー大統領と会談し、ドナルド・トランプ大統領が支持するという新しい米国案を協議しました。一方でロシア軍は、東部ハルキウ州の要衝クピャンスクを掌握したと発表しており、戦場と交渉の両面で局面が大きく動いています。
米陸軍長官がキーウ訪問 「非常に楽観的」と報告
ホワイトハウスのカロライン・レヴィット報道官によると、今週木曜日(現地時間)、米陸軍長官ダニエル・ドリスコル氏がウクライナの首都キーウ(記事原文ではキエフ)を訪れ、ウォロディミル・ゼレンスキー大統領と会談しました。
レヴィット氏は記者会見で、ドリスコル氏が会談後に「非常に楽観的だ」と報告したと明らかにしました。協議の中心となったのは、新たな米国の和平案です。レヴィット氏は「これはロシアとウクライナ双方にとって良い計画であり、両者が受け入れられると信じている。実現に向けて全力で取り組んでいる」と述べ、政権としての意欲を強調しました。
トランプ政権の新和平案 28項目とウクライナの譲歩
レヴィット氏によれば、この和平案はドナルド・トランプ大統領が支持しているもので、米国の新たな外交イニシアチブと位置づけられています。米メディアの報道では、現在の草案は28項目から成り、ウクライナ側に大きな譲歩を求める内容が含まれているとされています。
報道が伝える主なポイントは次の通りです。
- ウクライナによる大幅な領土譲歩
- ウクライナ軍の大規模な兵力削減
- 長距離攻撃能力を持つ兵器へのアクセス制限
- 停戦後に欧州諸国の治安維持部隊をウクライナに展開する案を事実上排除
この枠組みは、米国のスティーブ・ウィトコフ中東特使とマルコ・ルビオ国務長官が、ここ1か月にわたって水面下で作り上げてきたものだとされています。両氏はロシアとウクライナ双方と「対等に」協議し、それぞれがどこまで和平のためにコミットできるかを探ってきたと説明されています。
ゼレンスキー氏は「外交的機会」を模索
ゼレンスキー大統領の事務所は木曜日の声明で、今後数日のうちにトランプ大統領と直接協議し、「和平を実現するために必要な主要なポイント」や「外交的機会」について話し合う予定だと明らかにしました。
戦場で厳しい局面に直面するウクライナにとって、どのような条件なら和平を受け入れ得るのか。今回の米国案は、その難しい判断をゼレンスキー政権に迫るものになりそうです。
欧州に広がる警戒感 「ウクライナと欧州の支持が不可欠」
今回の草案が伝わると、欧州では強い反発や警戒感が広がりました。複数の欧州当局者は、交渉プロセスから蚊帳の外に置かれることへの不満に加え、草案の内容がロシア寄りだと受け止められていると伝えられています。
欧州連合(EU)の外交政策を統括するカヤ・カラス外交安全保障上級代表は、「実効性のある和平案には、ウクライナと欧州の支持が不可欠だ」と強調しました。ウクライナが大きな領土譲歩と軍備削減を受け入れる形での停戦は、欧州の安全保障全体に長期的なリスクをもたらすとの懸念も根強くあります。
交渉は8月から停滞 戦場ではロシアが前進
ロシアとウクライナの和平協議は、今年8月に米アラスカ州で行われたトランプ大統領とウラジーミル・プーチン大統領の会談以降、事実上停滞しているとされています。外交の足踏みとは対照的に、戦場ではロシア軍の前進が続いています。
ロシア軍参謀総長のワレリー・ゲラシモフ氏は木曜日、東部ハルキウ州の戦略的要衝であるクピャンスクをロシア軍が完全に掌握したと報告しました。ゲラシモフ氏は、ロシア西部軍集団「ザパド(西)」の部隊がクピャンスクを制圧し、オスキル川左岸に包囲されたウクライナ軍部隊の殲滅作戦を続けていると説明しました。
さらに東部の別の要衝、クラースノアルメイスクでも前進が続いており、市街地のおよそ75%をロシア軍が支配していると述べました。11月以降、ロシア軍はドニプロペトロウシク州で6村、ザポリッジャ州で7村、合わせて13の村落を制圧したとも報告しています。
クピャンスクが持つ戦略的意味
クピャンスクは、ハルキウ州における重要な兵站拠点であり、防衛の要とされてきました。鉄道や道路網が集中し、前線への補給路として機能してきたため、ここを失うことはウクライナ側にとって大きな痛手となります。
この都市は、2022年2月から9月にかけて一時ロシア軍の支配下に置かれ、その間はハルキウ州占領地域の行政中心地として扱われていました。今回、再びロシア軍の支配下に入ったことで、東部戦線の地図が改めて塗り替えられつつあります。
戦場と交渉テーブルのギャップ
米国の新和平案がどのような形で正式提示されるのか、そしてウクライナ、ロシア、欧州がどこまで受け入れられるのかは、現時点では不透明です。ただ、ロシア軍の前進が続く状況は、ウクライナ側の交渉余地を狭めかねません。
一方で、ウクライナにとって過度に不利な条件での停戦は、国内世論や長期的な安全保障に深刻な影響を与えます。欧州各国もまた、自らの安全保障や国際秩序の原則との整合性をどう保つのかという難しい判断を迫られています。
これから数週間で何が動くのか
今後注目される主なポイントを整理します。
- トランプ大統領とゼレンスキー大統領の電話協議で、どこまで具体的な「和平条件」が話し合われるか
- 米国案に対し、ウクライナ国内と欧州主要国の政治指導者・世論がどう反応するか
- ロシア軍の東部での前進が続くのか、それとも新たな防衛線で膠着するのか
- 停戦後の治安維持や安全保障の枠組みを、米国と欧州がどのようにすり合わせるのか
戦場での情勢と外交の動きは互いに影響し合いながら進みます。ウクライナとロシアの戦争をどう終わらせるのか。その答えを探るうえで、今回の米国和平案をめぐる駆け引きは、2025年末の国際政治における最大級の焦点の一つとなりつつあります。
Reference(s):
U.S. army secretary meets Zelenskyy as Russia captures key city
cgtn.com








