ジュネーブ米ウクライナ協議 28項目和平案に「進展」も溝
ロシア・ウクライナ紛争の終結を目指す米国の「28項目和平案」を巡り、ジュネーブで開かれた米国とウクライナの協議が「進展した」と伝えられています。一方で、合意文書の具体的な中身や欧州の関与をめぐる溝はなお残っており、早期停戦につながるかどうかは不透明な状況です。
ジュネーブで何が協議されたのか
今回の協議は、ロシア・ウクライナ紛争を終結させるための「28項目和平案」を基礎としたものです。まずウクライナ代表団が、英国、フランス、ドイツの国家安全保障担当の高官らと協議を行い、その後に米国代表団との二国間協議に移りました。
夜には、マルコ・ルビオ米国務長官と、ウクライナ大統領府長官アンドリー・イェルマーク氏がそれぞれ記者団に説明し、協議の成果を強調しました。両者は共通して「非常に生産的」「非常に良い進展」と表現し、最終的な合意文書に近づきつつあると述べています。
米ウクライナ双方が語る「進展」とは
ルビオ国務長官は、これまでのプロセスの中で「最も生産的で意味のある協議だった」と評価しました。28項目の論点を一つひとつ確認し、双方が提案や修正を持ち寄る形で議論が進んだとされています。
ルビオ氏によれば、
- 両国のチームは協議で出た提案を現在精査している
- 残る対立点を「狭める」作業が続いている
- 合意できる文書案に「かなり近づいている」
一方で、最終的な和平案は米国とウクライナ双方の大統領による承認が必要であり、現段階ではまだ「合意には至っていない」とも認めました。
イェルマーク氏も、米国との協議を「非常に生産的」と評価し、「公正で持続的な平和」に向けた「非常に良い進展」があったと説明しました。ただし、今後も数日の間は提案のすり合わせ作業が続き、欧州のパートナーとも連携しながら議論を深めていく必要があるとしています。
詳細は非公開 なぜ語られないのか
協議後、両代表団は記者団からの質問には応じず、「チームがまだ複数の論点について準備や更新作業を行っている」として詳細を明らかにしませんでした。
約2時間半後にルビオ氏のみが再び記者団の前に現れましたが、その場でも具体的な内容には踏み込まず、「協議の詳細を語る用意はない」と説明しました。ただ、
- 協議は「生産的」であり、自身は「非常に楽観的」である
- 「ごく合理的な期間のうちに」合意に達する可能性がある
と強い前向きなトーンを繰り返しています。
それでもなお、ルビオ氏は「まだ合意はない」と念押しし、残された論点の一部は「より高いレベルでの決定や協議」を要するものだと指摘しました。対立点には、文言や表現といった「セマンティクス(言葉遣い)」の問題も含まれていますが、欧州連合(EU)や北大西洋条約機構(NATO)の役割など、欧州側の利害に深く関わる項目もあり、欧州のパートナーとの追加協議が不可欠だとしています。
それでもルビオ氏は、「残された項目は乗り越えられないものではない」と強調しました。
ゼレンスキー氏の慎重な姿勢とロシア側の反応
協議後、ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領は、ソーシャルメディア上で「戦争を終わらせるための一つ一つのステップが、実効性のあるものであり、実現可能でなければならない」と投稿し、和平プロセスの現実性を重視する姿勢を示しました。
他方、ロシアは今回のジュネーブ協議の結果について、現時点で公式な反応を示していません。ただ、ウラジーミル・プーチン大統領は先週金曜日、米国が提案する28項目和平案について、「ウクライナ危機の平和的解決の基礎となり得る」と述べたとされています。これは、少なくとも形式的には、ロシア側もこの枠組みを交渉の出発点として受け止める余地があることを示しています。
欧州はどう見ているか 独メルツ首相の発言
協議に先立ち、報道では、ウクライナや欧州の関係国が米国の28項目案に強い不満を抱いていると伝えられていました。ただし、正面からの拒否や公然たる批判は避けられており、一部の情報筋によると、ドナルド・トランプ米大統領の政権が提示したこの案を、欧州側は正式な形では受け取っていないとも言われています。
ドイツのフリードリヒ・メルツ首相は土曜日、ウクライナ危機の終結には「大国」ではなく、ウクライナとその欧州パートナー双方の同意が不可欠だと強調しました。また、ウクライナに対して信頼できる安全保障上の保証を構築する必要性を指摘しつつ、「紛争を終わらせるチャンスは確かに存在するが、各当事者が満足できる共通の結論に到達するには、まだ道のりが長い」と慎重な見方を示しています。
中国の研究者が見る28項目案の課題
中国人民大学国際関係学院の刁大明教授は、中国メディアの取材に対し、この28項目案が直面する複数の課題を指摘しています。
刁氏によれば、
- 米国側がこの和平案を打ち出した背景には、自国の地政学的な利益と、国内の選挙公約を意識した「停戦実現への焦り」がある
- 28項目の内容自体には調整の余地があるものの、米国・ロシア・ウクライナ・欧州の利害の隔たりは大きく、最終的な履行の行方は極めて不確実だ
とされます。つまり、文言のすり合わせだけでなく、「誰がどのコストを負担するのか」「どのような安全保障の枠組みを採用するのか」といった根本的な利害調整が避けられず、そのハードルは高いという見立てです。
28項目和平案はどこへ向かうのか
今回のジュネーブ協議は、米国とウクライナが「進展」を強調した一方で、核心部分の多くが依然として霧の中にあることも浮き彫りにしました。特に、
- 欧州連合やNATOが和平枠組みで担う役割
- ウクライナへの安全保障上の保証の具体的な形
- ロシアが受け入れ可能と考える条件との調整
といった論点は、単なる言葉遣いの問題ではなく、今後の欧州安全保障の秩序そのものに関わるテーマです。
長期化する紛争の中で、米国の28項目案が本当に実行可能な「着地点」となり得るのかどうかは、今後の数週間から数カ月にわたる協議の進展に左右されます。日本を含む国際社会にとっても、エネルギー価格やサプライチェーン、安全保障環境など、広範な分野に影響を与えうるため、注視すべき動きと言えます。
今後の注目ポイント
読者が今後のニュースを見る際、押さえておきたい視点を整理すると、次のようになります。
- 米国とウクライナが示す「楽観論」が、具体的な合意文書案としていつ提示されるか
- ロシアが28項目案に対し、どの時点でどのような正式見解を示すか
- ドイツなど欧州主要国が、安全保障保証や復興支援を含む負担をどこまで受け入れるか
- 米国内の選挙情勢など、外交以外の要因が和平プロセスにどう影響するか
情報が限定されるなかでも、関係国の発言のトーンや「誰が、どの場で、何を語っているのか」を丁寧に追うことで、和平交渉の実像が少しずつ見えてきます。ジュネーブでの協議はその一歩に過ぎませんが、戦争と和平の分岐点を探るうえで、重要なシグナルとなっています。
Reference(s):
U.S., Ukraine say Geneva talks make 'progress' but differences remain
cgtn.com








