WHO警告:西太平洋で女性への暴力が依然深刻 3人に1人が被害経験
世界保健機関(WHO)は火曜日、女性と女児に対する暴力が世界で依然として広く蔓延しており、とくに西太平洋地域でも深刻な状況が続いているとする最新データを公表しました。国際ニュースとしてだけでなく、公衆衛生と人権の問題として、私たち一人ひとりに関わるテーマです。
WHOが示した「3人に1人」という現実
WHOによると、世界では女性や女児のほぼ3人に1人が、生涯のどこかでパートナーからの暴力や性的暴力を経験しているとされています。この割合は過去25年間でほとんど改善しておらず、ジェンダーに基づく暴力がいかに根深いかを示しています。
対象となる暴力には、次のようなものが含まれます。
- 親密な関係にある相手(配偶者・交際相手など)からの暴力(IPV=親密なパートナーによる暴力)
- パートナー以外の人物による性的暴力
WHOは、こうした暴力が身体的なけがや望まない妊娠などの「目に見える」被害だけでなく、うつや不安などの精神的影響、経済的な困難、社会参加の機会の喪失など、人生全体に長く影を落とすと指摘しています。
西太平洋地域:4人に1人超が暴力被害
今回のデータで焦点が当てられた西太平洋地域でも、状況は深刻です。WHOによると、この地域では女性と女児の4人に1人を超える人が、パートナーからの暴力や性的暴力を経験しています。
15〜49歳の女性に限ると、直近1年間の状況は次のように示されています。
- 約9%が、親密なパートナーからの暴力を経験
- 国ごとのIPV発生率は、1.2%から42.2%まで幅広く分布
- 過去12か月間にパートナー以外から性的暴力を受けた人は4.3%
- パートナー以外からの性的暴力を一度でも経験したことがある人は9.4%
生涯を通じて親密なパートナーからの暴力を経験したことがある女性は、地域全体でほぼ5人に1人とされています。これは、世界平均の4人に1人より低いものの、WHOは「負担は依然として非常に重い」と強調しています。
とくに複数の太平洋島しょ国では、生涯にわたるIPVの有病率が2人に1人に達しており、世界でも最も高い水準だとされています。同じ地域の中でも、国や地域によってリスクに大きな差があることがわかります。
健康と人権への二重の打撃
WHO西太平洋地域事務局長のサイア・マウ・ピウカラ氏は、女性と女児に対する暴力を「最も重大な人権侵害の一つであり、健康に対する深刻な脅威だ」と表現しました。暴力は単なる個人的な問題ではなく、社会全体の課題であることを明確に示しています。
こうした暴力がもたらす影響は、多層的です。
- 身体的影響:けが、慢性的な痛み、長期的な健康障害
- 生殖・性の健康:望まない妊娠、性感染症、妊娠合併症など
- 精神的影響:うつ病、不安、心的外傷後ストレス障害(PTSD)など
- 社会・経済的影響:仕事や学業の中断、収入の減少、社会的孤立
これらはすべて、女性や女児が社会に参加し、自分の可能性を十分に発揮することを阻む要因となります。WHOがこの問題を「予防可能でありながら放置されている公衆衛生危機」と位置づけるのも、そのためです。
各国の取り組みと「医療体制の準備不足」
WHOは今回、暴力への対応における医療体制の準備状況に関する新たな調査結果も公表しました。多くの国で政策の整備は進んでいる一方、被害を受けた人が実際に必要な支援を受けられるかという点では、大きなギャップが残っているとしています。
進んでいる点:政策と計画
調査によると、次のような前向きな動きも見られます。
- 暴力防止の戦略を、保健・福祉・司法など複数分野にまたがる国家計画に組み込む国が増加
- 暴力の被害者に対応するうえで、医療機関と保健システムが果たす役割を重視する国が増えている
- 一部の国では、IPVや性的暴力被害者への対応を、国家の保健計画に明確に位置づけている
つまり「暴力は健康問題でもある」という認識は広がりつつあるといえます。
残る課題:サービスとデータの「穴」
一方で、課題も浮き彫りになりました。
- 国家レベルの計画に含まれていても、現場レベルでの実施は不十分で、被害者が一貫した支援を受けられないことが多い
- レイプ被害に対する包括的なケア(緊急避妊、性感染症検査、心理的支援など)が全国的に利用可能なのは、ごく一部の国に限られる
- 都市部と地方部など、地理的な地域差が大きく、支援へのアクセスに格差が生じている
さらに、データの不足も深刻です。WHOの調査では、女性への暴力に関する全国調査を最近実施した国は全体の半数強にとどまり、それより少ない国しか、殺人などの暴力犯罪に関する「使えるデータ」を継続的に保有していないとされています。
ピウカラ氏は、各国政府や地域社会に対し、こうしたデータを活用してより強力な政策を打ち出し、予防策を拡大し、医療体制への投資を進める必要があると強調しました。「すべての少女が守られ、すべての女性がエンパワーされる」ためには、数字をもとにした具体的な行動が欠かせないというメッセージです。
なぜ「データ」が鍵になるのか
暴力の実態を把握しなければ、対策の優先順位を決めたり、政策の効果を検証したりすることはできません。データが弱いままでは、次のような問題が生じます。
- どの地域・どの集団がとくに大きなリスクにさらされているかが見えない
- 限られた予算や人員を、どこに重点配分すべきか判断しにくい
- 政策を導入しても、「本当に暴力は減っているのか」を検証できない
- 被害を受けた人たちの声が、数字として可視化されない
WHOがデータの整備を強く求めているのは、被害の実態を「見える化」することが、予防と支援のスタートラインになるからです。
「見えない暴力」をどう社会で捉え直すか
今回のWHOの報告は、暴力が依然として広がっている現実と同時に、各国が政策や計画の面で歩みを進め始めていることも示しています。しかし、被害者が安心して声を上げ、必要な支援にアクセスできるようにするには、まだ長い道のりがあります。
私たちがこの国際ニュースから考えられるポイントとしては、次のようなものがあります。
- 暴力は家庭や親密な関係の中でも起こり得る「社会問題」であり、決して個人の責任に矮小化してはいけないこと
- 医療や福祉、教育、司法など、さまざまな分野が連携して取り組む必要があること
- 数字やデータに目を向けることで、これまで見えにくかった暴力の構造が浮かび上がること
女性と女児に対する暴力をどう減らし、被害を受けた人が尊厳を守られながら支援を受けられる社会をつくるか――WHOの最新の警告は、2025年の今を生きる私たちに、その問いを静かに投げかけています。
Reference(s):
WHO: Violence against women, girls still widespread in Western Pacific
cgtn.com








