ロシアは譲歩拒否、ウクライナは憲法改正を否定 トランプ政権の和平案に波紋
ロシアとウクライナをめぐる和平交渉で、ロシアは譲歩を一切否定し、ウクライナも憲法改正に応じない姿勢を鮮明にしました。トランプ政権(第2期)が提示した最新の和平案は、2025年12月現在、早くも難航の兆しを見せています。
トランプ政権の新和平案に広がる戸惑い
今回の米国による新たな和平案は、ワシントンや欧州、ウクライナの当局者らを驚かせたとされています。背景には、トランプ大統領がロシアに有利な内容の合意を、ウクライナへ圧力をかけて受け入れさせるのではないかという懸念があります。
この和平案には、トランプ大統領をこれまで強く支えてきた共和党内からも、異例の強い反発が出ています。共和党のミッチ・マコネル元上院院内総務は、X(旧ツイッター)で、侵略を報いるような合意は価値がないと警告し、米国は中立的な仲裁者の立場には立つべきではないと主張しました。
一方でトランプ大統領は、交渉は前進しており、モスクワ側も譲歩の用意を示していると強調しています。この認識の差が、ワシントン内部の大きな温度差を映し出しています。
ロシア「譲歩はない」 和平合意は時期尚早と強調
こうした中、ロシア外務次官のセルゲイ・リャブコフ氏はモスクワで記者団に対し、ロシアが和平案で大きな譲歩を行うことはないと明言しました。リャブコフ氏は、鍵となる論点に関して、ロシア側の基本的な立場を放棄することはあり得ないと述べ、強硬な姿勢を崩していません。
トランプ大統領は、米国の特使スティーブ・ウィトコフ氏がロシアのプーチン大統領と会談すると発表し、ガザの停戦合意の仲介に関わったジャレッド・クシュナー氏も参加するとしています。ロシア大統領補佐官のユーリ・ウシャコフ氏も、ウィトコフ氏が来週モスクワを訪問することで予備的な合意ができていると明かしました。
しかし、ロシア大統領府のドミトリー・ペスコフ報道官は、和平合意が近いかどうかについて問われると、そう判断するのは時期尚早だと述べています。これは、米ロ双方が表向きは対話を続けつつも、実際には妥協点がまだ見えていないことを示唆します。
ウクライナは憲法改正を拒否 譲れない「赤線」
一方、ウクライナ側は自国の主権や国内制度に関わる問題で、一歩も譲らない姿勢を示しています。ウクライナ大統領府長官の顧問で、米国やパートナー国、ロシアとの協議に参加しているオレクサンドル・ベヴズ氏は、インタファクス・ウクライナ通信の取材に対し、ウクライナはどのような形であれ、特定の問題の承認は受け入れず、憲法改正も行わないと明言しました。
ベヴズ氏は、ウクライナ側にとっての「赤線」として、次の2点を挙げています。
- いかなる形であっても、受け入れがたい事態を承認しないこと
- 憲法を変更しないこと
さらに、領土に関わる論点については、現在の接触線(いまの前線)を協議の基礎とすること、そして最終的な扱いは各国の指導者レベルで決めるべきだと強調しました。これは、ウクライナが実務的な交渉には応じつつも、最終判断を国家元首レベルの政治決断に委ねる構えを示すものです。
米国案は大筋合意も「28項目」から大幅修正
ウクライナ大統領府長官のアンドリー・イェルマーク氏によると、ウクライナと米国の交渉団は、ワシントンが提示した和平案の大部分について、「原則的な合意」に達しているといいます。ただし、この和平案は当初の28項目から大幅に修正されたとされ、内容はかなり作り変えられているようです。
具体的にどの項目が修正されたのか、詳細は明らかになっていませんが、ウクライナ側の「憲法改正なし」「受け入れがたい事態の不承認」といった立場や、ロシア側の「譲歩はない」という姿勢を踏まえ、文言の微調整や優先順位の変更が図られているとみられます。
いま見えている三つのポイント
現時点の情報から読み取れるのは、次の三つの構図です。
1. ワシントン内部の政治力学が和平案を揺さぶる
今回の和平案は、トランプ政権だけでなく、米国議会、とくに共和党内の反応が大きな要素になっています。マコネル氏らの批判は、米国が単なる仲裁者ではなく、自らの対ロシア・対ウクライナ政策に責任を負うべきだという立場を示しています。国内政治の力学が、国際交渉の行方を左右している構図です。
2. ロシアは強硬姿勢を維持しつつ、対話の窓口は開く
ロシアは「譲歩なし」と明言し、和平は時期尚早だとする一方で、米国特使の受け入れには合意しています。この姿勢は、基本線は崩さずに、外交チャンネルは維持するという二重のメッセージといえます。モスクワは、譲歩を伴わない形での国際的な正当性や影響力の確保を狙っているとも読み取れます。
3. ウクライナは主権と憲法を守る線は譲らない
ウクライナ側が示した「赤線」は、主権や領土、憲法といった国家の根幹に関わる領域には妥協しないという意思表示です。一方で、現在の接触線をベースにした協議や、首脳レベルでの政治決断には道を開いており、完全なゼロ回答ではありません。いかにして自国の原則を守りながら、現実的な合意に近づけるかが、今後の大きな課題になります。
これからの焦点:モスクワ訪問と首脳レベルの駆け引き
今後の注目点は、まずウィトコフ特使のモスクワ訪問です。そこでは、トランプ政権が描く和平案の核心部分について、ロシア側がどこまで踏み込んだ意見交換に応じるのかが試されます。また、クシュナー氏がガザの停戦合意で果たした役割を、今回の交渉でも再現できるかも焦点です。
同時に、ウクライナと米国が「原則的合意」に達したとされる修正後の案が、どこまでロシア側の受け入れ可能な範囲に収まるのかは不透明です。ロシアの強硬姿勢、ウクライナの赤線、そして米国の国内政治。この三者のバランスが、2025年末に向けた和平交渉の行方を大きく左右していきそうです。
紛争の出口を探る試みが続くなかで、今回の動きは「一気に和平へ」というより、むしろ各国の立場の違いを改めて浮かび上がらせました。今後の合意文案や首脳会談の行方を追うことで、国際秩序や安全保障の次の一手が見えてくるかもしれません。
Reference(s):
Russia rules out concessions, Ukraine rejects constitutional changes
cgtn.com








