イラン、米国のベネズエラ空域「閉鎖」宣言を非難
イラン外務省は、米国のドナルド・トランプ大統領がベネズエラ周辺の空域を「全面的に閉鎖すべきだ」と宣言したことを強く非難しました。国際法と国際航空の安全に関わるこの発言は、2025年現在も続く米国とイラン、ベネズエラをめぐる緊張の一端を映し出しています。
何が起きたのか
イラン外務省報道官のエスマイル・バガイ氏は日曜日、トランプ米大統領がベネズエラ上空とその周辺空域を「閉鎖された」とみなすよう呼びかけたことについてコメントしました。
トランプ氏は前日の土曜日、自身のSNS「トゥルース・ソーシャル」に投稿し、航空会社やパイロットに加え、麻薬密売や人身取引に関わる者たちに向けて、ベネズエラの上空および周辺の空域を「全面的に閉鎖されたものと見なすように」と呼びかけました。投稿では、その具体的な理由や法的根拠についての説明は示されていません。
イラン外務省「国際法の根本原則に反する」
バガイ報道官は、この米国の動きを「国際的な規範や、国際法の根本的なルールに対する明白な違反だ」と強く批判しました。とくに、国際民間航空をめぐるルールを含む基本的な法体系を損なうものだと指摘しています。
さらに同氏は、今回の宣言を、ワシントンによるベネズエラの主権と領土保全に対する「挑発的で違法な行為」の一部だと位置づけました。つまり、ひとつの国が第三国の空域について一方的に「閉鎖」を宣言すること自体が、主権を持つ当事国を無視する恣意的な行動だという問題意識です。
バガイ氏はまた、この動きを「恣意的な行為であり、国際航空の安全と安定に対する前例のない脅威だ」とも非難しました。民間航空機の運航は、多数の国や航空会社が関わる複雑なネットワークで成り立っているため、一方的な政治的判断が安全リスクにつながりかねない、という懸念がにじみます。
空域と主権──なぜ問題が大きくなるのか
各国は、自国の領土や領海と同様に、上空の空域について主権を持って管理します。そのため、空域を「閉鎖」するかどうか、どの航空機を通過させるかは、本来は当該国の判断に委ねられるべきだと考えられています。
イラン側が「ベネズエラの主権と領土保全」を強調しているのは、まさにこの点です。第三国が、当事国の合意なしにその空域の扱いを一方的に宣言することは、国際法の基本原則や国際慣行との整合性が問われかねません。
また、国際航空の世界では、定期便や貨物便が複数の国の空域をまたいで飛行しています。ある空域が政治的理由で突然「閉鎖された」と見なされれば、ルート変更によるコスト増やダイヤの乱れだけでなく、現場の混乱が安全リスクにつながるおそれもあります。
SNS時代の外交メッセージ
今回の一連のやり取りは、国家のトップがSNSを通じて発した短いメッセージが、国際政治や国際航空の分野に直接波紋を広げうることをあらためて示しました。
トランプ氏の投稿は、一見すると国内向けの強いメッセージのようにも読めますが、その対象には航空会社やパイロットといった国際的な民間アクターも含まれています。イラン外務省が素早く反応したことは、こうした言葉が外交上のシグナルとしても受け止められていることを物語っています。
イランは今回の声明を通じて、ベネズエラの主権と国際航空の安全を守るという立場から、米国の一方的な行動に懸念を表明した形です。中南米のベネズエラをめぐる問題が、中東のイランからも注視されていることがわかります。
今後の焦点:説明責任と国際ルール
現時点で、トランプ米大統領の投稿に関する詳細な説明や、具体的な運用方針は示されていません。今後の焦点となりそうなのは、次のような点です。
- 米国がこの「空域閉鎖」宣言の法的根拠や目的をどこまで明らかにするのか
- ベネズエラ当局や周辺国がどのような立場を表明するのか
- 航空会社やパイロットの側が、安全確保と運航継続のバランスをどう取ろうとするのか
国際社会にとっては、特定の国への圧力や安全対策を名目にした措置であっても、それが国際法と国際航空のルールにどう整合するのかを冷静に検証することが求められます。今回のイランによる非難は、その問いかけの一つとして受け止めることができそうです。
Reference(s):
Iran condemns U.S. declaration on closing Venezuela's airspace
cgtn.com








