ベルギーがEU案に反対 ロシア凍結資産での対ウクライナ融資に慎重姿勢
ベルギーが、凍結されたロシア資産の利益を活用してウクライナ向けの巨額融資を行うという欧州連合(EU)の計画に「ノー」を突きつけました。ウクライナ支援の新たな資金スキームを巡り、EU内部の温度差が浮き彫りになっています。
何が起きたのか:ベルギーがEU案を拒否
ベルギーは水曜日、EUが検討している「凍結ロシア資産から生じる利益」を活用した対ウクライナ融資案に反対の立場を表明しました。この計画は、ロシアの凍結資産の利益を担保として、ウクライナ向けに大規模な融資を行うというものです。
ベルギーのマキシム・プレヴォー副首相兼外相は、ブリュッセルで開かれた北大西洋条約機構(NATO)外相会合の前に記者団に対し、自国の懸念が十分に聞き入れられていないと強い不満を示しました。
プレヴォー氏は、ベルギーの懸念が過小評価されていると指摘し、「われわれの懸念は繰り返し伝えてきたが、欧州委員会が提示しようとしている文書は、それに十分に応えていない」と述べました。
EU案の中身:凍結ロシア資産を担保に「賠償ローン」
欧州委員会(EUの執行機関)は同じ水曜日、凍結されたロシア資産の利益を活用する「賠償ローン」構想の詳細を公表する予定でした。これは、ロシアの凍結資産を直接取り崩すのではなく、その運用益などを担保にして資金を調達し、ウクライナの多額の資金需要に応えるというスキームです。
EUは現在、ロシア中央銀行の凍結資産をどのように動員するかを巡って議論を続けています。報道によれば、凍結されたロシア中銀資産の約9割が、ブリュッセルに拠点を置く証券保管機関ユーロクリアに保管されており、これらを活用しておよそ1400億ユーロ(1630億ドル)規模の資金をウクライナ向けに捻出する構想が検討されています。
ベルギーの懸念:リスクを「一国だけ」に背負わせないでほしい
ベルギーが強く反発しているポイントは大きく分けて二つあります。ひとつは財政リスク、もうひとつは法的リスクです。プレヴォー氏は、「資金だけを使い、リスクはベルギーにだけ負わせる」という形は受け入れられないと明言しました。
ベルギーは、資産の多くがブリュッセル拠点のユーロクリアに集中していることから、法的な紛争や賠償請求が発生した場合、自国が集中的にリスクを負う可能性があると警戒しています。そのため、ベルギー側は、自国が負うリスクが完全にカバーされる仕組みを求めています。
ベルギーが問題視する主なポイント
- 財政リスク:損失が発生した場合の負担をベルギーが一方的に背負う形になるのではないかという懸念
- 法的リスク:ロシア側などからの法的訴訟や国際的な紛争に発展するおそれ
- 集中リスク:ロシア資産の約9割がユーロクリアに保管されているという地理的な偏在
首相も強く批判:「根本的に欠陥がある」計画
ベルギーの懸念は、外相レベルにとどまりません。先週には、バルト・デ・ウェーヴェ首相も欧州委員会のフォンデアライエン委員長に書簡を送り、この計画に強い異議を申し立てています。
首相は書簡の中で、このロシア凍結資産を担保とする融資案は「根本的に欠陥がある」とし、国際法に違反することになると主張しました。ベルギーとしては、ウクライナ支援そのものには否定的ではないものの、その手段としてのスキーム設計に重大な問題があるという立場をとっています。
EU内部のせめぎ合い:ウクライナ支援と法の支配
今回の議論は、EUがどのような形でウクライナ支援を行うのか、そして国際法や法の支配とどう両立させるのかという、難しいテーマを浮かび上がらせています。ロシアの凍結資産を活用することは、政治的には「加害者に負担を求める」という分かりやすいメッセージになりますが、その一方で法的な正当性や金融システムへの影響など、慎重な検討が必要になる領域でもあります。
特に、ロシア中央銀行の資産は主権国家の資産であり、それを担保として扱うことが国際法上どこまで許容されるのかは、今後の国際的な先例にもなりかねない問題です。ベルギーは、こうした点でのリスクを強く意識しているとみられます。
これからの焦点:ベルギーの懸念にEUはどう応えるか
欧州委員会が示す最終案が、どこまでベルギーの懸念を織り込むのかが、今後の大きな焦点になります。他の加盟国がベルギーの問題提起にどの程度共感し、修正を求めるのかによって、この「賠償ローン」構想の行方は変わってきます。
ウクライナ支援の必要性に異論はほとんどない一方で、その資金をどこから、どのような法的根拠に基づいて捻出するのかは、EUにとって避けて通れない課題です。今回のベルギーの強い反発は、EUが今後、国際法と金融市場の安定をどこまで重視しながら支援策を設計していくのかを示す試金石とも言えます。
日本の読者への視点:なぜこのニュースが重要か
日本にとっても、これは単なる欧州内部の技術的な金融議論ではありません。制裁や凍結資産の扱いが国際社会でどのように位置づけられるのかは、日本の外交や経済制裁のあり方にも関わるテーマだからです。
また、EUがウクライナ支援と「法の支配」の両立をどう図るのかは、今後の国際秩序を考える上で重要な示唆を与えます。ベルギーの問題提起は、感情論ではなく、リスクとルールをどうバランスさせるかという冷静な問いかけとも言えます。
今後のポイントとしては、
- 欧州委員会が最終的にどのような案を提示するか
- 他のEU加盟国がベルギーの懸念にどう反応するか
- ロシア凍結資産の扱いが国際法上どのように議論されていくか
といった点が注目されます。スマートフォンでニュースを追う私たちにとっても、「誰が負担を負い、誰がリスクを取るのか」という問いは、遠い世界の話ではありません。EUの議論をきっかけに、自国の政策や国際ルールのあり方を考えてみるのも良さそうです。
Reference(s):
cgtn.com








