プーチン氏「ドンバス全域を支配」発言 ウクライナ戦争はどこへ向かうのか video poster
ロシアのプーチン大統領が、ウクライナ東部ドンバス地域について「武力で解放するか、ウクライナ軍が撤退するかだ」と述べ、全域掌握の意思を改めて示しました。約3年にわたる戦闘の行方と、欧州や中国、トルコ、米国を巻き込んだ外交・経済の動きを整理します。
きょうのウクライナ情勢・主なポイント
- プーチン大統領が、ウクライナのドンバス地域全体をロシアが支配する方針を強調
- 欧州委員会が、凍結されたロシア資産や国際的な借り入れを活用してウクライナ支援を行う案を提示
- ウクライナ軍は東部ポクロフスク北部の陣地を維持していると、キーウのシルスキー軍司令官が説明
- ロシア外務省は、黒海の石油タンカーやノボロシースクのカスピ海パイプラインコンソーシアム施設に対するウクライナ側の攻撃は和平協議を妨害する意図があると主張
- ロシアの夜間攻撃により、南部ヘルソンと最大の港湾都市オデーサで数万人が停電と暖房停止の影響を受けたと地元当局と電力会社が発表
- 中国の習近平国家主席とフランスのマクロン大統領が北京で会談し、ウクライナとロシアの紛争について協議
- トルコのバイラクタル・エネルギー相は、黒海沿岸での攻撃を受け、エネルギーインフラを紛争の対象から外すよう当事者に呼びかけ
- ロシア安全保障会議のメドベージェフ副議長は、欧州連合が凍結資産を没収すれば「戦争を正当化する行為」と見なされ得ると警告
- 米ホワイトハウス高官によると、スティーブ・ウィトコフ氏とジャレッド・クシュナー氏がマイアミでウクライナ側と協議予定で、プーチン大統領も両氏との会談を「非常に有益だった」と評価したと伝えられている
プーチン大統領が語ったドンバスの行方
インド訪問を前にしたインタビューで、プーチン大統領はウクライナ東部ドンバスについて「我々が武力によってこれらの地域を解放するか、ウクライナ軍がそこから撤退するかのどちらかだ」と述べました。このインタビューはロシア国営テレビで一部が放送されました。
ドンバスはドネツク州とルハンスク州から成る地域で、2014年のクリミア編入後、親ロシア派勢力とウクライナ軍の衝突が続いてきました。プーチン大統領は、その後の2022年2月、大規模な部隊をウクライナに送り込みました。
プーチン大統領の発言は、ウクライナ軍がドンバスから撤退しない限り、ロシアが軍事力によってドンバス全域を制圧する姿勢を崩していないことを改めて示すものです。
一方でウクライナ側は、自国の領土を「ロシアに譲り渡す」ことはできないと強調しています。ゼレンスキー大統領は、モスクワは自ら始めた紛争の見返りを受けるべきではないとの立場です。
ドンバスと占領地域の広がり
現在、ロシアはウクライナ領の19.2パーセントを支配しているとされています。その内訳は次の通りです。
- クリミア半島全域(2014年に編入)
- ルハンスク州のほぼ全域
- ドネツク州のおよそ80パーセント
- ヘルソン州とザポリージャ州のおよそ75パーセント
- ハルキウ州、スームィ州、ミコライウ州、ドニプロペトロウシク州の一部
ドネツク州のおよそ5000平方キロメートルは引き続きウクライナ側の支配下にあり、激しい攻防が続いています。2022年2月の大規模な軍事行動から約3年がたつ中で、ドンバスは依然として紛争の中心的な戦場となっています。
東部ポクロフスクで続く攻防
ウクライナ軍トップのシルスキー司令官によると、東部ウクライナの都市ポクロフスク北部で、ウクライナ部隊は現在も陣地を維持しているといいます。ロシアがドンバス全域の掌握を目指す中で、こうした前線の一つ一つが今後の戦況に大きく影響しそうです。
欧州委員会の「凍結資産活用」案とロシア側の警告
欧州委員会は、ウクライナの苦しい軍事費や公共サービスを支えるため、凍結中のロシア資産を活用するか、国際的な借り入れによって資金を調達するという、前例のない提案を示しました。ウクライナ支援をめぐり、欧州連合の関与を一段と深める狙いがあります。
これに対し、ロシア安全保障会議のメドベージェフ副議長は、もし欧州連合が凍結されたロシア資産を実際に取り上げるなら、それはモスクワから見て「戦争行為を正当化する行動」と見なされ得ると警告しました。資産の扱いをめぐる攻防が、軍事的な緊張と結びつくリスクも指摘されています。
エネルギーインフラと市民生活への打撃
紛争の長期化に伴い、エネルギーインフラが攻撃対象となる場面も増えています。
- ロシア外務省のザハロワ報道官は、ウクライナによる黒海での石油タンカー攻撃や、ノボロシースクのカスピ海パイプラインコンソーシアムのターミナルへの攻撃について、「ウクライナ和平協議を妨害することが目的だ」と主張しました。
- 一方で、ロシア側の夜間攻撃によって、南部ヘルソンやオデーサでは電力や暖房が停止し、数万人が影響を受けたと地元当局とエネルギー企業が伝えています。
- ロシア国防省は、自軍がウクライナの輸送・インフラ施設を攻撃したと発表しており、交通網や港湾などへの打撃も続いています。
こうした状況を受け、トルコのバイラクタル・エネルギー相は、黒海沿岸での一連の攻撃の後、ロシアとウクライナ、その他すべての当事者に対し、エネルギーインフラを戦闘の対象から外し、エネルギーの流れを途切れさせないよう呼びかけています。エネルギー安全保障と民間人の生活をどう守るかは、今後の重要な争点になりそうです。
中国・フランス、欧州、米国…外交の舞台裏
北京での首脳会談:中国とフランス
北京では、中国の習近平国家主席とフランスのマクロン大統領が会談し、ウクライナとロシアの紛争についても協議しました。欧州連合としては、中国の影響力を生かして紛争終結への道筋を探りたい考えがあります。
欧州諸国の役割についてのプーチン大統領の見方
プーチン大統領は、欧州諸国はウクライナ和平の枠組みに参加し、妨げるのではなく支えるべきだとの考えを示したと伝えられています。欧州が制裁や資産凍結などの圧力と、外交的な関与をどう両立させるかが、今後の焦点です。
トルコの仲介姿勢とエネルギー
トルコは黒海の要衝として、穀物輸出やエネルギー輸送の安全確保に深く関わってきました。エネルギーインフラを守るよう双方に呼びかける姿勢は、軍事衝突を抑えつつ、地域の安定を維持しようとする動きの一つといえます。
米国特使とロシア・ウクライナ双方との接触
米ホワイトハウス高官によると、米国の特使であるスティーブ・ウィトコフ氏とジャレッド・クシュナー氏は、マイアミでウクライナ側関係者と会談する予定です。ロシアの通信社によれば、プーチン大統領は両氏との会談について「非常に有益だった」と述べたとされ、米国の民間チャネルも含めた多層的な対話の動きがうかがえます。
これから注目したい論点
ドンバスとウクライナ全体をめぐる情勢は、軍事、経済、外交が複雑に絡み合う局面にあります。今後、特に注目したいポイントを整理します。
- ドンバスでの攻防がどこまでエスカレートするのか。ウクライナ軍の防衛とロシア側の攻勢、双方の動きが和平の可能性にどう影響するか。
- 欧州委員会による凍結資産活用案がどのような形で具体化するのか。ロシア側の強い反発が、金融やエネルギーを含む対立の激化につながるのか。
- エネルギーインフラへの攻撃をどこまで抑えられるか。トルコの働きかけや各国の外交努力が、市民生活と国際エネルギー市場の安定に結び付くのか。
- 北京、アンカラ、欧州各国、米国など、多様なプレーヤーが関わる外交の動きが、実際に停戦や和平協議の具体的な枠組みづくりにつながるのかどうか。
約3年に及ぶ戦争をどう終わらせるのかという問いは、ウクライナとロシアだけでなく、欧州やアジアを含む国際社会全体に投げかけられています。日々の戦況だけでなく、資産、エネルギー、外交の動きを幅広く見ていくことが、今後の展開を読み解く鍵になりそうです。
Reference(s):
cgtn.com








