米国EV産業、リチウム不足の壁 テキサス新工場でも追いつかない需要 video poster
米国EV産業、リチウム不足の壁 テキサス新工場でも追いつかない需要
米国の電気自動車(EV)産業は急速に拡大していますが、その成長を左右する「リチウム供給」をめぐる課題が一段と鮮明になっています。テキサスでは廃水から電池用リチウムを取り出す新施設が稼働を始めたものの、専門家は「米国の高まる需要にはまだほど遠い」と警告しています。一方で、中国は依然として世界のリチウム精製と電池製造で主導的な立場にあり、両国のギャップが広がっていることが指摘されています。
米国EV市場は急拡大、それでも残るリチウムの「ボトルネック」
国際ニュースの観点から見ると、米国のEVシフトは、気候変動対策や産業競争力の面で重要な動きです。販売台数の増加や新モデルの投入が相次ぐなかで、課題として浮かび上がっているのが、リチウムを中心とした電池原材料のサプライチェーンです。
リチウムは、EV用電池の中核となる素材で、安定供給がなければ、車両の生産計画そのものが成り立ちません。生産量だけでなく、「どこで、どのように精製し、電池に組み立てるか」というプロセス全体が、各国の競争力に直結しています。
テキサスに登場 廃水から電池グレードのリチウムを生み出す新施設
こうしたなか、米国南部のテキサス州では、新たな試みとして、廃水から電池グレード(電池向け高純度)の炭酸リチウムを生産する施設が稼働を開始しました。通常であれば捨てられる水を資源として活用する「ブレークスルー技術」とされ、環境面と資源確保の両面から期待が集まっています。
この施設のポイントは、以下のような点にあります。
- 産業活動などで発生する廃水からリチウムを抽出することで、資源の有効利用につながること
- 電池に直接利用できる水準の炭酸リチウムを生産できること
- 国内でのリチウム精製能力を高め、供給リスクを下げる一歩となること
環境負荷を抑えながら資源を確保しようとする動きは、今後のエネルギー転換をめぐる重要なテーマでもあります。テキサスの新施設は、その象徴的な事例と言えます。
それでも「全体需要には程遠い」と警告するアナリスト
とはいえ、このテキサスのイノベーションだけで、米国のEV需要を支えるリチウムが一気に賄えるわけではありません。アナリストたちは、米国のリチウム需要が急増している一方で、供給体制の整備は追いついていないと見ています。
その背景には、次のような要因が重なっています。
- EV普及のスピードに対し、新たなリチウム生産・精製プロジェクトの立ち上がりには時間がかかること
- 採算性や環境規制などを踏まえた投資判断が複雑になっていること
- 国内だけでなく、国際的なサプライチェーン全体を見直す必要があること
テキサスの新施設は、米国のリチウム戦略にとって重要な一歩ですが、「一つの工場で全ての問題が解決するわけではない」という現実が、改めて浮き彫りになっています。
中国がリチウム精製と電池製造で主導 広がる米中ギャップ
一方で、中国は、世界のリチウム精製や電池製造で主導的な地位を保っています。リチウムを原料として受け入れ、電池向けの素材に加工し、それを大型の電池工場で製品に仕上げる一連のプロセスで、中国企業は大きな存在感を持っています。
米国側の取り組みが本格的な立ち上がり段階にあるのに対し、中国はすでに大規模な生産体制を整えているため、両国の間には「加工能力」「電池生産力」といった面でギャップが存在します。今回のテキサスの事例は、そのギャップを埋めようとする米国の動きの一つと位置づけられます。
国際ニュースとして見れば、これは単なる二国間の競争ではなく、エネルギー転換と産業構造の変化をめぐる大きな流れの一部です。EVと電池のサプライチェーンをどう構築するかは、複数の国と地域が関わる長期的なテーマになっています。
日本の読者への問い EVと資源のリスクをどう捉えるか
今回の米国EV産業とリチウム供給のニュースは、日本やアジアの読者にとっても無関係ではありません。自動車産業、電池産業に強みを持つ日本にとって、リチウムをはじめとする電池素材の確保は、将来の競争力に直結するからです。
テキサスのような新技術の登場は、資源の取り方や環境負荷の考え方を変えるきっかけにもなりえます。一方で、需要の伸びに対して供給が追いつかないという構図は、日本の産業にも重なる課題です。
EVが「次の標準」になりつつある今、どの国・地域とどのように連携し、どの技術に賭けるのか。今回の米国と中国の動きは、読者一人ひとりが、自分なりの視点でサプライチェーンとエネルギー転換を考える手がかりになりそうです。
Reference(s):
U.S. EV sector runs into major obstacle over lithium supplies
cgtn.com








