米連邦最高裁、トランプ大統領の出生地主義制限を審理へ
米連邦最高裁判所が、ドナルド・トランプ米大統領による出生地主義(バースライト・シチズンシップ)の制限をめぐる大統領令の合憲性を審理することを決めました。米国憲法14条修正の解釈そのものに踏み込む可能性があり、「国籍とは何か」を問う重要な国際ニュースです。
米連邦最高裁が審理入り、判断は来年6月末までに
最高裁判事らは金曜日、トランプ政権の出生地主義制限を争う訴訟について、司法省が申し立てた上告を受理しました。裁判所は現在の期中に口頭弁論を開き、来年6月末までに判断を示す見通しとされていますが、具体的な弁論期日はまだ決まっていません。
問題となっているのは、米国内で生まれた子どもの両親が、いずれも米国市民でも永住権(いわゆるグリーンカード)保持者でもない場合、その子どもを米国籍として認めないよう政府機関に指示した大統領令です。
下級審は、この大統領令について、米国憲法14条修正および出生地主義を明文化した連邦法に違反すると判断し、執行を差し止めていました。今回の最高裁の判断は、この判断を維持するのか、それとも覆すのかに世界の注目が集まっています。
争点は「出生地主義」:米憲法14条修正をどう読むか
米国憲法14条修正は、南北戦争後に制定され、「合衆国で生まれ、かつその管轄内にあるすべての人は、合衆国およびその居住する州の市民である」と定めています。長年、この条文は、米国で生まれた子どものほぼすべてに市民権を与える根拠として解釈されてきました。
しかしトランプ政権は、この条文は不法滞在中の移民や、留学生・就労ビザなどの一時的な在留資格しか持たない親から生まれた子どもには適用されないと主張しています。出生地主義を前提とした従来の理解を、政権側は大きく見直そうとしているのです。
誰が訴え、何が問われているのか
この大統領令に対しては、複数の訴訟が起こされています。今回、最高裁が審理対象としたのは次の二つの訴えです。
- ワシントン、アリゾナ、イリノイ、オレゴンの各州による訴訟
- ニューハンプシャー州の連邦裁判所に提起された、全国の当事者を代表する集団訴訟
いずれの訴訟でも、原告は「大統領令によって、自分たちや自分たちの子どもの市民権が脅かされている」と主張し、憲法違反の確認と差し止めを求めています。
トランプ政権の移民政策と政治的背景
共和党のトランプ大統領は、今年1月20日に2期目として再び就任した初日に、この大統領令に署名しました。合法・非合法を問わず移民を厳しく取り締まる一連の施策の一部であり、2期目の政権運営においても移民政策が最重要課題であることを内外に示した形です。
政権側は、出生地主義によって「米国で生まれさえすればほぼ自動的に市民権が得られる」制度が、不法移民を呼び込む要因になっていると主張しています。また、いわゆる「出産ツーリズム」と呼ばれる、子どもに米国籍を取得させる目的で渡米・出産する動きも問題視してきました。
ホワイトハウスのアビゲイル・ジャクソン報道官は、「この裁判は、すべてのアメリカ人の安全と、市民権の神聖さに巨大な影響を与える」と述べ、「出生地主義の問題について、米国民を代表して主張を展開することを楽しみにしている」と強調しています。
一方で、トランプ政権の移民政策は1期目から賛否が激しく分かれてきました。批判する側は、人種や宗教に基づく差別につながると指摘し、今回の出生地主義制限もその延長線上にあるとみています。
原告側は「大統領は憲法を変えられない」と反論
原告側の一つである米市民自由連合(ACLU)で全国法務ディレクターを務めるセシリア・ワン氏は、「いかなる大統領も、14条修正が約束している市民権の根本的な保障を変えることはできない」と述べ、大統領令は明らかに違憲だと主張しています。
ワン氏は、最高裁が今期中にこの問題に最終的な決着をつけることを期待しているとし、「この裁判所で、出生地主義をめぐる議論に終止符を打ちたい」と語っています。
日本から見た「国籍」議論への示唆
日本の国籍法は血統主義(親が日本人かどうか)を基本としていますが、少子高齢化や人の移動の増加にともない、「誰を社会の一員として迎え入れるのか」という問いは日本社会とも無関係ではありません。
今回の米連邦最高裁の判断は、米国内の政治を超えて、「国籍とは何を意味するのか」「国境と人の移動をどう考えるのか」というより広い問いを世界に投げかけるものになりそうです。来年6月末までに示される見通しの結論が、移民政策だけでなく、市民権をめぐる国際的な議論にも影響を与える可能性があります。
Reference(s):
Supreme Court to rule on Trump bid to curb birthright citizenship
cgtn.com








