ロシア軍がMyrnohrad前進を主張 トランプ政権仲介の和平案とせめぎ合い
ロシア軍がウクライナ東部の町Myrnohradでの前進を強調する一方、米国仲介の和平交渉ではトランプ政権が示した和平案の修正をめぐる駆け引きが激しくなっています。前線の戦況と外交交渉が同時に動くなかで、今どちらが優位に立つのかが今後の停戦条件を大きく左右しようとしています。
ロシア軍トップ「前線全体で前進」
ロシア軍制服組トップのワレリー・ゲラシモフ参謀総長は9日、ウクライナのDnipropetrovsk地域で戦闘を指揮する「Centre Grouping(センター集団)」の司令部会議で、ロシア軍が「ウクライナの前線全体で前進している」と述べました。
ゲラシモフ氏によると、ロシア軍は現在、ウクライナ軍部隊を包囲したとするMyrnohradの戦闘に重点を置いており、ウラジーミル・プーチン大統領からは同市でのウクライナ軍撃破を指示されているといいます。Myrnohradは、戦争前には約4万6000人が暮らしていたとされる町で、ポクロフスク(Pokrovsk)の東に位置しています。
ゲラシモフ氏は、ロシア軍がすでにMyrnohradの建物の30%超を掌握したとも主張しました。
- 前線全体でロシア軍が前進していると説明
- Myrnohradで包囲したとするウクライナ軍部隊の撃破が目標
- プーチン大統領がMyrnohrad制圧を命じたと報告
- 町の建物の3割超をロシア軍が支配していると主張
ウクライナ「防衛線を維持し、高い代償を払わせている」
これに対しウクライナ側は、ロシアが陥落を主張してきたポクロフスクについて、いまも一部を保持しているとし、Myrnohradでも反撃を続けていると説明しています。
ウクライナは、自国軍が防衛線を維持しつつ、ロシアに対し「比較的限定的な前進のために高い代償を払わせている」として、戦況は一方的なものではないと強調しています。戦場の評価をめぐって、両国の主張は大きく食い違っている形です。
プーチン氏「ドンバス全域の掌握目指す」
プーチン大統領は先週、ウクライナ軍が撤退しない限り、ウクライナのドンバス地域を武力によって完全に掌握する考えを改めて示しました。これに対しキーウは、こうした要求を明確に拒否しています。
Myrnohradやポクロフスク周辺での攻防は、ドンバス全体の支配をめぐる攻勢の一部として位置づけられており、ロシア側は戦場での前進を外交・交渉の場でもてこにしようとしているように見えます。
トランプ政権仲介の和平案、20項目に再編
一方、米国が仲介する和平努力も進んでいます。ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領は、トランプ政権がかつて提示した28項目の和平提案の修正を求めており、9日には修正版をワシントンに提示する見通しです。
ゼレンスキー大統領は前日(月曜日)のオンライン記者会見で、現在の和平案は20項目に整理され、「明らかに反ウクライナ的だった項目が削除された」と説明しました。
同氏はさらに、ロシアに領土を引き渡す考えはないと強調しました。「領土を譲り渡す法的権利はウクライナ法や憲法、国際法の下で持っていないし、道義的にもそのような権利はない」と述べ、領土不可譲の立場を鮮明にしています。
ゼレンスキー大統領は同じく前日、ロンドンでイギリスのキア・スターマー首相、フランスのエマニュエル・マクロン大統領、ドイツのフリードリヒ・メルツ首相と会談しており、欧州主要国との連携を確認したうえで、米国に修正案を提示する流れとなります。
ホワイトハウスの圧力とトランプ大統領の不満
和平交渉のスピードをめぐっては、ホワイトハウスからキーウに対する圧力も強まっています。米国のドナルド・トランプ大統領は、ゼレンスキー大統領が自らの政権の提案を十分に読んでいないと不満を示し、「少し失望している」と語ったとされています。
トランプ政権の提案は当初28項目でしたが、ゼレンスキー大統領側が受け入れがたい内容として見なす項目が削られた結果、20項目へと再編されました。その修正版を米側にどう評価させるかが、今後の和平協議の行方を左右することになりそうです。
モスクワ側「戦場の前進が交渉力を強化」
トランプ政権の特使であるスティーブ・ウィトコフ氏とジャレッド・クシュナー氏は先週、モスクワのクレムリンでプーチン大統領と会談しました。しかし、ロシア側は米国案の一部を受け入れられないとし、合意には至りませんでした。
プーチン大統領の外交顧問で主要交渉役のユーリー・ウシャコフ氏は、その後の説明で、和平交渉で妥協点には到達しなかったとしたうえで、最近の戦場での前進がロシアの交渉上の立場を強めているとの見方を示しました。
戦況報告は誰に向けたメッセージか
Myrnohradやポクロフスクをめぐる戦況をめぐって、ロシアとウクライナの発表は大きく異なっています。どこまで前進しているのか、どれだけの損害が出ているのかという数字は、国内向けの説明であると同時に、相手側や第三国に向けたメッセージでもあります。
今回、ロシア軍トップが前線全体での前進とMyrnohradでの包囲を強調したタイミングで、プーチン大統領の側近が「戦場の前進が交渉力を高めている」と語り、トランプ政権はゼレンスキー大統領に和平案への迅速な合意を求めています。戦闘と外交が同時に進む中で、各プレーヤーがそれぞれの立場を有利にするために、どのような情報を発信しているのかが一層重要になっています。
領土を一切譲らないとするウクライナの姿勢と、ドンバス全域の掌握を目指すロシアの方針、そして合意を急ぐトランプ政権という三者の思惑が、Myrnohradという一つの前線と和平案の文言の両方に重なり合う構図が浮かび上がっています。
戦場からの一つひとつの報告が、テーブルの上にある和平案の文言を静かに、しかし確実に書き換えていく――今は、そうした局面にあるようです。
Reference(s):
Russia's top general says forces advancing on Ukraine's Myrnohrad
cgtn.com








