ギリシャで農家抗議拡大 政府は補助金問題とどう向き合うか
2025年12月10日現在、ギリシャで農家の抗議行動が激しさを増しています。11月下旬から続くデモは、高速道路や国境検問所、クレタ島の空港を巻き込み、政府はインフラのまひを避けるため対応を急いでいます。
全国に広がるトラクターの列
ギリシャ各地では、農家がトラクターで幹線道路や国境付近を断続的に封鎖しています。農業団体幹部のソクラティス・アリフテイラス氏によると、「この瞬間、ギリシャの道路には2万台を超えるトラクターが出ており、2万5千台に近づいている」状況だといいます。
農家らは、クレタ島の空港を一時占拠したのに続き、中部ボロスの港も陸と海の両方から封鎖する構えです。テッサリア地方の農家たちは、水曜日にボロス港を止めることを決めたと伝えられています。
抗議行動の主なポイント
- 11月下旬から、高速道路や国境検問所がトラクターで断続的に封鎖
- クレタ島では空港が占拠され、交通に影響
- 農家側は中部ボロス港の封鎖も予告
「作るほど赤字」 農家が訴える現実
こうした抗議の背景には、農家の厳しい採算状況があります。タバコや綿花を栽培するバイオス・ツィアクマキス氏は、取材に対し「農産物の価格は屈辱的なほど低く、生産コストの方が高い」と話し、「生産してもお金が残らない」現状を訴えました。
ラリサ近郊で綿花を育てるイオルダニス・イオアニディス氏も、トラクター集会の現場で「農業部門は底を打った。私たちには失うものがほとんど残っていない」と語っています。政府が支払うとする資金も、「2023年分として本来支払われるべきお金にすぎず、一次産業を本気で支える政治的意思は見えない」と受け止めています。
別の農家、エヴリピデス・カツァロス氏は、自身のナシ栽培について「毎年の生産コストは3万1千ユーロに達するのに、実際の収入は2万7千ユーロしかない」と試算し、要求は単なる値上げではなく「生き残り」がかかった問題だと強調しました。「政府からは何も与えられていない」という言葉は、現場の切迫感を象徴しています。
補助金スキャンダルで揺れる政府
農家の怒りを増幅させているのが、農業補助金をめぐるスキャンダルです。キリアコス・ミツォタキス首相率いる保守政権は、欧州連合(EU)の当局が調査する補助金不正問題への対応に数カ月間苦しんできました。この問題を背景に、数万人規模の農家への支払いが遅れています。
政府は、正当な農家に対しては追加の支援金を配分すると約束しています。ただ、農家の側では、低迷する農産物価格に加え、エネルギーコストの上昇や羊痘の流行による打撃で、従来の補助金だけでは立ち行かないという不満が強まっています。
インフラ封鎖が映すもの
今回の抗議行動は、高速道路や港、国境といった国のインフラを舞台に続いています。全国で2万台を超えるトラクターが道路に並ぶ光景は、ギリシャ農業が直面する危機の深さを視覚的に示しています。
農家たちが掲げる主な訴えは、次のように整理できます。
- 生産コストを下回る農産物価格の是正
- エネルギー価格高騰への支援
- 羊痘など家畜疫病による被害への補償
- 補助金支払いの遅延解消と、公正な配分
クレタ島の空港占拠やボロス港封鎖の構えは、観光や物流の要所をあえて選ぶことで、危機感を社会に共有させようとする動きとも読めます。「生き残るための抗議」という農家の言葉は、農業だけでなく、採算に苦しむ多くの産業の不安とも重なります。
これからの焦点
今後の焦点は、政府がどこまで踏み込んだ支援策を示し、農家側がどこまで抗議のエスカレーションを続けるのか、という点です。高速道路や港湾、国境の封鎖が長期化すれば、ギリシャ経済全体への影響も避けられません。
一方で、EU当局の調査が続くなか、補助金の配分をめぐる信頼を回復できるかどうかも問われています。農家の声にどう応えるかは、ギリシャにとってだけでなく、農業と地域社会の持続可能性をめぐる、より広い議論の一部でもあります。
Reference(s):
Greek government moves to address farmer protests after Crete clashes
cgtn.com








