米国観光が減少、世界の旅行ブームとの逆行 ビザ費用と政治が影響か video poster
世界の旅行需要がブームと言われるほど回復するなか、米国への国際観光はむしろ減少傾向が続いています。月を追うごとに、前年よりも米国を訪れる外国人旅行者が少なくなっているとされ、観光立国としてのイメージに静かな変化が起きています。
世界的な旅行ブームの中で、米国だけが伸び悩む
国際観光が力強く戻りつつある多くの国・地域と対照的に、米国では海外からの旅行者数が減少を続けています。世界の観光地が復調ムードに沸く一方で、米国だけが逆行するような姿です。
こうした傾向は一時的な落ち込みではなく、「月ごとに前年を下回る状態が続いている」という点が特徴です。短期的な要因というより、政策やイメージに関わる構造的な変化が影響している可能性があります。
ロサンゼルスとラスベガスに表れる観光の逆風
観光業への影響が特に大きいとされるのが、ロサンゼルスやラスベガスといった米国を代表する人気都市です。映画やエンターテインメント、カジノやショーといった観光資源を抱えるこれらの都市では、海外からの客足が落ち込めば、宿泊、飲食、サービス産業全体に波紋が広がります。
現地から状況を伝えているCGTNのEdiz Tiyansan記者によると、こうした主要観光地が、国際観光の減少による「一番の打撃」を受けていると分析されています。
観光客減少を招く複数の要因
専門家やアナリストは、米国への国際観光が落ち込んでいる背景として、いくつかの要因が重なっていると指摘しています。
- 政治的なレトリック:国外や移民に対して厳しいトーンの発言が続くことで、「外国人にとって本当に歓迎される場所なのか」という疑問を抱く人が増えているとみられます。
- 入国管理の厳格化:入国審査のハードルが高くなり、手続きが複雑で時間がかかるとの印象が強まると、「気軽に行ける旅行先」からは遠ざかってしまいます。
- 関税(タリフ)の問題:通商政策をめぐる関税の引き上げなどが続くと、ビジネス客を含む往来全体のムードにも影響を与え、出張と観光を組み合わせたような旅が減る可能性があります。
- トラベル・バン(旅行禁止措置):特定の国・地域からの渡航を制限する措置がたびたび話題になることで、「突然ルールが変わるかもしれない」という不安が残ります。
- 新たなビザ・インテグリティー・フィー:1人あたり250ドルの追加費用が必要とされる新料金は、とくに家族旅行や団体旅行では大きな負担になります。この金額が、別の国・地域を選ぶ決定打になりうると懸念されています。
こうした要素が重なり合うことで、「わざわざ手間とコストをかけてまで、今、米国へ行く必要があるのか」と考える旅行者が増えているとみられます。
コストと心理的ハードルが行き先を変える
旅行先を選ぶとき、費用と手続きのわかりやすさは重要な判断材料です。ビザ申請に関する新たな料金や、入国時の不確実性が増すと、その国を訪れる「心理的コスト」も高まります。
世界的な旅行ブームのなかで、他の多くの国・地域は、ビザ手続きの簡素化やオンライン化などを通じて、旅行者にとってのハードルを下げる方向に動いています。その一方で、米国は追加費用や厳しい入国管理によって、「行きやすさ」という点で見劣りしてしまう場面が増えているようです。
旅行者の視点から見れば、同じ予算と日数で楽しめるのであれば、入国手続きがシンプルで、追加料金の少ない目的地が選ばれやすくなります。結果として、米国は「憧れの旅行先」であり続けながらも、「今すぐ行く先」からは外れがちになるリスクを抱えています。
観光業と地域社会に広がる波紋
国際観光の減少は、航空会社やホテルだけでなく、地域の飲食店、小売店、娯楽産業にもじわじわと影響します。ロサンゼルスやラスベガスのように観光への依存度が高い都市では、客層の変化が、雇用や街のにぎわいにも直結します。
また、観光は経済効果だけでなく、文化交流や相互理解を生む入口でもあります。米国を訪れる人が減れば、現地の人々と各国・地域の人々が直接出会い、対話する機会も目に見えないかたちで減っていきます。
国際ニュースとして見たとき、観光の減少は「ドル建ての損失額」だけでは測りきれない、社会的・文化的な影響も含んでいると言えそうです。
これから問われる「開放性」と「安全」のバランス
今回の動きが示しているのは、政治や安全保障をめぐる議論と、観光立国としての開放性が、いかに微妙なバランスの上に成り立っているかという点です。
米国にとって、安全保障や入国管理の厳格化は重要な政策課題である一方で、「世界から人を引きつける国であり続けること」もまた、経済やソフトパワーにとって欠かせません。観光客の減少が続く現在、そのバランスの取り方が改めて問われているように見えます。
同時に、この状況は、他の国や地域にとっても、観光政策と国のイメージ戦略がどれほど密接に結びついているかを静かに物語っています。旅行者が世界中から行き先を自由に選べる今、国際ニュースとしての観光の数字は、その国が発しているメッセージの受け止められ方を映し出す鏡でもあります。
Reference(s):
cgtn.com








