トランプ氏が欧州を「衰退」と批判、メルツ独首相は「より自立したEU」を主張
米国のドナルド・トランプ大統領が欧州を「衰退しつつある」と厳しく評し、これに対してドイツのフリードリヒ・メルツ首相ら欧州側が安全保障面での自立を訴えています。今週公表された米国の国家安全保障戦略とあわせ、米欧関係のずれが改めて浮き彫りになっています。
トランプ氏「欧州は衰退しつつある」発言
米メディアのポリティコが今週掲載したインタビューで、トランプ大統領は欧州の現状について「彼らは弱いと思う。さらに、非常にポリティカル・コレクトであろうとしている」と述べ、欧州の指導者たちは「どうしてよいか分かっていない」と批判しました。
大統領は、移民・難民をめぐる欧州の国境管理政策に変化がなければ、一部の欧州諸国は「もはや存続可能な国家ではなくなる」と警告。中東やアフリカからの移民の流入によって、ロンドンやパリといった大都市が「負担で軋みつつある」と表現しました。
ウクライナ危機をめぐっても、トランプ氏は欧州の役割を低く評価しました。「彼らは話しているが、結果を出していない。戦争はただだらだらと続いている」と述べ、ロシアがウクライナよりも明らかに強い立場にあるとの見方を示したうえで、ウクライナでの新たな選挙実施を改めて求めました。
米国家安全保障戦略が示す対欧州方針
トランプ政権が先週公表した国家安全保障戦略は、移民やその他の政治的に敏感な争点をめぐり、欧州の現状に対する「抵抗を育てる」ことを掲げています。欧州内の政策や世論に、米国として影響を与えていく姿勢を打ち出した形です。
しかし、欧州側はこの方針に強い警戒感を示しています。欧州理事会議長のアントニオ・コスタ氏は、米国の戦略文書に対し「同盟国は、他の同盟国の民主的な生活や国内の政治的選択に干渉すると脅すべきではない」と述べ、内政への介入と受け止められかねない姿勢を批判しました。
複数の米欧メディアによれば、約30ページに及ぶ今回の国家安全保障戦略のうち、欧州に割かれた分量はわずか2ページ半程度にとどまっています。英紙フィナンシャル・タイムズは、この文書は「ワシントンと伝統的な同盟国とのあいだに広がったイデオロギー上の溝」を浮き彫りにしていると指摘しています。
メルツ独首相「欧州は自ら民主主義を守れる」
ドイツのフリードリヒ・メルツ首相も、米国の新戦略に対する懸念を公然と示しました。メルツ氏はドイツ西部ラインラント・プファルツ州での記者会見で、今回の国家安全保障戦略の一部は「欧州の立場からは受け入れがたい」と強調しました。
メルツ氏は、ドイツと欧州は安全保障政策の面で米国への依存を減らし、より自立した立場を築くべきだと主張。「今、米国が欧州の民主主義を救おうとする必要性は感じない。もし民主主義を守らなければならない状況になっても、欧州は自分たちの力でやり遂げるだろう」と述べました。
さらに同氏は、今回の戦略文書にはトランプ政権が掲げる「アメリカ・ファースト」の原則が特に色濃く表れていると分析。そのうえで、「アメリカ・ファーストであることは理解できるが、アメリカ・アローンになることは、米国自身の利益にもならない。世界にはパートナーが必要だ」と語り、同盟関係の重要性もあらためて強調しました。
移民と安全保障、ウクライナ危機が交差する米欧のずれ
今回の一連の発言からは、移民政策、ウクライナ危機、安全保障の負担分担という三つの論点が、米欧関係の中で複雑に絡み合っている様子が見えてきます。
トランプ政権は、欧州の移民受け入れや国境管理を「弱さ」の象徴とみなし、治安や国家の持続可能性を脅かす要因と位置づけています。一方で、欧州側は、民主主義や法の支配といった価値を掲げつつ、外部からの圧力や内政干渉と受け取られかねない言動には距離を置こうとしています。
ウクライナ危機についても、トランプ氏は欧州を「話すだけで結果を出さない」と批判しましたが、メルツ氏ら欧州の指導者は、「民主主義を守る主体はあくまで欧州自身だ」というメッセージを発しています。同じ「同盟」を口にしながらも、その意味づけや期待する役割には微妙なずれがあることがうかがえます。
自立する欧州と同盟を求める米国は両立するか
米国側は、欧州の現状に対して厳しい評価を示しつつも、国家安全保障戦略では移民など敏感な課題で欧州の現状に「抵抗」を育てると記し、欧州内部の議論に影響を与えようとしています。他方で、メルツ首相は欧州の自立を掲げながらも、米国には「世界にはパートナーが必要だ」と呼びかけました。
トランプ政権のアメリカ・ファースト路線と、「より自立した欧州」を目指す動きは、一見すると衝突しているようにも見えます。しかし、負担の分担や役割分担の再調整という視点から見れば、双方が新たなバランスを模索している過程ともとらえられます。
移民政策やウクライナ危機への対応は、今後も米欧双方の国内政治と密接に結びつきながら議論が続きそうです。「弱い欧州」と見る米国の視線と、「自ら民主主義を守る欧州」を掲げる側の意識。そのギャップが、これからの米欧関係をどのように形作っていくのか、注目が集まります。
Reference(s):
Trump says Europe 'decaying,' Merz vows 'more independent' EU
cgtn.com








