ウクライナ和平へ圧力と対話 トランプ政権案と北欧の「交渉継続」論
長期化するロシア・ウクライナ紛争をめぐり、アメリカと欧州で「どう終わらせるか」をめぐる動きが一気に加速しています。トランプ政権はウクライナに大幅な領土譲歩を含む和平案の受け入れを迫る一方、ノルウェーやフィンランドからはロシアとの対話継続を訴える声が上がっています。
トランプ政権、ゼレンスキー氏に和平案の早期受諾を要求
米メディアによると、トランプ政権は最新の米仲介和平案について、ウクライナのゼレンスキー大統領に対し「明確なイエス」を迫っています。報道では、この案にはウクライナ側による大きな領土譲歩が含まれる可能性があるとされています。
米オンラインメディアAxiosは、ウクライナ当局者2人の話として、今週末に行われた約2時間の電話協議で、米大統領特別代表スティーブ・ウィトコフ氏とトランプ大統領の娘婿ジャレッド・クシュナー氏がゼレンスキー氏に和平案を説明し、受け入れの判断を迫ったと伝えました。
政治専門メディアPoliticoのインタビューで、ゼレンスキー氏に決断の期限を設けたか問われたトランプ大統領は、今週月曜の時点で「彼は早く動いて、いろいろなことを受け入れ始めなければならない。なぜなら彼は負けつつあるからだ」と語ったとされています。
英紙フィナンシャル・タイムズは、トランプ大統領が「クリスマスまで」の合意成立を望んでいると報道。ゼレンスキー氏は米側の仲介者に対し、欧州の同盟国と協議する時間が必要だと伝えたとされています。
モスクワとも接触 「ドンバス全域割譲」を巡る圧力
Axiosによると、ウィトコフ氏とクシュナー氏は先週、モスクワでロシアのプーチン大統領と約5時間にわたって会談。その後、今週まで3日間にわたり、米フロリダ州マイアミでウクライナ側の首席交渉官らと協議を行いました。
交渉の中でロシア側は、東部ドンバス地域全域、つまり現在もウクライナ政府が実効支配する地域を含む「ドンバス全体」の割譲を要求したとされています。
あるウクライナ高官はAxiosに対し、「米国は、ロシアがドンバス全域を取るという願望を、さまざまな形でわれわれに売り込もうとしているように感じた」と語り、アメリカがこの要求をゼレンスキー氏に受け入れさせようとしているとの印象を明かしました。
トランプ大統領は今週末のイベントで、ゼレンスキー氏がまだ提案文書を読んでいないと聞き「少し失望した」と発言。これに先立ち、ゼレンスキー氏は米側との協議を「建設的だが容易ではない」と表現していました。
ロンドンで欧州首脳と会談 「公正で持続可能な和平」を確認
ゼレンスキー大統領は今週月曜、ロンドンで英国のキア・スターマー首相、フランスのエマニュエル・マクロン大統領、ドイツのフリードリヒ・メルツ首相と会談し、ウクライナ和平を協議しました。
英政府の発表によれば、3人の欧州首脳とゼレンスキー氏は「ウクライナにおける公正で持続可能な和平」の必要性を改めて強調しました。ここでいう「公正な和平」が具体的に何を意味するのか、領土問題や安全保障の枠組みを巡って解釈の幅がある点が、今後の焦点となりそうです。
ノルウェー財務相ストルテンベルグ氏 「ロシアとの対話を維持すべき」
一方、欧州ではロシアとの対話再開を求める声も出始めています。ノルウェーのイェンス・ストルテンベルグ財務相(北大西洋条約機構=NATOの前事務総長)は今週火曜、ウクライナ戦争終結に向けた議論の一環として、「欧州はロシアとのコミュニケーションを維持すべきだ」と呼びかけました。
フィンランド大西洋評議会が主催したパネル討論で、ストルテンベルグ氏は「ロシアは依然として隣人であり続ける」と強調。ウクライナ紛争の解決には、最終段階で軍備管理を重視した対話が不可欠になるとの考えを示しました。
また同氏は、欧州が今ロシアに関与することで、今後の世界的な安全保障秩序の形成に影響を与えられると指摘し、対話の窓を完全に閉ざすべきではないと訴えました。
フィンランドのスタブ大統領「和平はこれまでで最も近いが…」
パネル討論に同席したフィンランドのアレクサンデル・スタブ大統領も、和平への期待と難しさを同時に語りました。スタブ氏は、紛争開始以降と比べた場合「ウクライナに和平が訪れる可能性は、今がこれまでで最も近い」と述べる一方で、領土問題や将来の安全保障の取り決めが最も難しい論点として残っていると警告しました。
スタブ氏によれば、フィンランドを含むウクライナ支援国の多くは、戦後の安全保障枠組みに関与する用意がある一方で、正式な安全保障条約の形で「保証」を提供することは想定していません。現在、交渉担当者たちは、安保上の取り決めと復興支援を柱とする「20項目の枠組み案」を練っているものの、領土をどう扱うかという核心部分では合意に至っていないといいます。
イベント後、スタブ氏はフィンランド公共放送Yleに対し、「まだ終わりではなく、最も難しい問いが残っている」と述べ、着地点を見出す作業がこれから本格化することを示唆しました。
「領土」と「安全保障」 ウクライナ和平を左右する二つの軸
今回浮かび上がったのは、ウクライナ和平を巡って少なくとも二つの軸がせめぎ合っていることです。
- 一つ目は、ドンバスをはじめとする領土の線引きと、その正当性をどう位置づけるかという問題。
- 二つ目は、戦後のウクライナにどの程度の安全保障上の「傘」を提供し、ロシアとの再衝突リスクを抑えるかという問題です。
米国発の和平案が、ロシアの要求する領土割譲をどこまで取り込むのか。その見返りとして、どのような安全保障措置や復興支援が用意されるのか。欧州各国の首脳が繰り返し口にする「公正で持続可能な和平」という抽象的な言葉の中身が、今まさに具体的な条件として問われ始めています。
クリスマスまでの合意を目指すというトランプ政権の強い時間的プレッシャーと、「最も難しい問いはまだ開いたまま」というフィンランド側の慎重な見立て。この温度差こそが、紛争終結までの道のりの複雑さを物語っていると言えそうです。
Reference(s):
Trump pushes peace plan while Norwegian minister urges talks
cgtn.com








