米国の関税でイタリア産パスタ危機 最大107%上乗せの衝撃 video poster
米国がイタリア産パスタに最大107%もの関税を課す可能性が取り沙汰されています。価格はほぼ倍に跳ね上がるおそれがあり、イタリアの生産者だけでなく、多くのアメリカの消費者やシェフにとっても無視できない動きです。
米国が検討する「最大107%関税」とは
今回焦点となっているのは、イタリアから米国へ輸出されるパスタです。いわゆるダンピング、つまり「不当に安い価格での輸出」をめぐる疑いがあるとして、米国当局が最大107%の追加関税を検討しているとされています。
もしこの関税が導入されれば、イタリア産パスタの店頭価格はほぼ倍になる可能性があります。パスタは日常食として定着しているだけに、アメリカの家庭やレストランにとっても大きな負担になりかねません。
アメリカはイタリア産パスタの主要な輸入先のひとつであり、2024年の輸入額はおよそ7億8千万ドル規模とされています。いわば巨大な市場を相手にした「関税カード」が切られようとしている状況です。
パスタは「商品以上の存在」 シェフが語る思い
こうした動きを、現場の料理人たちはどう見ているのでしょうか。イタリア出身のシェフ、エマヌエル・ディ・リッドさんは、12歳の頃から厨房に立ってきました。中国の国際メディアCGTNの取材に対し、パスタへの特別な思いをこう語っています。
「パスタは私たちにとって文化であり、家族であり、分かち合いそのものです。シェフにとって一皿のパスタを作ることは、心が喜びで満たされる行為なのです」
パスタは単なる炭水化物ではなく、家庭の食卓や友人との集まり、祝いの場など、さまざまな場面で人と人をつなぐ象徴的な料理だといえます。その意味で「値段が上がるかどうか」の話は、文化のあり方にも静かに波及します。
約1600万人のルーツと結びつく「アメリカのパスタ」
パスタへの情熱はイタリア国内にとどまりません。アメリカには約1600万人のイタリア系住民がいるとされ、イタリアの食文化はすでにアメリカ社会の一部となっています。
レストランのメニューから家庭の常備食まで、イタリア産パスタは「本場の味」を象徴する存在です。今回の関税案は、単に輸入食品の一つを巡る議論というよりも、移民の歴史や多文化社会のあり方とも重なって見えてきます。
輸出に依存するパスタメーカーの不安
関税の影響を最も直接受けるのが、イタリアの生産者たちです。創業から1世紀以上の歴史を持つとされる手作り系パスタメーカー、ラスティケッラ・ダブルッツォもその一つです。
同社のステファニア・ペドゥッツィさんはCGTNの取材に対し、次のように語りました。「米国市場は私たちにとって非常に重要です。売り上げの80%は70の国や地域への輸出で、その中でも米国が最大の市場です」
全体の売り上げの大半を海外に依存し、そのトップがアメリカという構図は、多くのイタリア企業に共通する姿でもあります。だからこそ、関税一つで事業計画が揺らぐリスクも抱えています。
もし最大107%関税が導入されたら
では、仮に最大107%の関税が実際に導入された場合、どのような変化が起きるのでしょうか。可能性として考えられる影響を整理すると、次のような点が見えてきます。
- 米国の店頭価格の上昇 イタリア産パスタがこれまでの「ちょっといいパスタ」から「ぜいたく品」に近づき、消費者がより安価な別の産地やブランドに切り替える動きが出るかもしれません。
- レストランのメニュー見直し 原材料費が上がれば、パスタ料理の価格改定や、別の食材への置き換えが検討される可能性があります。イタリア系レストランにとっては、店の「顔」ともいえるメニュー構成を再考せざるを得ない場面も想定されます。
- イタリア側生産者への圧力 販売量の減少や取引条件の見直しを迫られれば、中小の生産者ほど打撃は大きくなります。米国以外の市場へのシフトを急ぐ必要に迫られるかもしれません。
もっとも、食の世界では「安いから」「高いから」という理由だけでは語りきれない要素もあります。本場の小麦や水、製法にこだわるパスタに対して、消費者がどこまで追加のコストを受け入れるかは、価格だけでは測れない部分も残ります。
食卓に届くまでの「見えない政治」
日々の食卓に上る一皿のパスタの背景には、貿易ルールや関税、通商交渉といった「見えない政治」があります。今回のように、ダンピングをめぐる疑いから関税の議論が起きると、食の世界と国際政治が一気に近づいて見えてきます。
多くの人にとって「イタリア産パスタが好きかどうか」は単純な好みの問題ですが、その選択肢が将来も今と同じように手の届く価格で存在し続けるかどうかは、今進んでいる政策判断にも左右されます。
料理人エマヌエル・ディ・リッドさんが語ったように、パスタは文化であり、家族であり、分かち合いを象徴する存在です。数字としての「最大107%」という関税率の裏側には、そうした日常の物語が静かに揺れています。
今回の関税をめぐる動きは、国際ニュースとしての側面だけでなく、私たちが何を食べ、どんな価値をそこに見いだすのかを考えるきっかけにもなりそうです。
Reference(s):
Pasta panic as US trade tariff threats worry Italian producers
cgtn.com








