韓国最高裁、日本製鉄に賠償命令 徴用工遺族訴訟で初判断
韓国最高裁、日本製鉄に賠償命令 徴用工遺族訴訟で初の判断
韓国の最高裁判所にあたる大法院は木曜日、日本製鉄(Nippon Steel)に対し、日本の植民地支配期に強制労働させられたとされる被害者の遺族へ賠償を命じる判決を下しました。2018年の画期的な判決以来、同種の訴訟で最高裁が判断を示すのは初めてで、日韓関係や歴史認識をめぐる議論に改めて注目が集まっています。
1億ウォンの支払いを命令 原告は故チョン・ヒョンパル氏の遺族
韓国の通信社・聯合ニュース(Yonhap)によると、大法院は下級審の判断を支持し、日本製鉄に対して故チョン・ヒョンパル氏の遺族に1億ウォン(約6万7900ドル)の支払いを命じました。原告はチョン氏の4人の子どもで、2019年に同社を相手取り、2億ウォンの損害賠償を求める訴訟を起こしていました。
判決文によれば、チョン氏は日本による1910〜45年の朝鮮半島の植民地支配期にあたる1940〜42年、岩手県の製鉄所に連行され、劣悪な条件の下で働かされたとされています。その後、チョン氏は亡くなり、今回の訴訟は遺族による請求です。
争点は「時効」 例外の適用を最高裁が認める
この国際ニュースで特に注目されたのが、賠償請求権の「時効」をどう考えるかという点です。日本製鉄側は、韓国の民事上の通常の損害賠償請求は10年で時効にかかるとして、訴えは既に期限を過ぎていると主張していました。
聯合ニュースによると、韓国の民法では原則として損害賠償請求権の時効は10年とされていますが、「権利行使を不可能にする客観的事情が存在した場合」には例外が認められます。大法院は今回、この例外の適用を認め、原告側の請求を可能とする判断を示しました。
2018年判決が「法的障害」を取り除いた
今回の事件では、2018年の大法院判決が大きな意味を持ちました。2018年、大法院は日本企業に対し、日本の植民地支配期の強制労働(いわゆる徴用工)被害者への賠償責任があると初めて明確に認定しました。
2021年の一審では、チョン氏の遺族側の請求は認められませんでした。しかし2024年の控訴審で判断が覆り、裁判所は「2018年判決によって、それまで請求を妨げていた法的障害が取り除かれた」と解釈しました。大法院は今回、この控訴審判断を是認し、同様の法解釈を追認した形です。
徴用工訴訟の流れの中で見る今回の判決
2018年以降、韓国の裁判所は、日本企業に対する強制労働被害の賠償請求について、被害者側に有利な判断を相次いで示してきました。今回の判決は、その流れを改めて確認したものといえます。
一方で、個々の事件ごとに、被害の内容や証拠、時効の適用など論点は微妙に異なります。最高裁が「時効の例外適用」に明確な判断を示したことで、今後、同様の主張を含む訴訟がどのように扱われるのか、司法の判断が注目されます。
日韓関係にとっての意味は
強制労働問題は、戦後補償と歴史認識をめぐる日韓間の長年の懸案です。今回の韓国最高裁判決が、両国政府間の交渉や企業の対応にどのような影響を与えるのかは、現時点では見通しがはっきりしていません。
ただ、司法判断はあくまで国内法に基づくものであり、外交交渉や政治判断とは別のレイヤーで積み上がっていきます。歴史問題をめぐる感情や記憶は簡単には整理できませんが、個々の裁判を丁寧に追うことは、ニュースの背景にある文脈を理解する手がかりになりそうです。
静かに続く「過去」をめぐる対話
今回の判決は、一人の被害者とその家族の物語に基づくものです。同時に、韓国社会における司法の役割、日本企業の責任のあり方、そして歴史と現在との向き合い方を問い直すきっかけにもなっています。
国際ニュースとして見れば、「韓国最高裁が日本企業に賠償命令」という見出しで終わってしまいがちです。しかし、そこには時効の解釈や法的障害の有無といった技術的な議論とともに、長い時間を経てようやく声を上げた人びとの背景があります。日々流れていくニュースの中で、そうした文脈に少し立ち止まってみることが求められているのかもしれません。
Reference(s):
S. Korea court orders Nippon Steel to compensate forced-labor victim
cgtn.com








