ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領が、北大西洋条約機構(NATO)加盟の長年の目標を事実上取り下げる用意があると表明しました。米国や欧州、日本などによる強力な安全保障上の保証と引き換えに、ロシアとの紛争終結を目指すとしています。2025年12月14日に行われた発言は、ロシア・ウクライナ紛争の行方を左右しかねない大きな転換点として注目されています。
NATO加盟断念と安全保障保証の中身
ゼレンスキー氏は14日、ベルリンで予定されている米側代表団との協議を前に、キーウがNATO加盟の追求をやめる用意があると明らかにしました。その代わりに、米国および欧州の同盟国からの「第5条に相当する」二国間の安全保障保証を求めるとしています。
同氏はメッセンジャーアプリ「WhatsApp」を通じて記者団に対し、ウクライナと米国の間で、NATO条約第5条に似た形の二国間安全保障協定を結ぶ構想に言及しました。さらに、欧州のパートナー諸国に加え、カナダや日本など他の国々からの安全保障保証も求める考えを示し、「これはすでに我々の側の妥協だ」と強調しました。
ウクライナ側は、ロシアの強い反対により、当面NATO加盟は現実的ではないとの認識を示してきました。ロシアは紛争終結の前提条件として、NATOに対し東方拡大の停止を求めており、こうした状況が今回の方針転換の背景にあります。
- NATO加盟の追求を断念する用意
- 米国との二国間協定を軸にした「第5条のような」防衛義務
- 欧州、カナダ、日本など複数国による安全保障保証
- これらをウクライナ側の「妥協」と位置づけ
ベルリン協議と米側「和平案」の位置づけ
今回の発言は、同日ベルリンで予定されている米国側との協議を前に行われました。協議には、ドナルド・トランプ米大統領の特使スティーブ・ウィトコフ氏や、大統領の娘婿であるジャレッド・クシュナー氏らが出席する見通しで、ホワイトハウスが後押しする紛争解決案の受け入れをウクライナ側に促してきたとされています。
ベルリン協議では、NATO加盟を事実上棚上げする代わりに、米欧による安全保障保証と停戦・政治解決を組み合わせた包括的な枠組みが議題になるとみられます。ゼレンスキー氏の最新の発言は、その交渉に向けたウクライナ側の位置づけと譲歩のラインを事前に示したものと受け止められています。
停戦ラインと領土問題:「現状維持」の提案
領土問題について、ゼレンスキー氏はベルリン協議の場で対話に応じる用意があると表明しました。具体的には、停戦の下で現在の最前線を維持する形が「可能な限り最も公正な選択肢」になり得るとの見方を示しています。
同時に、この案はロシア側にとって受け入れがたいものと受け止められる可能性が高いと認めつつも、自国の立場に米国が支持を示すことへの期待を述べました。前線の現状維持を前提とした停戦は、事実上、それぞれの支配地域を固定化することにつながるため、双方にとって利害の大きいテーマです。
キーウの新提案と欧州の関与
ゼレンスキー氏によると、ウクライナ政府は今週前半、欧州の指導者らとの協議を経て修正版の提案文書をワシントンに提出しました。現時点で米側からの正式な回答は届いていないものの、「議論に臨む用意がある」として、今後の協議に前向きな姿勢を示しています。
このプロセスには、欧州各国が安全保障保証の一部を担う形で関与することが想定されており、米欧とウクライナ、そしてロシアを含めた複雑な力学の中で、新たな安全保障枠組みが模索されている状況です。
戦闘は続く中での政治交渉
一方で、前線では戦闘が続いています。ロシア国防省は14日、自国の防空部隊が過去24時間で誘導航空爆弾4発と、固定翼ドローン290機を撃墜したと発表しました。
同省はまた、ウクライナ軍や外国人戦闘員の燃料貯蔵施設や一時展開拠点など142カ所を攻撃し、ザポリージャ州のヴァルヴァロフカ村を掌握したと主張しました。ロシア軍はウクライナ側防衛線の奥深くへの前進を続けているとも説明しています。
これらはロシア側の発表であり、第三者による検証やウクライナ側の反応は本記事執筆時点では伝えられていません。政治交渉の動きとは裏腹に、地上での軍事行動が続いている構図が浮かび上がります。
今後の焦点:安全保障保証は「NATOの代替」となり得るか
NATO加盟を見送る代わりに、米国や欧州、日本などによる安全保障保証をどこまで具体的な仕組みに落とし込めるかが、今後の最大の焦点になりそうです。NATO条約第5条は、加盟国の一国への武力攻撃を全加盟国への攻撃とみなす集団防衛条項ですが、ゼレンスキー氏が求めるのは、これに近い性格の義務を二国間・多国間の協定で再現することだとみられます。
- 米国と欧州が、どこまで法的拘束力のある安全保障保証を提示するか
- ロシアがNATO加盟断念のシグナルと停戦ライン維持案にどう反応するか
- カナダや日本など、欧米以外の国々がどのような役割を担うか
軍事行動が続くなかでの「NATO加盟断念」と安全保障保証の模索は、ウクライナにとって大きな賭けでもあります。戦場と交渉の両方で主導権をどう確保していくのか、そして各国がどのような形で関与していくのかが、今後の国際秩序にも静かな影響を与えていきそうです。
Reference(s):
Ukraine offers to drop NATO membership demands for security guarantees
cgtn.com







