ME/CFSは「心の問題」ではない?豪州研究が示した複数系統の生物学的異常
慢性疲労症候群として知られるME/CFS(筋痛性脳脊髄炎/慢性疲労症候群)について、複数の生体システムに“同時に”異常が見られるとする研究結果が、2025年12月17日(水)に伝えられました。症状のつらさが見えにくいこの疾患を「医学的な状態」として捉える見方を、データ面から後押しする内容です。
何が見つかったのか:エネルギー・免疫・血管関連が同時に変化
オーストラリアのマッコーリー大学(Macquarie University)の研究チームは、ME/CFSの臨床診断基準を満たす61人と、年齢・性別を一致させた健康なボランティアの血液サンプル(全血)を比較しました。研究は学術誌「Cell Reports Medicine」に掲載されたとされています。
大学の発表によると、主なポイントは次の3領域が同時に揺れていたことです。
- 細胞のエネルギー代謝(細胞内エネルギーの作り方)
- 免疫細胞の構成・成熟度(免疫の担い手のバランス)
- 血管(内皮)機能に関連する血漿タンパク(血管の内側の状態を示す指標)
細胞の「エネルギーストレス」:ATPが作られにくい兆候
ME/CFSの患者サンプルでは、白血球においてAMP(アデノシン一リン酸)やADP(アデノシン二リン酸)が高い水準で見られ、「エネルギーストレス」の兆候が示されたといいます。これは、細胞の主要なエネルギー源であるATP(アデノシン三リン酸)の産生が低下していることを示唆する所見だと説明されています。
免疫細胞は「成熟が浅い」方向へ?
免疫細胞のプロファイリング(集団の内訳を詳しくみる解析)では、Tリンパ球(T細胞)のサブセットや樹状細胞、ナチュラルキラー(NK)細胞などで、より未成熟なサブセットへ傾く傾向が報告されました。免疫の“顔ぶれ”だけでなく、“育ち具合”にも違いがにじんだ形です。
血管内皮の活性化を示すタンパク増、免疫グロブリン関連は減
血漿(けっしょう:血液の液体成分)分析では、血管の内側を覆う内皮の活性化や血管壁のリモデリング(作り替え)に関わるタンパクが高い一方で、循環する免疫グロブリン関連タンパクが低い水準だったとされています。
研究チームの見立て:「臨床・生物学的な複雑さ」を可視化
研究の上級著者で、マッコーリー医科大学の臨床上級講師でもあるRichard Schloeffel氏(一般診療医としての経験もあるとされます)は、今回の結果について「ME/CFSの臨床的・生物学的な複雑さへの理解をさらに深める」とコメントしています。
また、こうしたモデルが臨床的に検証されれば、診断の遅れを減らし、生活の質(QOL)の改善につながり得るとも述べています。長期化しやすい苦痛や経済的負担の軽減、という言葉も添えられました。
次の焦点:強く関連する「7つの生物学的変数」
研究チームは、ME/CFSと強く関連する7つの生物学的変数を特定したとしています。注目点は、単一の異常ではなく、複数領域の機能不全が相互に関わり合いながら、臨床症状として現れている可能性を示したところにあります。
一方で、発表内でも示されている通り、こうしたモデルが実際の医療現場で使えるかどうかは、今後の臨床的な検証が鍵になります。今回の研究は、診断と理解の“手がかり”を増やす一歩として受け止められそうです。
Reference(s):
Biological differences identified in chronic fatigue syndrome cases
cgtn.com








