ロシア中銀がEuroclear提訴、EUは凍結資産のウクライナ活用を協議
EU首脳が2025年12月18〜19日にブリュッセルでウクライナ支援を議論するさなか、ロシア中央銀行が、ロシア資産を凍結・運用しているとしてベルギー拠点の決済機関Euroclear(ユーロクリア)を提訴する方針を明らかにしました。凍結資産を「どう使うか」という政治判断と、「凍結は違法だ」という法廷闘争が、同時進行で動き始めています。
何が起きたのか:ロシア中銀がモスクワで提訴へ
ロシア中央銀行は12月19日までに、Euroclearがロシアの資産を違法に凍結し、保持・利用していると主張し、モスクワ仲裁裁判所に請求を出すとしました。請求は、凍結資産相当額に加え、保持・利用によって生じた逸失利益(得られたはずの利益)も対象とされます。
- 請求総額:18兆ルーブル超(約2252億ドル)
- 予備審理:2026年1月16日予定
背景:EUが抱える「凍結ロシア資産」をめぐる難題
EUでは、ロシア・ウクライナ紛争の激化(2022年2月)以降、欧米諸国がロシアの海外資産を約3000億ドル規模で凍結してきたとされます。うち、ロシア中央銀行の資産としてEU域内に凍結されているのは約2100億ユーロ(約2460億ドル)で、その約9割をEuroclearが管理している、という整理です。
今回の提訴は、EUがこの凍結資産をウクライナ支援にどう位置づけるかを、ちょうど12月18〜19日のEU首脳会議で議題にしているタイミングと重なりました。ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領もブリュッセル入りし、資金の動員に向けた合意を呼びかけています。
EUで議論される「賠償ローン」構想とは
EU外交安全保障上級代表のカヤ・カラス氏は12月15日、複数の資金調達案が検討されていると述べ、その中で「賠償ローン」と呼ばれる案が最も信頼性が高いとの認識を示しました。報道内容を踏まえると、骨格は次のようなものです。
- 凍結されたロシア資産を担保にする
- EUが債券などで資金を調達し、ウクライナに融資する
- 返済は紛争後、EU側が「戦争賠償」と位置づける資金で賄う想定
EU内の温度差:ベルギーの懸念と反対国の存在
EU内には依然として隔たりがあります。ハンガリーとスロバキアは、凍結ロシア資産をウクライナ支援に使うことに一貫して反対してきたとされます。
また、Euroclearを抱えるベルギーは、資産の「没収」に踏み込むことは一方的な差し押さえに当たり国際法に反する可能性がある、と警告してきました。ベルギーのバルト・デ・ウェーフェル首相は12月19日までに、凍結資産の活用をめぐるEUの保証は「不十分」だと述べ、ベルギーが単独でリスクを負うことはできないと強調しました。
首相はさらに、没収が連鎖的な影響(いわゆるスノーボール効果)を起こし、Euroclearの顧客対応や財務の安定性を揺るがしかねないこと、欧州金融市場への信認やEuroclearの評判にも影響し得ること、国際法上の論点が残ることを挙げています。
なお、10月の首脳会議ではベルギーなどの異論により、賠償ローン案で合意に至らなかったとも伝えられています。加えて、協議筋の話として、ドイツのメルツ首相が、ベルギー側の懸念を和らげるためドイツ国内で保有されるロシア中銀資産の活用に言及した、と報じられました。
ロシア側の反発:法廷闘争と報復措置の示唆
ロシア外務省は、中央銀行資産の凍結を「窃盗」だとして繰り返し非難し、EUが没収に動けば対応すると警告してきたとされます。中国のシンクタンク「中国現代国際関係研究院(CICIR)」の研究者は、EU側の動きの背景として、(1)ウクライナ政府の運営や軍事調達の資金需要、(2)資産をめぐる決定で米国とロシアに主導権を握られたくないという懸念、(3)対米関係も見据えた結束と実行力の演出――の3点を挙げました。
一方で、ロシアが取り得る対抗策として、ロシア国内に残るEU企業資産(数百億ユーロ規模の可能性)への措置や、ニッケル、アルミニウム、肥料など重要資材の輸出制限が挙げられるとも伝えられています。
今後の焦点:EUの合意形成と、2026年1月の予備審理
今後は、政治と司法が互いに影響し合う局面になりそうです。EUが凍結資産の活用スキームをどこまで具体化できるのか、そしてロシア中銀の提訴が実務面(資産管理、リスク負担、国際法の解釈)にどんな論点を突きつけるのかが焦点になります。
- 2025年12月:EU首脳会議で凍結資産の活用が主要議題に
- 2026年1月16日:ロシア中銀の請求に関する予備審理予定
また報道によれば、米国では今週末(12月20〜21日)にかけてマイアミで米露当局者が協議する見通しがあり、ゼレンスキー氏はウクライナ交渉団が近日中(今週後半〜来週初め)に米国を訪れる可能性に言及しています。資産問題は、停戦や戦後の負担をどう設計するかという議論ともつながり、当面は外交交渉のテーブルからも外れにくいテーマになりそうです。
Reference(s):
Russia sues Euroclear as EU debates frozen assets for Ukraine
cgtn.com








