米・ウクライナ合意の「20項目和平案」 モスクワが精査、焦点は領土と非武装地帯
米国とウクライナが合意した「20項目の和平案」を、モスクワ側が受け取り精査している——停戦への入り口が見えた一方で、領土の扱いと軍事面の条件をめぐり、なお不透明さが残っています。
何が起きたのか:20項目和平案を「モスクワが分析中」
ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領は、米国主導の停戦に向けた草案について、最新案ではウクライナ側が「限定的な譲歩(譲歩を引き出した点)」を得たと明らかにしました。米国とウクライナの交渉担当者が合意した20項目の和平案は、現在モスクワで検討されているとされています。
クレムリンのドミトリー・ペスコフ報道官は木曜日、米国からの特使キリル・ドミトリエフ氏がモスクワに持ち込んだ文書について、ウクライナ紛争終結に関する資料を分析していると述べました。
「受け入れやすくなった点」と「残る大きな論点」
ゼレンスキー大統領は、文書中に受け入れにくい点もあるとしつつ、少なくとも次の点が修正されたと説明しています。
- ドネツク地域からの即時撤退要求が削除
- モスクワ軍が掌握した土地をロシア領として認める、という形の要求が削除
- NATO加盟を法的に断念する義務づけが削除
ただし、領土の扱い(どこまでをどう固定するのか)と、モスクワが新条件を受け入れるかどうかは依然として最大の焦点です。クレムリンはこれまで、ウクライナ東部からの全面撤退など、強硬な領土要求を簡単には下げない姿勢を示してきたとされています。
非武装地帯と「接触線」:現実を追認しつつ先送りする設計
今回の草案の核の一つが、非武装地帯(demilitarized zones)という考え方です。ゼレンスキー大統領は、ドネツク州でウクライナが現在コントロールしている約20%の地域を含め、将来的に部隊の一部を後退させる道を示唆しました。
また、ゼレンスキー大統領は、ドネツク、ルハンスク、ザポリージャ、ヘルソンの各地域について、合意日時点の部隊配備線が事実上の接触線(line of contact)として認められる、と最新案を説明しています。さらに、終結に必要な再配置(部隊の引き方)や、将来の特別経済区の枠組みを定義するための作業部会を設けるとしています。
この設計は、停戦に向けた「道筋」を作りつつ、最も痛みの大きい論点(撤退範囲や非武装地帯の具体)を、作業部会に持ち越す形にも見えます。ゼレンスキー大統領自身も「ロシアはドネツクからの撤退を求め、米国はその方法を探している」と述べ、双方が受け入れうる形式として非武装地帯や自由(特別)経済区を挙げました。
報道をめぐる応酬:ロシア外務省は「偽情報」と反発
一方で、交渉の「中身」をめぐる情報戦も続いています。ロシア外務省のマリア・ザハロワ報道官は、ロシアが和平案を調整しているというブルームバーグの報道を「偽情報」だと述べ、同メディアには「信頼できる情報源がない」と強く反発しました。
これに先立ち、ブルームバーグは「クレムリンに近い人物」を引用し、ロシア側が最新の米国案に対して、キーウ(キエフ)側の軍事に追加制限を課すなどの変更を求める可能性があると報じていました。
戦闘の現実:4年目の紛争、前線と都市への攻撃が続く
この和平案が注目される背景には、戦場での消耗が続いている現実があります。記事中では、トランプ米大統領が、2022年のロシア軍の攻勢で始まった4年目の紛争の終結を仲介しようとしているとされています。
これまでに多数の死者が出て、ウクライナ東部は大きな打撃を受け、数百万人が住まいを追われたと伝えられています。さらに、ロシア軍が前線で前進しつつ、都市やエネルギー網に対する夜間のミサイル・ドローン攻撃が続いている状況も描写されています。ロシア国防省は、南部ザポリージャ地域で新たにウクライナの集落を制圧したとも発表しました。
また、ロシアは2014年にクリミア半島を掌握し、2022年にはドネツク、ヘルソン、ルハンスク、ザポリージャの4地域を併合したとしてきた、という経緯も改めて言及されています。
これからの注目点:文書の「精査」の先に何が出るか
2025年12月26日現在、和平案は「検討中」という段階で、合意までの距離は測りにくいままです。とはいえ、今後の焦点はおおむね次の3点に集約されます。
- モスクワが文書をどう評価し、どの条件に修正を求めるのか
- 接触線の扱いが「固定」なのか「暫定」なのか(作業部会の設計を含む)
- 非武装地帯や軍の再配置が、現場でどこまで現実的に運用できるのか
停戦文書は、ときに「書けること」と「実行できること」の間に大きな段差が生まれます。今回の20項目案は、その段差を埋めるための仕組み(作業部会、非武装地帯、特別経済区)を持ち込もうとしているようにも見えます。だからこそ、次に出てくるモスクワ側の回答は、条文の可否だけでなく、実務の設計図として読まれることになりそうです。
Reference(s):
Moscow reviews new 20-point peace plan agreed by US and Ukraine
cgtn.com








