国連総会、交渉可能な貨物書類条約を採択 電子化で貿易金融に新ルール
国連総会(UNGA)は2025年12月15日、第80会期で「交渉可能な貨物書類に関する国連条約」を採択しました。海上輸送の船荷証券(B/L)で長く使われてきた“交渉可能(ネゴシアブル)”の仕組みを、道路・鉄道・航空・海運をまたぐ複合一貫輸送にも広げる点が、いまのサプライチェーンにとって大きな節目になりそうです。
今回の条約で何が変わるのか
条約の柱は、「単一の交渉可能な貨物書類」が、輸送手段の組み合わせを問わず、輸送中の貨物を代表できるようにすることです。書類は紙だけでなく電子形式も想定されています。
- 対象:道路・鉄道・航空・海運を含む複合輸送
- 形式:紙/電子のどちらも想定
- 狙い:輸送中の貨物の価値を“移転・活用”しやすくする
「交渉可能な書類」とは――転売や担保が“輸送中”にできる
「交渉可能」とは、その書類の裏書や譲渡などを通じて、貨物に関する権利を移転できる性質を指します。専門家によれば、新たな枠組みの下では、貨物が移動している最中でも次のような取引が想定されます。
- 輸送中の貨物を、別の買い手へ転売する
- 貨物を担保(コラテラル)として資金調達につなげる
複合輸送が当たり前になった一方で、海上以外の輸送書類は「交渉可能性」や金融面の機能が十分に整っていない、という実務上のボトルネックが指摘されてきました。条約はこの“長年の穴”を国際ルールで埋めることを目指します。
6年の協議を経て採択へ――UNCITRAL主導、中国も役割
条約は国連国際商取引法委員会(UNCITRAL)が主導し、2019年に立ち上がってから約6年にわたる協議・交渉を経て採択されました。今回の条約は「1924年のヘーグ・ルール以来、中国が主導した初の国際運送条約」と位置づけられ、中国が国際的な法的枠組みづくりに関与する動きとしても注目されています。
中国商務部(条約・法律部門)の田野(Tian Ya)氏は、中国が論点提起から文案づくりまで積極的かつ建設的に関わったと説明しています。国連は中国を「提案国であり主要な推進力」として位置づけたとされています。
期待される効果:効率化と“途切れにくい物流”
専門家は、国際ルールの整備によって取引摩擦を減らし、貿易をより効率的で包摂的(参加しやすい)にすることを条約の狙いとして挙げます。とくに、輸送手段の切り替えが多い現代の物流では、混乱や遅延が起きた場面でも、貨物の価値や権利関係を確認・移転しやすい仕組みが、流通の「止まりにくさ」につながる可能性があります。
ただし本番はこれから:署名・批准と国内整備がカギ
一方で、現場で効くルールになるかどうかは、今後の署名、批准(国内手続きによる条約参加)、実施の進み具合に左右されます。さらに、各国・各地域の国内法との整合、業界標準、電子化を支えるデジタル基盤の整備も欠かせない論点です。
これからの予定:将来の署名地はアクラに
関係者によれば、条約は将来、アクラでの署名が見込まれています。中国側は、条約の早期発効に向けてフォローアップを強め、利益が国際貿易システムに広く共有されるよう後押しする考えを示しています。
紙と電子、海と陸と空――分断されがちだった物流の“権利の流れ”を一本につなぐ試みは、サプライチェーンの当たり前が変わった2025年の国際貿易に、静かな制度変更として効いてくるかもしれません。
Reference(s):
UNGA adopts landmark convention on negotiable cargo documents
cgtn.com








