「私たちは幽霊」英夜勤を支える移民労働者の見えない仕事
イギリスの「24時間社会」を静かに回しているのは、夜に働く人たちです。ところがこの10年ほどで、夜勤を担う労働力はUK生まれから移民へと比重が移り、「見えない存在」として語られる現実が浮かび上がっています。
夜の労働力は約900万人、移民への依存が強まる
夜間に働く人は約900万人規模とされます。一方で、夜勤をするUK生まれの労働者は減少し、アンゴラ出身のレアンドロ・クリストバンさんのような移民が、現場を支える存在になってきました。
移民をめぐる議論が続く中でも、データは夜勤と移民の結びつきの強さを示しています。2022年の公式データによれば、UK生まれではない人は、UK生まれの人に比べて夜に働く割合が2倍だとされています。
- 夜間労働者:およそ900万人
- UK生まれでない人は夜勤に就く割合が2倍(2022年の公式データ)
- 医療・介護分野では夜勤の3分の1超が移民
「夜勤は不可視」——研究が照らす“影のインフラ”
夜勤の広がりを「不可視のフットプリント(足跡)」として追うのが、ユニバーシティ・カレッジ・コークの社会学者ジュリアス=セザール・マカリエ教授です。教授は、夜勤は「やや不公平にも『低技能』と呼ばれがちな分野」で移民が多く担っていると指摘します。
一方で、その仕事は「非常に本質的」だとも述べています。日中のオフィス、夜明け前の市場、休みなく動く医療・介護——これらは夜の労働が途切れた瞬間に、社会全体のリズムが崩れかねない領域です。
南ロンドンの市場で7年「夜勤の私たちは幽霊」
アンゴラ出身のレアンドロ・クリストバンさんは、南ロンドンの市場で7年間、いわゆる“graveyard(墓場)”と呼ばれる深夜帯のシフトを続けてきました。
「夜勤の私たちは幽霊みたいなものだ」。この言葉は、単に暗い時間に働くという意味だけではありません。多くの人が眠っている間に働き、朝のラッシュの手前で街から消える。役割は大きいのに、視界には入りにくい——その感覚がにじみます。
ボリビア出身のオフィス清掃員:スーツの流れに逆らって帰る朝
中央ロンドンの冷えた朝。ボリビア出身のロクサナ・パノソ・アルバさん(46)は、スーツ姿の銀行員たちが出勤する流れに逆らうように、夜勤を終えて歩きます。彼女が夜のあいだ清掃してきたのは、その人たちのオフィスです。
アルバさんのチームは、多くが移民で構成され、午後10時から午前7時まで、トイレやキッチン、会議室、そして500以上のデスクを清掃します。賃金はロンドン・リビング・ウェイジ(生活賃金)として、時給13.85ポンドだといいます。
アルバさんは結婚を通じてスペイン国籍を得ており、「スペインには仕事が残っていなかった」ことを理由に夫とともに英国へ移りました。移動の背景には、個人の選択だけでなく、景気や雇用の偏りといった構造も透けて見えます。
規制強化のなかで残る問い:「必要不可欠」なのに、どこまで見えているか
政府が海外出身労働者への締め付けを強める中、夜勤を支える移民労働者の存在は、政治的な論点にもなりやすい領域です。ただ現場の側から見れば、夜勤は社会の“快適さ”ではなく“稼働”そのものを支える基盤でもあります。
夜が明ける前に片づけられた市場、誰もいない間に整えられたオフィス、夜通し回る医療・介護。私たちの生活の手触りは、こうした「見えない仕事」によって毎日更新されています。見えにくいからこそ、数字と声の両方から実態を捉え直す必要がありそうです。
Reference(s):
cgtn.com








