薬剤耐性の変異を“弱点”に がん免疫療法へ新手法SpotNeoMet
がん治療で大きな壁となる「薬が効かなくなる(薬剤耐性)」を、逆に治療の標的に変える——。イスラエルのワイツマン科学研究所は2025年12月29日、薬剤耐性を生む変異から免疫療法の“狙いどころ”を見つける新手法を発表しました。
治療が効かなくなる理由:薬剤耐性という進化
転移を伴うがんでは、最初は効いていた治療薬が時間とともに効きにくくなることがあります。がん細胞が変異を重ね、生き残る性質(耐性)を獲得し、増殖を続けてしまうためです。
新研究の核:計算ツール「SpotNeoMet」
研究チームは、治療抵抗性(薬剤耐性)に関わる変異のうち、多くの患者に共通して現れやすいものを見つけ出す計算ツール「SpotNeoMet」を開発したとしています。研究は学術誌「Cancer Discovery」に掲載されました。
鍵は「共有ネオアンチゲン」:がん細胞だけに出る目印
薬剤耐性の変異は、がん細胞の中で“新しいタンパク質の断片”を生むことがあり、これが「ネオアンチゲン(neo-antigen)」としてがん細胞のみに現れる目印になり得ます。
今回の発想は、その目印を免疫系に認識させ、がん細胞を選択的に狙わせる新しい免疫療法の土台にする、というものです。
前立腺がんで検証:有望な3つのネオアンチゲン
研究チームは、標準治療に対して多くの患者がいずれ耐性を示すとされる転移性前立腺がんを対象にアプローチを検証。共通して狙えそうなネオアンチゲンを探索し、3つの候補が実験室での試験やマウスモデルで有望な結果を示したとしています。
「超個別化」とは違う広がり:同じ治療を多くの人へ
がん免疫療法には、患者ごとの変異を前提にした高度に個別化された設計もあります。一方で今回の研究は、多くの患者で共有されやすい薬剤耐性変異に焦点を当てることで、同じ治療設計をより広い患者群に適用できる可能性を示した、という点が特徴だと説明されています。
いま注目すべきポイント(要点)
- 薬剤耐性の原因となる変異を、免疫療法の標的候補に変える発想
- SpotNeoMetが「患者間で共有されやすい耐性変異」を探索
- 転移性前立腺がんで、3つのネオアンチゲン候補が有望と報告
- 個別化一辺倒ではなく「広く使える設計」につながる可能性
次に焦点となること
今回の結果は、候補の見つけ方と前臨床段階での有望性を示した形です。今後は、どの患者層でどの程度共有されるのか、免疫が実際にどこまで選択的に反応できるのか、治療としての安全性・有効性をどう確認するかが焦点になりそうです。
治療に「効かなくなる」変化を、次の一手の“地図”に変える。薬剤耐性と免疫療法をつなぐこのアプローチが、治療抵抗性のがんにどんな選択肢を増やすのか、2025年末の研究発表として静かに注目を集めています。
Reference(s):
Researchers use cancer's drug-resistance mutations to fight tumors
cgtn.com








