ブルガリア、2026年1月1日ユーロ導入へ 硬貨は「騎士・聖人・修道士」
ブルガリアがあす2026年1月1日(木)から単一通貨ユーロに加わり、流通するユーロ硬貨の国別デザイン面には、古代の岩絵、守護聖人、修道士といったモチーフが刻まれます。ポイントは、これらが新作ではなく、1881年に採用された自国通貨「レフ」でも親しまれてきた図柄だという点です。
ユーロ硬貨の「国別デザイン」に何が描かれる?
ユーロ硬貨は、共通デザイン面とは別に、国ごとの意匠が入る面を持ちます。ブルガリアの新しい硬貨には、歴史と信仰、そして近代の精神史を象徴する3つの題材が並びます。
1〜50セント:国家形成期の記憶「マダラの騎士」
1、2、5、10、20、50セント硬貨には、マダラの騎士(Madara Rider)が採用されます。これは8世紀初頭、ブルガリア国家の形成期の初期に作られたとされる岩のレリーフです。
- 騎士がライオンに勝利する場面を描く
- ブルガリア北東部、マダラ村近くの崖に刻まれている
- 1979年からユネスコ世界遺産リストに登録
日々の支払いで最も目にする小額硬貨に、この「出発点の物語」を置く構図が印象的です。
1ユーロ:山に生きた守護聖人「リラの聖ヨハネ」
1ユーロ硬貨には、ブルガリアの守護聖人であるリラの聖ヨハネ(John of Rila、約876〜946年)が描かれます。国内最大の修道院とされるリラ修道院の創設者として知られています。
伝承では、彼は山中で隠遁生活を送り、樹齢を重ねた木の洞(うろ)で暮らしたとも語られます。国家や制度の物語とは違う、静かな「個の信仰」を硬貨に落とし込む選択とも読めます。
2ユーロ:国民的再生を言葉で支えた修道士「パイシイ」
2ユーロ硬貨には、アトス山の正教会修道院の修道士で、ブルガリアの民族的再生(ナショナル・リバイバル)の重要な著作を書いたとされるヒランダルのパイシイ(Paisius of Hilandar、1722〜約1773年)が選ばれました。
さらに、硬貨の縁には次の銘文が入るとされています。
「God protect Bulgaria」
貨幣という日常の道具に、祈りに近い短い言葉が刻まれる。そこに、この図柄選定の温度感が表れています。
なぜ「レフの図柄」を引き継ぐのか
今回のモチーフは、いずれもレフにすでに使われてきたものです。レフは、1881年に採用された通貨で、名称は「ライオン」を意味する古い言葉に由来するとされています。ユーロ移行は制度の切り替えですが、図柄の継承によって、記憶の連続性を保とうとする意図がにじみます。
一枚の硬貨が映す「過去・信仰・言葉」
マダラの騎士が示す国家の起点、リラの聖ヨハネが示す精神性、パイシイが示す言葉による覚醒。ブルガリアのユーロ硬貨は、価値を測る道具であると同時に、何を大切にしてきたかを短い時間で伝える“持ち運べる小さな歴史”にもなりそうです。
Reference(s):
cgtn.com







