シリアのクルド指導者アブディ氏、ダマスカスで軍統合協議
シリアのクルド勢力を率いるマズルーム・アブディ氏が2026年1月4日(日)、首都ダマスカスで政府当局者と会談し、武装勢力の軍統合をめぐる協議を行っていると、クルド主導のシリア民主軍(SDF)が発表しました。統合の“期限”とされた2025年末を過ぎた年明けの協議は、シリアの国家再編の行方を左右する焦点になりそうです。
何が起きた?――SDFが「軍統合プロセスの協議」と説明
SDFは声明で、「SDF指導部の代表団が、軍事統合プロセスに関連する協議の一環として、ダマスカス政府の当局者と会談している」と述べました。代表団にはSDFの最高司令官であるアブディ氏も含まれるとしています。
一方、政府側は現時点で会談に関する声明を出していないとされています。
合意はあるのに進まない――2025年末を目標にした統合の足踏み
アブディ氏は2025年3月、シリアのアフマド・アル=シャラー大統領と、クルドの半自治的な行政体制を2025年末までに政府へ統合する合意に署名したとされています。
ただ、両者の見解の違いが実施を遅らせてきたとされ、年明けの現在も統合の具体像が固まりきっていない状況がうかがえます。
SDFとは――北・北東部を掌握、IS掃討でも重要な役割
SDFはシリア北部・北東部の広い範囲(石油資源が多い地域を含む)を実効支配しているとされます。また、米国主導の国際有志連合の支援を受け、2019年にシリアで過激派組織「イスラム国」(IS)の拠点支配が崩れる過程で重要な役割を担ったと説明されています。
統合が難しい理由――「分権化」要求と当局の拒否、衝突も
軍の統合は、国家の一体性と地域の自律性をどう両立させるかという問題と結びつきます。報道によれば、アブディ氏は合意後も分権化を繰り返し求めてきた一方、シリアの新たな当局(イスラム主義勢力を基盤とする当局)はこれを拒否しているとされます。
こうした緊張のなかで、クルド勢力と政府側の間で衝突が起きることもあったと伝えられています。
「3個師団に分割」案も――2025年12月に浮上した統合のたたき台
2025年12月には、匿名を条件にしたクルド側当局者の話として、ダマスカスがSDFを3個師団と複数旅団に分割する案を提示したと報じられました。女性のための旅団を含むともされています。
同当局者によれば、クルド側支配地域ではSDFの指揮官の下で部隊を展開する想定だといいます。シリア外相はその後、クルド側の回答を検討していると述べたとされています。
また同じく12月、アブディ氏は「このプロセスが崩壊しないよう、あらゆる努力がなされている」と述べ、失敗は起きにくいとの見方を示したと伝えられています。
周辺国の視線――トルコは「国境の脅威」として統合を要求
この問題には周辺国の安全保障上の見方も影響します。トルコ(Türkiye)は、国境沿いでクルド勢力が存在することを安全保障上の脅威とみなし、SDFの国家への統合を公に求めてきたとされています。トルコはシリアの新指導部にとって重要な同盟者だとも報じられています。
今後の注目点――「統合の形」と「指揮系統」をどう設計するか
今回の会談がどこまで前進するかは不透明ですが、論点は大きく次の点に集約されます。
- 統合後の指揮系統:中央軍に一本化するのか、地域での指揮権をどこまで残すのか
- 部隊再編の単位:師団・旅団など、組織の切り分けと現地運用
- 政治体制との整合:分権化をめぐる政治的な折り合い
- 衝突回避の仕組み:治安維持と信頼醸成をどう積み上げるか
期限とされた時期を越えた今、協議は「合意の再確認」ではなく、現実に動く設計図を作れるかどうかが問われる局面に入っているのかもしれません。
Reference(s):
Syrian Kurdish leader in Damascus for talks on military integration
cgtn.com








