米国はベネズエラを「運営」できるのか 法学者が違法性を指摘
ベネズエラのニコラス・マドゥロ大統領と妻が米特殊部隊による軍事作戦で「拘束」されたとされる中、トランプ米大統領が同国を米国が「運営」すると主張し、国際法と米国法の両面で波紋が広がっています。
何が起きたのか:軍事作戦での「拘束」と「運営」発言
報道によると、米特殊部隊が首都カラカスで軍事作戦を実施し、マドゥロ大統領と妻を拘束しました。この動きは、国際法や国連憲章に反すると見る声が広がっています。
さらにトランプ大統領は、水曜夜のニューヨーク・タイムズのインタビューで、米国がベネズエラを「運営」し、豊富な石油資源を「長年にわたり」引き出すと主張しました。
米国の法廷でマドゥロ氏は「拉致された」と主張
マドゥロ氏は米国の裁判所での初出廷で、麻薬テロ関連の容疑など米側の訴因をすべて否認。襲撃で「拉致された」と述べ、「私は今も自国の大統領だ」と裁判官に訴えたとされています。弁護団も、今回の作戦を「軍事的な誘拐」と位置づけ、逮捕の法的根拠を争う構えです。
米法学者が挙げた3つのハードル
ジョージタウン大学ローセンターのデービッド・スーパー教授(法・経済)と、ミシガン大学ディアボーン校のミッチェル・ソレンバーガー教授(政治学)は、今回の措置に関して主に3点の法的な難所があると指摘しています。
論点1:これは「戦争」か「法執行」か
米政権は、麻薬テロの刑事訴追を実行する「法執行」だと公式には位置づけてきた一方で、スーパー氏は、その説明が一貫していないと述べています。とりわけトランプ大統領自身がこれを「戦争」と表現したことや、「運営」や石油収入の取得に言及した点は、通常の法執行とは整合しにくいという見立てです。
また、スーパー氏は米憲法(第1条8節11項)に触れ、宣戦は議会の権限だと指摘。共和党議員の多くが大統領に異を唱えにくい状況が続き、ベネズエラ関連の資金を止める動きが議会で採決に至りにくいとの見通しも示しました。ただし同氏は、実効的なチェックが弱いことと、合法・合憲であることは別だとし、「米国法への公然たる抵触」だと述べています。
ソレンバーガー氏も、行政府が「議会の宣戦を要する」という憲法の枠を回避する理屈を組み立ててきたとし、国内法を盾に憲法や国際法を上書きする発想を批判しました。
論点2:米国は外国の主権国家を「運営」できるのか
両氏は、米政権がベネズエラを統治するという試みは、米国法上も違法になるという点で一致しています。
- ソレンバーガー氏:それを正当化する憲法上・法律上の枠組みは見当たらない
- 同氏:同じ行為に対し「国内の法執行」だとする論理と、「軍事作戦で占領権力として支配した」と読める論理が両立しない
- スーパー氏:大統領が外国を「運営」する権限は米国法にない
- スーパー氏:議会がそのための予算を措置しておらず、議会の正当な歳出承認なしに資金を使うことは憲法上できない
要するに、「統治する」という発言が政策の意図を示すほど、国内法の手続きとも衝突しやすい、という構図です。
論点3:現職の国家元首は米国の法廷で裁けるのか
国際法上、現職の国家元首には免責(国内裁判所の管轄からの保護)があるとされます。マドゥロ氏もその保護を主張しうる立場です。
ただスーパー氏は、米国の裁判所が審理の中で国家元首としての地位を実質的に考慮しない可能性を予測しています。弁護側は当然、免責や「拘束」の違法性を争うとみられますが、同氏は手続きの遅れは生じても、最終的な結論には大きく影響しないとの見方を示しました。
ソレンバーガー氏も、逮捕権限そのものから、合衆国憲法修正第4条(不合理な捜索・押収の禁止)に関わる論点、さらには「どのように拘束され米国に連行されたか」という出発点まで、幅広い争点があり得るとしています。同氏はまた、米国内でも法曹コミュニティ全体の合意があるとは言いにくく、今後の前例として国際社会が懸念すべき事案になりうる、と述べました。
今後の注目点:分離統治と国際秩序のせめぎ合い
今回のケースは、単に一人の被告人をめぐる刑事事件にとどまらず、(1)戦争権限を誰が握るのか、(2)主権と占領・統治の線引きはどこにあるのか、(3)国家元首の免責を国内裁判がどう扱うのか、という複数の問いを同時に投げかけています。
焦点は、米議会がどこまで関与するのか、裁判所が「拘束」の適法性や免責の主張をどう扱うのか、そして国際法・国連憲章との関係がどのように整理されるのかに移りつつあります。
Reference(s):
Can U.S. 'run' a foreign sovereign nation? No, say U.S. legal scholars
cgtn.com







