チュニジアの違法漁業がホホジロザメを追い詰める—地中海で何が起きているか video poster
地中海でホホジロザメ(グレートホワイト)の個体数が急減し、絶滅の危機が現実味を帯びています。国際的な保護対象でありながら、北アフリカ沿岸を中心に毎年数十匹が殺されているとされ、いま「取り締まりの弱さ」と「生活の圧力」がぶつかる現場が注目されています。
新たな調査が示した「チュニジアのホットスポット化」
このほどブルー・マリン財団(Blue Marine Foundation)の研究が、チュニジアを重要なホットスポットの一つとして取り上げました。背景にあるのは、漁業規制の執行の弱さと、経済的な事情が違法な漁獲を後押ししている構図です。
大型の捕食者であるホホジロザメの減少は、海の生態系のバランスに影響を与えるだけでなく、長い目で見れば地域の漁業の安定にも影を落としかねない、と研究は問題提起します。
ビゼルトで増える遭遇—「混獲」から「違法取引」へ
北部の港町ビゼルト(アフリカ最北端の都市とされる)では、漁師のあいだでホホジロザメとの遭遇が増えているという声が出ています。ただ、そこで起きているのは“観察機会の増加”というより、漁業活動の中での偶発的な捕獲(混獲)と、そこから派生する違法漁業・違法取引のリスクです。
ホホジロザメは法的に保護されているにもかかわらず、チュニジアの地元市場で流通しているとされます。漁業コミュニティの一部では、偶然かかった個体が収入源になってしまう状況も語られています。
価格が「手に届く」ことの重さ
地元の漁師は取材に対し、ホホジロザメの肉について「大量の肉が取れ、広く出回っている。主食ではないが沿岸部の一部で食べられている。価格は3〜5ドル程度で、多くの人が買える」と話しました。食文化の一部になり得る“手頃さ”が、保護と現実のギャップをさらに広げているのが見えてきます。
なぜ沿岸での遭遇が増えるのか—気候変動と過剰漁獲の連鎖
科学者らは、ホホジロザメが海の生態系を調整する重要な捕食者であり、その移動が地中海の主要な餌生物の回遊変化と密接に結びついていると指摘します。
しかし現在、過剰漁獲に加えて気候変動が、餌となる魚種の移動パターンを揺さぶっています。海水温の上昇などにより魚が移動ルートを変えると、サメもそれを追って新しいルートを取らざるを得ず、結果として沿岸域に近づきやすくなり、人との遭遇・混獲の確率が高まる、という説明です。
環境エンジニアのハムディ・ハシェド氏は、背景要因として特に過剰漁獲の影響を挙げ、「経済価値の高い魚種が圧迫され、食料資源が減ることで、ホホジロザメは新たな海域へ、しばしば沿岸に近い場所へ移動しやすくなり、人とサメの相互作用が増える」と述べています。
保護と暮らしを両立させるには:現地団体が求める支援
チュニジアの環境団体は、違法漁業への対応を強めると同時に、現場が「続けられる」かたちの支援が必要だと訴えています。具体的には、意識啓発、持続可能な漁法に関する研修、そして支援体制の拡充です。
論点は単純な善悪ではなく、次のような現場のねじれにあります。
- 保護対象でも、混獲は現実に起きる
- 混獲が「収入」になった瞬間、違法の誘因が生まれる
- 餌資源の減少と回遊の変化が、遭遇頻度を押し上げる
地中海という「世界で最も過剰に漁獲されている海域の一つ」とされる場所で、頂点捕食者の減少は何を意味するのか。取り締まり、生活、海の変化が同時に進むいま、答えはひとつに定まりません。ただ、目の前の水揚げと、数年後・数十年後の漁場の姿が、同じ線上にあることだけは確かです。
Reference(s):
cgtn.com








