EU、グリーンランド支援に含み 「米の軍事的強制介入ならNATO終わる」警告
北極の要衝グリーンランドをめぐり、欧州連合(EU)が「デンマークから要請があれば安全保障面で支援できる」との立場を示しました。背景には、米国による軍事的な強制介入が現実味を帯びた場合、NATO(北大西洋条約機構)の土台そのものを揺るがしかねない、という危機感があります。
何が起きたのか:EU防衛担当が「支援可能」と発言
2026年1月、EUの防衛・宇宙担当欧州委員であるアンドリウス・クビリウス氏は、スウェーデンのセーレンで開かれた安全保障会議の場で、デンマークが要請するならEUがグリーンランドの安全保障に関与し得る、との考えを述べました。
クビリウス氏は、もし米国が軍事的にグリーンランドを「強制的に掌握する」事態になれば、NATOは終わりを迎え、大西洋を挟んだ関係(米欧関係)も深刻に傷つく、という認識を示したとされています。さらに、そのような動きは欧州側の強い反発を招くとも述べました。
EUがよりどころにする「相互支援条項」(EU条約42.7条)
ポイントは、EU側が「同盟としての法的な枠組み」を念頭に置いている点です。クビリウス氏は、EU条約42.7条(加盟国が武力侵攻を受けた場合の相互支援義務)に触れつつ、デンマークの要請があれば支援を強化し得る、という説明をしました。
想定される支援の中身
- 部隊の展開(派兵)
- 海軍プレゼンス(艦艇などの展開)の拡大
- 対ドローン能力の強化
- 軍事インフラの拡充
一方でクビリウス氏自身、米国による侵攻が差し迫っているとは考えていない、とも述べています。あくまで「起きてほしくない事態」を前提に、制度と選択肢を言語化した格好です。
焦点は「米国とデンマーク、同じNATO加盟国同士」という矛盾
今回の議論が複雑なのは、デンマークと米国はいずれもNATO加盟国であり、同じ枠組みの中にある点です。両国は今週、グリーンランド問題を協議する予定とされています。
デンマークとグリーンランドは、領土は売り物ではないと繰り返してきました。一方、米国のドナルド・トランプ大統領は、ワシントンがグリーンランドを「所有」しなければならないと主張し、武力行使の可能性を排除しない姿勢を示していると伝えられています。
欧州側の温度感:NATO強化は必要、ただし「機能停止」を前提にしない
スウェーデンのウルフ・クリステション首相は、NATO内の欧州側が同盟強化の方法を協議しているとしつつ、その議論が「NATOが機能しなくなる」という前提に立つべきではない、と強調しました。
また、フランス、ドイツ、イタリア、ポーランド、スペイン、英国、デンマークの首脳は先週、共同声明を発表し、グリーンランドに関する決定は「デンマークとグリーンランド、そして当事者である両者だけ」に属する、と強調しました。声明は、北極の安全保障が欧州と大西洋同盟全体にとって中心的な懸念であり、NATOが同地域を優先事項に位置付け、欧州の同盟国がプレゼンスを増やしている点にも言及しています。
会議の場から見えるもの:小国の不安と国際法の重み
同じセーレンの会議でクリステション首相は、米国のベネズエラでの最近の行動や、トランプ大統領のデンマークとグリーンランドに向けた「威圧的な言辞」を批判し、国際法を損ない、小国にとってのリスクを高めると警告しました。また、米国は長年の同盟国であるデンマークに感謝を示すべきだとも述べ、スウェーデンとしてデンマークを支える考えも示しています。
なお、この安全保障会議は1946年に始まり、スウェーデンの市民防衛組織フォルク・オク・フォルスヴァルが主催。会場のセーレンは首都ストックホルムから北西約400kmの山岳地帯の町です。
今回の一連の発言と声明は、「北極の安全保障」というテーマが、資源や航路の話にとどまらず、同盟の信頼・国際法・意思決定の正当性をめぐる議論へと直結していることを改めて浮かび上がらせています。
Reference(s):
'U.S. takeover would end NATO': EU extends security offer to Greenland
cgtn.com








