トランプ氏、対イラン軍事行動を一時停止 米国の次の一手は
イランの空域一時閉鎖や米軍偵察機の動きが重なる中、トランプ米大統領が対イラン軍事行動の最終判断を「一時見送り」したと報じられています。中東の緊張を左右する“次のサイン”はどこにあるのでしょうか。
いま何が起きているのか:空域閉鎖と偵察、軍の動き
本稿執筆時点(2026年1月16日)までに、イランが空域を一時的に閉鎖したことや、米国の偵察機がイラン国境沿いを飛行していること、中東各地で軍事的な動きが目立っていることが、米国による軍事行動の可能性をめぐる憶測を強めています。
こうした状況の中で、ホワイトハウスは(米時間)木曜日、トランプ氏が情勢を注視し「すべての選択肢を排除していない」と述べたとしています。
ワシントンの揺れるサイン:強硬と慎重の間
米政権はここ数日、武力行使を示唆する警告を繰り返してきた一方、トランプ氏本人の発信は強弱が入り混じっています。
- 米紙ニューヨーク・タイムズは、政権内にイランのデモ対応への強い反発がある中で、トランプ氏が軍事行動を含む対応を検討していると報道しました。
- トランプ氏はSNSで、イラン国内の抗議行動を続けるよう促し、「助けが向かっている」と投稿したとされます。ただ、その意味を問われても詳細は説明しなかったと伝えられています。
- その後、ホワイトハウスで「様子を見る」と述べつつ、イランから「非常に前向きな発言があった」とも主張し、軍事行動の可能性は否定しませんでした。
- 米メディア(Axios、CNN)は、トランプ氏が軍事攻撃に関する最終決定を一時的に保留していると報道。ホワイトハウスが同盟国との協議も含め、攻撃のタイミングだけでなく「実際にイラン政府を弱体化・不安定化させ得るのか」を検討しているとしています。
寧夏大学の牛新春・副学長は、揺れる姿勢は米国の戦略的ジレンマを映していると指摘します。米国の狙いとして「反体制勢力を軸にした体制転換」への期待が先行した一方、直近ではイラン国内の状況が相対的に落ち着き、軍事攻撃が「狙い通りの結果」に結びつきにくい、という見立てです。
米軍の準備はどこまで:通常攻撃だけではない選択肢
現時点で攻撃が承認されたわけではありません。しかし、軍事面の準備・選択肢をめぐる報道が相次いでいます。
CBS:通常の空爆に限らない「幅広いオプション」
CBSは、トランプ氏が通常の空爆を超えた軍事・秘密作戦の選択肢について説明を受けたと報道しました。匿名の国防当局者の話として、戦闘機運用や長距離ミサイル攻撃が中心になり得るほか、サイバー戦や心理作戦(指揮系統、通信網、国営メディアなどを狙う手段)も準備されているとしています。
空母打撃群の位置、前方拠点の動き
抑止や大規模作戦で重要になりやすい空母については、「現時点でイラン近傍に米空母はいない」とされます。中国メディアグループが伝えた関係者情報として、米海軍が空母「エイブラハム・リンカーン」空母打撃群を米中央軍の担当地域へ再配置しており、移動には約1週間かかる見通しだと報じられています。
また、イスラエルのChannel 14は、カタールのアル・ウデイド空軍基地で米軍機の運用が増えていると報道。1月11日夜には、KC-135R空中給油機やB-52戦略爆撃機など複数の機体が同基地から離陸したと伝えています。同基地は湾岸地域で最大級の米軍施設で、長い滑走路を持ち、イラン国境から約200〜300キロとされる位置関係が緊張感を高めています。
The War Zone:本格準備なら防空強化が先行する可能性
軍事分析サイトThe War Zoneは、仮にワシントンが本格的に攻撃準備を進めるなら、地域の防空・ミサイル防衛の強化が先に見えやすい、といった趣旨を指摘しています。大型輸送機で防衛装備を運び込んだり、戦闘機部隊を追加したりする動きが一つの目安になり得ます。
攻撃が起きた場合、何が標的になり得るのか
英国の軍事アナリスト、マイケル・クラーク氏は、米国が攻撃に踏み切る場合、標的としてイランの核施設、イスラム革命防衛隊の司令部、あるいは石油・ガスの重要インフラが挙げられる可能性があると示唆しています。
ただし、牛新春氏は「規模」によって中東全体への影響が大きく変わると警告します。米国は域内に19の軍事基地を持ち、その多くがイランの攻撃圏内にあるとされます。基地があるのは主にアラブ諸国で、仮に報復が広がれば、周辺国を巻き込みやすい構図も浮かびます。
これから注目される“次のサイン”
現段階では、軍事行動をめぐる情報は「示唆」と「保留」が同居しています。報道で触れられている要素から、今後注目されやすいポイントを整理すると次の通りです。
- ホワイトハウスが同盟国との協議をどう進めるか(共同歩調か、慎重姿勢の広がりか)
- 域内の防空・ミサイル防衛の増強が具体化するか(装備搬入や部隊追加の動き)
- 空母打撃群の再配置が完了した後の部隊配置
- サイバー戦・心理作戦に関する兆候(通信障害や情報戦の激化など)
- イラン国内情勢の変化(抗議行動の拡大・沈静化)と、それを米政権がどう評価するか
強硬姿勢を示しつつも「待つ」と言う――この矛盾の中で、次の一手は軍事・外交・情報のどのレバーを優先するかにかかっています。中東の緊張が一段と高まるのか、それとも抑制が働くのか。動きは今週末から来週にかけても、細部の積み重ねで見えてきそうです。
Reference(s):
cgtn.com








