ホックニー氏「狂気」発言 バイユーのタペストリー移送に大英博物館が保護強調
2026年に予定される展示に向け、フランスから英仏海峡を越えて「バイユーのタペストリー」を移送する計画をめぐり、英国の著名アーティスト、デイヴィッド・ホックニー氏が「狂気(madness)」だと警鐘を鳴らしました。これを受け、大英博物館は作品の保護に最大限配慮する姿勢を示しています。
何が起きているのか:移送計画と“リスク”の論点
問題となっているのは、11世紀の織物作品「バイユーのタペストリー」を、2026年の展示のためにフランスからイギリスへ運ぶ計画です。ホックニー氏は英紙Independentへの寄稿で、移送そのものが大きな危険を伴うという立場を明確にしました。
ホックニー氏の主張:「貴重すぎて、危険を冒せない」
ホックニー氏は寄稿の中で、「あまりに貴重で、リスクを取るべきではないものがある」と述べ、バイユーのタペストリーはその代表例だと位置づけました。さらに、作品が「脆(もろ)い」ことを理由に、「動かすことを考えるのは狂気だ」「大きすぎるリスクだ」と強い言葉で懸念を示しました。
大英博物館の説明:経験と体制を前面に
これに対し、大英博物館のニコラス・カリナン館長は、懸念は理解するとしつつ、館内には「世界トップレベルの保存・コレクションのチーム」があり、同種の素材を扱い、ケアする専門家がいると説明しました。
また、大英博物館は毎年「何千件もの貸し借り(ローン)」を行っており、バイユーのタペストリーより古い「古代のフレスコ画や織物」も含まれるとしたうえで、作品の状態と安全が常に最優先だと声明で述べています。
見えてきた対立軸:「動かさない」か「動かして守る」か
今回のやり取りは、文化財の公開と保全のバランスをめぐる典型的な緊張感を映しています。論点を整理すると、主に次の2つです。
- ホックニー氏の視点:脆弱性がある以上、移送自体が“取り返しのつかない事態”につながり得る
- 大英博物館の視点:高度な保存・輸送の知見と体制により、リスクを管理しながら貸借を行ってきた
2026年の展示に向け、注目点は「具体策の見え方」
現時点で表に出ているのは、移送の是非をめぐる価値観のぶつかり合いです。今後は、どのような保存上の配慮が取られるのか、関係者がどんな説明を重ねていくのかが、議論の温度を左右しそうです。作品の公開が持つ意義と、守るべき脆さ。その両方をどう扱うのかが問われています。
Reference(s):
UK artist Hockney warns moving Bayeux Tapestry would be 'madness'
cgtn.com








