チェコ最後の深部炭鉱、1月末で閉山へ――250年超の黒炭採掘が幕
チェコで最後に残っていた深部の黒炭(ブラックコール)炭鉱が、2026年1月末で操業を終える予定です。欧州の産業と地域を支えてきた「坑内採掘の時代」が、いよいよ区切りを迎えます。
何が起きる?:ストナヴァのCSM炭鉱が最終段階へ
閉山するのは、ポーランド国境に近いストナヴァにあるCSM炭鉱。現在(2026年1月)、鉱員たちが地下1km級の坑道から最後の石炭を運び出しています。
坑内鉄道で暗闇へ降り、ヘッドランプの光が鉄骨支柱をかすめ、採炭機械が炭層を切り出す――。オストラヴァ炭田の「日常」だった音と風景が、まもなく消えます。
閉山の背景:安い石炭価格と、深さが生むコスト増
運営する国有企業OKDによると、閉山の直接の理由は採算です。OKDのロマン・シコラ氏(ディレクター)は、次のように述べています。
「世界の石炭価格は低い一方で、掘削はより深くなり、採掘コストは増え続けています」
深部化は埋蔵資源へ到達するための進歩でもありますが、同時に換気・安全対策・運搬などの費用を押し上げ、競争力を削っていく現実があります。
「3年前に閉じるはずだった」——2022年のエネルギー急騰が延命に
OKDはもともと3年前に操業停止の準備を進めていました。しかし、2022年のロシアとウクライナの紛争を受けてエネルギー市場が急変し、炭鉱は短期間の延命を得たとされています。
ただ、その延命は恒常的な需要回復を意味しませんでした。欧州では産業構造の変化と環境対応が同時に進み、石炭が「最優先の資源」だった時代の前提が揺らいでいます。
現場の声:誇りと喪失感、そして国境を越える働き方
ポーランド人鉱員のグジェゴシュ・ソボレフスキ氏は、閉山について「悲しい。きつい仕事だが、良い仕事だった」と語り、操業が続くポーランド側の炭鉱での仕事も検討しているといいます。
採炭面を切り出す機械「シェアラー(切羽採炭機)」を指して「恋しくなる」と話す場面もありました。坑内に響く指示の声や機械音が消えることは、産業の終わりであると同時に、地域の記憶の輪郭も変えていきます。
オストラヴァ地域の「その後」:産業の心臓部が迎える転換
オストラヴァ地域での採掘は18世紀後半に始まり、当時のハプスブルク帝国の一角にあった農村地帯を工業地帯へ変えていきました。ロスチャイルド家を含む投資家が鉄道・製鉄所・関連インフラに資金を投じ、数万人規模の労働者が流入し、中欧の重工業を支える拠点になった経緯があります。
今回の閉山は、その長い流れの終点です。エネルギーと産業の転換が進むなかで、地域は「石炭の次」をどのように形にするのか——雇用、技能継承、土地利用まで含めた調整が問われています。
ポイント(短く整理)
- チェコ最後の深部黒炭炭鉱が2026年1月末に閉山予定
- 背景は石炭価格の低迷と深部化によるコスト増
- 2022年のエネルギー市場の急変で一時的に延命したが、流れは変わらず
- オストラヴァ地域は、250年超の産業史を経てポスト石炭の局面へ
閉山は単なる「施設の停止」ではなく、働き方・地域経済・エネルギー政策が交差する出来事でもあります。今月末、坑内へ向かう最後の列車が、静かに時代の境界線を引きます。
Reference(s):
Last Czech deep coal mine closes as centuries-old industry winds down
cgtn.com








