EU、グリーンランド巡り米に930億ユーロ関税案 市場アクセス制限も検討
米国のドナルド・トランプ大統領が「グリーンランド」をめぐって欧州側に関税を示唆したことを受け、EU(欧州連合)が最大930億ユーロ規模の報復関税や、米企業の域内市場アクセス制限を検討していると報じられました。今週(2026年1月下旬)に予定されるダボス会議での首脳級協議を前に、EUが交渉カードを固める動きとみられます。
何が起きている?――FT報道の要点
英フィナンシャル・タイムズ(FT)は、準備に関与する当局者の話として、EUが以下の対抗措置を用意していると伝えました。
- 最大930億ユーロ(約1076.8億ドル)相当の対米関税の発動検討
- 米企業のEU市場へのアクセス制限(後述の制度活用を含む)の検討
報道によると、EUはこの関税リスト自体は昨年の段階で作成していたものの、貿易摩擦の拡大を避けるため2月6日まで「停止」してきたとされています。しかし、グリーンランドをめぐる米欧間の緊張が強まる中、EU加盟国の代表が日曜日に「再稼働」を議題にした、という流れです。
焦点の一つ:「反威圧手段(Anti-Coercion Instrument)」とは
今回あわせて取り沙汰されているのが、EUの反威圧手段(Anti-Coercion Instrument)です。報道の文脈では、関税に限らず、相手側の圧力に対してEUが段階的に対抗できる枠組みで、米企業のEU市場での活動に一定の制約をかける選択肢につながり得るとされています。
関税は「物」に効きますが、市場アクセスの制限は「企業活動」にも波及し得るため、交渉上の圧力としての性質が異なります。EUがどこまで踏み込むかが、今後の見どころになりそうです。
発端:トランプ氏の関税予告と「グリーンランド購入」発言
報道によれば、トランプ大統領はSNS投稿で、デンマークなど8カ国を対象に、2月1日から10%の関税を課す方針を示しました。さらに6月1日には25%に引き上げ、グリーンランドの「完全かつ全面的な購入(complete and total purchase)」に向けた合意が成立するまで維持すると警告したとされています。
対象として挙げられた8カ国は、デンマーク、フィンランド、フランス、ドイツ、オランダ、ノルウェー、スウェーデン、英国と報じられています(EU非加盟国も含まれます)。
欧州側の反応:連帯表明と強い言葉
米国の関税予告を受け、対象とされる8カ国は日曜日、デンマークとそのグリーンランドに対する「完全な連帯」をうたう共同声明を出したと報じられました。
また、各国の要人発言も相次いでいます。オランダのデービッド・ファン・ウィール外相は、関税を「脅し(blackmail)」だとして撤回を求めたとされ、ドイツのラース・クリングバイル副首相兼財務相も「脅しに屈してはならない」「一線を越えた」と述べたと伝えられています。
EU側では、アントニオ・コスタ欧州理事会議長が日曜日、関税は「大西洋関係を損ない」、EU・米国の貿易合意とも相いれないとの認識を示し、いかなる威圧にも備える考えを強調。さらに、数日内に臨時の欧州理事会を招集し、対応を調整する方針だと報じられました。
今週の山場:ダボスでの首脳協議へ
トランプ大統領は今週水・木(2026年1月21日、22日)に世界経済フォーラム(WEF)出席が予定され、ウルズラ・フォン・デア・ライエン欧州委員会委員長や、NATOのマルク・ルッテ事務総長ら欧州側要人と非公開協議を行う見通しだと伝えられています。
EUが検討する「930億ユーロの関税案」と、市場アクセス制限につながり得る制度のカードは、まさにこの場に向けた交渉の下準備とも読めます。一方で、2月1日・2月6日・6月1日と、複数の日付が並ぶ状況は市場にとって見通しを悪くしやすく、企業側はサプライチェーンや価格への影響を計算しづらくなります。
静かな論点:関税は「政治」と「経済」を同時に揺らす
今回の報道が示すのは、関税が単なる通商手段ではなく、領土や安全保障を含む政治テーマと結びついたとき、同盟関係の調整コストが一気に上がるという現実です。関税の数字が先に立つ一方で、最終的に問われるのは「どの条件なら引けるのか」「引いた後の関係をどう修復するのか」という設計かもしれません。
Reference(s):
EU considering 93 billion euro tariffs against U.S. over Greenland
cgtn.com








