ミネソタ州知事らに米司法省が召喚状 移民取締り批判めぐり捜査
米国で移民取締りをめぐる対立が、ついに「刑事捜査」と「大陪審の召喚状」という形で表面化しました。2026年1月下旬、米司法省がミネソタ州の州知事室や州司法長官室、ミネアポリスとセントポール両市長のオフィスなどに対し、連邦移民当局への協力に関する文書提出を求める召喚状(subpoena)を出したと報じられています。
何が起きたのか:州・市の民主党系幹部に大陪審の召喚状
報道によると、召喚状はミネソタ州のティム・ウォルズ知事、キース・エリソン州司法長官、ミネアポリスのジェイコブ・フライ市長、セントポール市長らの関係オフィスを含む複数(計6つ)の州・自治体オフィスに送達されました。
ミネアポリスのフライ市長がメディアと共有した召喚状の一つでは、「2025年初め以降」に作成・保管された文書のうち、「連邦移民当局との協力、または非協力」に関連する記録の提出が求められています。対象は「記録管理責任者(custodian of records)」に向けた形式で、組織としての文書提出を命じる内容です。
背景:トランプ政権の“取締り強化”と「ツインシティーズ」の緊張
今回の動きの背景には、ドナルド・トランプ大統領(共和党)が最近数週間にわたり、ミネアポリス周辺(いわゆるツインシティーズ)に国境警備隊や移民・関税執行局(ICE)職員を多数投入し、大規模な強制送還の摘発を進めていることがあります。
報道では、職員が雪の残る街中でライフルを携行し、迷彩服や戦術装備、マスク姿で行動する場面も伝えられ、住民による大きな抗議行動(主に平和的)を招いているとされています。
ウォルズ知事とフライ市長の主張:「公共の安全を危険にさらす」
ウォルズ知事とフライ市長は、ICEの作戦を「無謀な政治的パフォーマンス」であり公共の安全を危険にさらす、と非難してきたとされます。また、ウォルズ知事は抗議の秩序維持を呼びかけつつも、逮捕や職務執行の現場を市民が動画で記録し、将来の「不正行為の訴追」に備えたデータベース化につなげるよう促した、と報じられています。
一方、トランプ政権側は、州や市の幹部がICEの作戦を意図的に妨害し、反政府的な扇動者と「共謀」していると非難しているとされ、知事側はこれを否定しています。
焦点:政策批判や発言が「犯罪」になり得るのか
今回の召喚状は、米司法省がミネソタ州の民主党系幹部や、取締り強化に批判的な人物らに対して刑事捜査を開始したことが公になった直後に出されたとされています。
報道では、公職者の政策批判や公的発言を根拠に、連邦検察が刑事上の共謀事件として立件を狙うのは極めて異例だと指摘されています。大陪審での判断が必要であり、検察は「犯罪があったと考える相当な理由(probable cause)」を示す必要があります(裁判での有罪認定より低いハードルとされています)。
さらに、米司法省は別の案件でも大陪審の支持を得られないケースがあると報じられており、たとえばニューヨーク州司法長官レティシア・ジェームズ氏をめぐる再起訴の試みが大陪審に拒まれた、などの例が挙げられています。
現場の温度感:発砲事件、化学剤、誤認逮捕の報道
ツインシティーズでの取締り強化をめぐっては、住民の反発が強まっているとも伝えられます。報道によると、ICE職員が約2週間前、車内にいた米国人女性のルネ・グッドさんを射殺したとされる事案があり、これが反発を一段と深めたとされています。
また、抗議行動への対応として催涙ガスなどの化学刺激剤が使われたことや、黒人・ラティーノ・アジア系の米国人に対する人種プロファイリング(人種など属性による不適切な疑い付け)があったとの批判、さらに日曜に下着とサンダル姿の男性が自宅から誤って連行されたとされる件なども報じられています。
今後の見通し:召喚状が意味すること
召喚状は「有罪」を意味するものではなく、まずは捜査側が事実関係の裏付けを集める段階です。ただし、州・自治体と連邦の関係が緊張するなかで、文書提出や関係者聴取が進めば、行政運営や住民の不安にも影響が及びかねません。
今後の注目点は、次のようなところです。
- 提出を求められた文書の範囲(「協力・非協力」の解釈がどこまで広がるか)
- 捜査の法的根拠(発言や抗議への対応が、どのような構成要件で問われ得るのか)
- 現場の安全確保(取締りの方法、抗議対応、住民との摩擦をどう抑えるか)
- 大陪審の判断(起訴相当とみなすか、歯止めが働くか)
移民政策は、治安、労働、コミュニティの信頼、そして法の支配といった要素が同時に絡むテーマです。今回の召喚状は、その結節点が「政治」だけでなく「司法」の舞台に移りつつあることを静かに示しています。
Reference(s):
Minnesota leaders subpoenaed over opposition to immigration crackdown
cgtn.com








