ダボス会議2026、AIが「スーパーシステム」として議論の中心に
スイス・ダボスで開かれている第56回世界経済フォーラム(WEF)年次総会で、AI(人工知能)は「流行の技術」を超え、金融やエネルギー、不動産、さらにはグローバル・ガバナンスの前提を組み替える「スーパーシステム」として語られています。
「責任ある大規模展開」へ──能力自慢から実装の議論に
会場では、中国の何立峰副首相や、米国のドナルド・トランプ大統領の訪問といった政治面の動きと並行して、「革新的技術をいかに大規模に、かつ責任をもって展開するか」を探るトラックが大きな軸になりました。議論はAIの性能そのものよりも、社会システムに組み込んだとき何が起きるのか、という設計図の話へ移っています。
産業をどう変えるのか:金融・エネルギー・不動産で見えた“具体像”
金融:予測型のリスク管理と、格差への視線
金融分野では、AIによるリアルタイムのシステム分析や、個々の状況に合わせたサービスが前提になりつつある、という見取り図が共有されました。ブラックロックのラリー・フィンク会長は、AIが不平等に与える影響が今後の大きな論点になりうる、という趣旨の問題提起を行いました。
エネルギー:脱炭素と電力網の“最適化”が主役に
脱炭素の議論では、スマートグリッド(電力の需給を賢く制御する仕組み)の最適化や再生可能エネルギーの導入加速に、AIがどう効いていくかが焦点になりました。アラムコのアミン・ナセルCEOは、人材の継続的な訓練が伴ってこそ機会は尽きない、という見方を示しました。
不動産:都市の持続可能性を“運用”で支える
不動産では、都市計画の高度化、建物の予防保全(故障する前に兆候をつかむ)、エネルギー効率の改善など、運用の現場でのデジタル転換が具体的に語られました。派手さよりも「維持管理の地味な仕事」をAIが変える、という温度感が印象的です。
協調か分断か:AIの広がり方そのものが争点に
一方で、会場には「協調の必要性」と「分断への警戒」が同時に流れていました。
- マイクロソフトのサティア・ナデラCEOは、AIはコミュニティや国々にとって「役に立つ」成果に向けるべきだとしつつ、資本やインフラの格差により導入が偏るリスクを指摘しました。
- Google DeepMindのデミス・ハサビスCEOは、国際的な安全基準(安全性の共通ルール)を求め、地政学や企業間競争が開発を急がせていることへの懸念を示しました。
- 哲学者のユヴァル・ノア・ハラリ氏は、AIが「操作」に使われうる危険性を強調し、謙虚さと強固な「修正メカニズム」(誤りを検知し正す仕組み)の重要性を訴えました。
中国の立場:開放と「共に得る機会」を前面に
こうした議論の中で、中国の何立峰副首相は特別演説で、中国が協力的成長のパートナーであることを強調しました。何副首相は「中国の発展は機会であり、脅威ではない」と述べ、市場を生かして機会を共有する意向を示したとされています。さらに、開放の拡大、公平な競争環境づくり、高い国際基準との整合に取り組む姿勢も打ち出しました。
熱狂と内省:試す企業は増えたが、広げるのは難しい
ダボスの空気は強気な期待と、慎重な自己点検が同居しています。ベンチャーキャピタリストのラジ・ガングリー氏が、AIは最終的に生活を良くすると自信をのぞかせる一方、調査では「試験導入はしたが、全社規模に拡大できていない」組織が少なくないことも示されました。理由としては、社内の使いこなしや業務定着の壁が挙がっています。
また、元IMF幹部で現在ハーバード大学に所属するギータ・ゴピナス氏は、生産性の押し上げが期待される一方で、超競争環境の中でそれが「持続的な利益」に確実につながるかは見通しが立ちにくい、という懸念が共有されていると語りました。
「スーパーシステム」の時代に必要なもの
今回のWEFでは、AIが社会の基盤に沈み込み、産業や制度の前提を静かに塗り替える──そんな見立てが、幅広い立場から交差しました。残る論点は、速度ではなく設計です。安全性、公平性、そして人々の暮らしにどう還元されるか。技術の力、地政学の現実、共有できる価値観のあいだをどう歩くのかが、2026年のダボスでいっそう重みを増しています。
Reference(s):
cgtn.com







