IAEAグロッシ氏、2027年の国連トップ選へ—ダボスで「外交の再起動」訴え video poster
国連の存在感が揺らぐと指摘される中、IAEA(国際原子力機関)のラファエル・グロッシ事務局長が2027年の国連トップ交代を見据え、「外交こそ平和と安全保障の鍵だ」と語りました。
2026年1月の世界経済フォーラム年次総会(ダボス会議)の会場で、グロッシ氏(64)がCGTN Europeの独占インタビューに応じ、国連の「能動的な外交(active diplomacy)」をどう取り戻すか、そして国際機関が果たし得る役割について幅広く述べました。
「国連は外交の力を失ったのか」—グロッシ氏の見立て
グロッシ氏は以前、国連が「能動的な外交の能力を失った」と述べたとされます。今回のインタビューでは、その評価をめぐり、より踏み込んだニュアンスを示しました。
発言の骨格はこうです。
- 「能力を失ったわけではない」
- 「ただ、(十分に)行使していないのかもしれない」
- 国際機関は状況次第で「有用な役割」を果たし得る
その根拠として、グロッシ氏は自ら率いるIAEAの経験を挙げました。IAEAは国際社会を代表して一定の役割を果たしてきたとしつつ、「ロシア、ウクライナ、イランをめぐっては、最終的な評価はこれから(jury is still out)」とも語り、見通しの不確実性も織り込みました。
トランプ氏の「国連代替」発言が投げた波紋
インタビューの背景には、国連をめぐる政治的な逆風があります。報道によれば、ドナルド・トランプ大統領は今週、独自の「Board of Peace(平和の理事会)」が国連に「取って代わるかもしれない」と示唆しました。
トランプ氏は「国連は、私が解決した戦争をすべて解決しているべきだった」と述べたとされ、国連の仲介機能や有効性への不満をにじませました。
さらに、入力情報によると米国は2025年にパリ気候協定と世界保健機関(WHO)から離脱しました。こうした「アメリカ・ファースト」路線の継続や、グリーンランドを「所有したい」という意向に言及したとされる点も含め、国際協調の枠組みそのものへの問いが強まっている状況がうかがえます。
「国連が見えないなら問題」—80周年後の国連に突きつけた課題
国連は2025年に創設80周年を迎えました。グロッシ氏は、国連が生まれた目的を「国際の平和と安全の維持」だと改めて位置づけたうえで、いまの世界をこう描写しています。
- 分断(fragmentation)が進む
- 紛争や戦争が「戻ってきている」
- その局面で国連が「どこにも見当たらない」なら、国際社会は困難に直面する
そして「国連をその位置に戻さなければならない。自分にはそれができると思う」と述べ、国連トップ(次期事務総長)への意欲を明確にしました。グロッシ氏は現在、2027年のアントニオ・グテーレス事務総長の後任を目指す候補者だとされています。
なぜIAEA出身者の「外交」論が注目されるのか
IAEAは、核不拡散や原子力の安全確保を中心に、技術と政治が交差する領域で活動する国際機関です。グロッシ氏は今回、「国際的なプラットフォームや国際機関は、必ずそうなるとは言わないが、有用な役割を果たし得る」と述べました。
ここでのポイントは、理想論の押し付けではなく、実務の現場感覚に基づいて「機能する余地」を語っている点でしょう。国連が全面に出にくい局面でも、テーマ別機関や専門機関が“細い道”をつなぎ、対話の糸口を残す——そんな現実的な発想が読み取れます。
これからの焦点:2027年に向けて何が問われるか
国連トップの交代が現実味を帯びるにつれ、議論は「誰がなるか」だけでなく、「国連をどう動かすか」に移っていきます。今回の発言から見える論点は、少なくとも次の3つです。
1)“能力”より“行使”が問題なのか
グロッシ氏は「能力はあるが行使していない可能性」に言及しました。これは、制度の欠陥というより、加盟国の意思、資源配分、危機対応の優先順位が国連の動きを鈍らせているという見方にもつながります。
2)大国政治の揺れと国際機関の信頼
米国の国際枠組みからの離脱(2025年)や国連への批判的発言は、国際機関の正統性に直結します。信頼は「声明」だけでなく、現場での実効性、透明性、継続性の積み重ねでしか回復しにくい——その現実が改めて浮かびます。
3)分断の時代に「対話の場所」を残せるか
「戦争が戻ってきている」という言葉は重い一方で、国連に期待される役割は“万能の解決者”ではなく、少なくとも対話が完全に断絶しないための場を確保すること、という整理も可能です。グロッシ氏のいう「能動的な外交」は、その最低ラインを上げようとする試みとして読めます。
国連の未来は、個人の資質だけで決まるものではありません。ただ、国際社会が揺れる局面で「外交を再起動する」というメッセージが、どの国・地域のどんな不安と共鳴するのか。2026年のダボスで発せられた言葉は、2027年に向けた議論の温度を少し上げたのかもしれません。
Reference(s):
UN chief candidate Grossi says diplomacy key for peace and security
cgtn.com








