米コロラドの移民収容施設で体調不良が拡大、保健当局が調査へ
米コロラド州オーロラの移民収容施設で、胃腸炎や呼吸器症状が広がっている可能性が指摘され、保健当局が調査に乗り出しました。収容施設の医療体制と感染対策、さらに民間企業による運営のあり方が、2026年1月のいま改めて問われています。
何が起きているのか:オーロラ施設で「複数の体調不良」報告
米保健当局は、コロラド州オーロラにある入国管理当局の収容施設で、広範な体調不良が報告されているとして調査しています。移民の権利擁護団体は「十分に治療されないまま、集団的な感染が広がった」と主張しています。
アダムズ郡保健局の報道担当者ジェニファー・ルセロ=アルバレス氏は、デンバー・ポスト紙に対し、施設内で「胃腸器系と呼吸器系の病気の可能性について複数の報告を受けている」と述べたとされています。一方で、施設内の状況や、何人が体調不良なのかといった詳細は明らかにしていません。
「インフル複数例」も:人数は未公表
問題の施設は、1,532床規模で、ほぼ満床に近い状態とされています。デンバー・コントラクト・デテンション・ファシリティ(オーロラ)では、今月(2026年1月)上旬にインフルエンザの複数例が報告されたことを、連邦下院議員ジェイソン・クロウ氏の事務所が確認しました。ただし、米移民・関税執行局(ICE)は影響人数を公表していません。
ICEは、強制送還に関する手続き(審理や退去)を待つ移民を拘束・収容する連邦機関です。
運営は民間企業:過去にも感染症封じ込めで課題
このオーロラ施設は、連邦政府との契約のもと、民間のGEO Groupが運営しています。報道や調査では、同施設は過去にも感染症の封じ込めに苦戦してきた経緯があるとされます。
- 2020年2月:ICEの検査で、インフルエンザで隔離された人が68人、流行性耳下腺炎(おたふく風邪)で70人いたと、プロパブリカの調査報道が伝えました。
- 2019年:4か月で3回の集団発生(おたふく風邪、水ぼうそうなど)があったとされています。
感染症だけではない:医療対応への苦情と「死亡例」にも言及
オーロラ施設をめぐっては、感染症対応に加え、医療ケア全般への苦情が繰り返し出てきたとされます。ACLU(米国自由人権協会)の2024年の報告は、医療の不適切対応、歯科医療の放置、メンタルヘルスケアの不足などを挙げ、少なくとも2件の死亡に影響したと記しています。
報告に記された事例の一つでは、職員が被収容者の薬を突然中止し、誤った手順に依拠し、発作を含む症状を「仮病」とみなしたとされています。施設医療の判断と連携の質が、命に直結しうる現実を示す内容です。
ICE全体でも相次ぐ集団発生:研究・各地の事例
オーロラの問題は、ICEの収容システム全体に広がる構造的課題の一部だとみる向きもあります。
- UCSF(カリフォルニア大学サンフランシスコ校)による研究(医学誌JAMA掲載)は、2017年1月〜2020年3月にかけて、22施設中17施設で「ワクチンで予防可能な病気」の持続的な集団発生があったとしています。中には水ぼうそうが33か月続いた施設、インフルエンザが通年で伝播した施設もあったとされます。
- 2025年12月:カリフォルニア州マクファーランドのゴールデン・ステート・アネックス施設で、疥癬(かいせん)の発生が報告され、郡の公衆衛生当局が施設の医療スタッフと連携して拡大防止に当たったとされています。
- 2025年7月:ワシントン州タコマのノースウエストICEプロセシングセンターで、結核の疑い例が7件確認されたとされます。アンカレッジの施設から移送された被収容者が活動性結核で入院した例も報告されています。
背景にある「運営構造」:営利企業の比率上昇
移民追跡データによれば、2025年1月時点でICE被収容者の86%が営利企業運営の施設に収容されており、2020年1月の81%から上昇したとされています。市場はGEO GroupとCoreCivicの2社が大きな比重を占める構図だといいます。
また、GEO Groupは2022年だけでICE関連契約から10億5,000万ドルの収益を得たとされています。感染対策や医療の質が課題化するほど、「コスト」「契約」「監督」の関係が注目されやすくなります。
監督と政治:市議会の決議、議会監視をめぐる訴訟も
地元政治も動いています。2026年1月12日、オーロラ市議会はICEの運用を非難する決議を可決し、市内での事案として、致死的銃撃事件や、GEOのICE収容施設で管理されない疾病流行、その他の「行き過ぎ」とされる事例を挙げたとされています。
さらにクロウ下院議員は、1月11日の週にトランプ政権を相手取って提訴し、オーロラ施設を含む移民収容施設について、議会による監督(オーバーサイト)が妨げられたと主張しています。感染症や医療の問題が表面化した局面ほど、現場の実態にアクセスできるのかが焦点になります。
今後の焦点:発生規模と対応の透明性
現時点で鍵になるのは、①症状の原因(インフルエンザ以外を含むのか)、②感染の規模、③隔離・治療・衛生対策が適切に機能しているか、④外部監督の実効性、の4点です。保健当局の調査結果と、ICE側の情報開示の範囲が、次の議論の土台になりそうです。
Reference(s):
Sickness spreads as U.S. immigration detention health crisis worsens
cgtn.com








