米国、シリアからの全面撤収を検討か SDFの変化とIS拘束者リスク
米国がシリア駐留部隊の「全面撤収」を検討していると、米紙ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)が今週(1月22日)報じました。対IS(「イスラム国」)対応の枠組みが揺らぐ中、拘束者管理や治安の空白がどう扱われるのかが焦点になりそうです。
何が報じられたのか
WSJは米当局者の話として、米国がシリアから米軍を完全に引き揚げる可能性を検討していると伝えました。記事によると、米側がシリアにとどまる「理屈(rationale)」が弱まっている、という認識が背景にあるとされています。
また、WSJによれば、ホワイトハウスは取材要請に直ちにはコメントしなかったとのことです(ロイターの情報も含む)。
背景:SDFの役割が変わりつつある
報道が挙げる大きな理由の一つは、米国と連携してきたシリア民主軍(SDF)をめぐる状況の変化です。WSJは、SDFがシリア北東部で「領域の大半を失った」ことに触れ、米国が駐留を続ける根拠が薄れているとしています。
SDFは、ISの打倒で米国と連携した部隊とされています。一方で、報道では、政府主導の攻撃によりSDFが解体に直面しているとも伝えられています。
米特使の発言:「当初の目的はほぼ期限切れ」
さらに、米特使のトム・バラック氏が今週(1月20日)、「SDFの当初の目的は大部分が終わった」と述べ、米国はシリアに長期的にとどまる利益がない趣旨の見解を示した、と報じられました。
もう一つの懸念:IS拘束者約9,000人と収容施設
WSJは、シリア北東部で起きた「刑務所からの脱走」も撤収検討の理由として挙げています。SDFは北東部各地の拘束施設で、約9,000人のIS拘束者の警備を担ってきたとされます。
ただし報道では、SDFの「退場(departure)」を受け、政府主導の部隊が施設を引き継ぐ場合に、同種の脱走が再発しうるのではないかという懸念が示されています。拘束者管理は、軍事判断だけでなく地域の治安設計にも直結する論点です。
今後の見どころ:判断のタイミングと「引き継ぎ」の設計
現時点で、全面撤収がいつ、どのような条件で判断されるのかは、報道内容からは読み切れません。ただ、今回の報道が示す論点は大きく分けて次の3つです。
- SDFの役割変化により、米国の駐留目的が再定義されるのか
- IS拘束者を抱える収容施設の管理を誰が担い、どう事故を防ぐのか
- ホワイトハウスが公式に方針を示すのか(現時点ではコメントなし)
「撤収するかどうか」だけでなく、「撤収するとして何を残し、何を引き継ぐのか」。その設計が問われる局面に入りつつあるのかもしれません。
Reference(s):
U.S. weighs complete military withdrawal from Syria, media reports
cgtn.com








