WHO事務局長、米国の脱退理由を「事実でない」 未払い拠出金も焦点に
米国が世界保健機関(WHO)から「正式に脱退した」と発表したことを受け、WHOのテドロス事務局長は2026年1月24日(現地時間)に、米側が挙げた脱退理由を「事実でない」として反論しました。手続きの成否や未払い拠出金をめぐる論点が残り、今後の協議の場はWHOの理事会や総会へ移ります。
何が起きた?――米国の「正式脱退」発表とWHOの反論
米国のマルコ・ルビオ国務長官と、ロバート・F・ケネディ・ジュニア保健長官は2026年1月22日、共同声明で「米国はWHOから正式に脱退した」と発表しました。声明では、WHOが新型コロナウイルス対応で「数々の失敗」をしたことや、「繰り返し米国の利益に反する行動」を取ったことなどを理由に挙げています。
これに対し、テドロス氏は同24日にX(旧Twitter)への投稿で、米国の判断は「米国と世界の双方を、より安全でない状態にする」と警鐘を鳴らしました。さらに「残念ながら、米国の脱退決定の理由として示された内容は事実ではない」とし、WHOは米国を含む加盟国と「主権を十分に尊重しながら関与してきた」と主張しています。
一方で、WHO側は現時点で「米国の脱退が発効した」とは確認していない、とされています。
カギは「1年の通告」と「当該年度の財政義務」
今回の対立は、米国がWHOから離脱するための手続きが、形式上は進んだ一方で、財政面の条件が満たされているかが争点になっている点が特徴です。
WHOによれば、米国は1948年にWHOへ参加した際、
- 脱退には「1年の事前通告」が必要
- 加えて「当該会計年度の財政義務を全額履行」していることが条件
という枠組みを前提にしてきたと説明されています。
米側は、ドナルド・トランプ大統領が1年前に脱退に向けた大統領令へ署名しており、その「1年のプロセスが2026年1月22日に完了した」と位置づけています。ただし共同声明では、WHOが「脱退を承認していない」こと、さらに「補償(compensation)を求めている」と不満も示しました。
未払い拠出金:約2億7800万ドルが残るという指摘
手続きの論点をさらに複雑にしているのが、拠出金の未払いです。WHOの広報担当者は、2026年1月21日に「米国は2024-2025年の分担金として請求された額を、現時点で支払っていない」と確認したとされています。
米国メディアNPRの最近の報道として、延滞額は約2億7800万ドルにのぼる、との情報も示されています。WHO側は、こうした状況を踏まえ「脱退通告は論点を提起する(raises issues)」と述べ、次の検討の場を明らかにしました。
- 2026年2月のWHO執行理事会(Executive Board)
- 2026年5月の世界保健総会(World Health Assembly)
「安全保障」ではなく「保健の連携」の問題として広がる
テドロス氏は、米国の脱退が「米国と世界をより安全でない状態にする」と述べています。ここで言う「安全」は、軍事というより、感染症対策や医療体制、情報共有などの公衆衛生の連携が弱まることへの懸念として読めます。
一方、米国側はコロナ対応の評価をめぐってWHOへの不信を前面に出しました。今回の構図は、「国際機関の機能不全」批判と、「国境を越える健康課題には協調が必要」という反論が、同じテーブルでぶつかる形になっています。
今後の見通し――対立の着地点はどこに
現段階では、
- 脱退が法的・手続き的にいつ有効と扱われるのか
- 未払い拠出金がどう整理されるのか
- 米国が将来「参加に戻る」余地があるのか
といった点が、2026年2月以降の会合で議論される見通しです。テドロス氏は「将来、米国がWHOへの積極的参加に戻ることを願う」と述べる一方、WHOは「すべての人々の基本的人権としての健康」という中核的使命にコミットし続けると強調しています。
国際ニュースとしては、脱退の是非だけでなく、「加盟のルール」「財政」「危機時の連携」をどう設計し直すのかという、より制度的な問いが浮かび上がっています。
Reference(s):
cgtn.com








