米東部の冬の嵐で発電所停止21GW PJMが節電要請、電力価格も急騰
米国東部で週末にかけて広がった冬の嵐の影響で、発電所の停止(出力低下・停止)が急増しました。送電網の運用を担うPJMインターコネクションは、需要の伸びに対して供給余力が細り、一部顧客に節電を求める「事前緊急命令」を出しています。
何が起きた?PJMで発電停止が約21GW
PJM(米東部〜中部大西洋岸の広域送電網、約6,700万人を供給)は日曜日(1月25日)午後、約21ギガワット(GW)の発電停止を報告しました。大半は「強制停止」に分類され、需給が逼迫しやすい状況だったといえます。
この停止分は、日曜午後の需要(127.4GW)の約16%に相当します。数字だけを見ると、電力システムの“余白”が一気に削られた構図です。
節電要請の中身:電力を「使わない」ことが供給対策になる
PJMは日曜午後、需要を抑えるためにカーテイルメント(需要抑制)プログラムの一部顧客へ、電力使用の抑制を命じる事前緊急命令を出しました。対象の顧客は、重要な時間帯に使用量を下げる代わりに対価を受け取る仕組みです。
- 供給を増やす(発電所を動かす)だけでなく、
- 需要を下げることで停電リスクを抑える
という、近年の電力運用で存在感が増している手法が、実際に前面へ出た格好です。
背景は「寒波×燃料制約×天候」:ガスが足りない、太陽光も出にくい
専門家(PA Consultingの送電網専門家Pieter Mul氏)は、米東部は天然ガスの“地場供給”が潤沢ではなく、パイプライン網に依存しやすいと指摘します。そのパイプラインは、長引く厳寒期には歴史的に混み合いやすい(制約が出やすい)という事情があります。
さらに、ボストン、ニューヨーク、フィラデルフィア、ワシントンDCなどの主要都市で雪やみぞれが広がり、午後は雲が厚くなって太陽光発電の出力にも影響が出たとされます。燃料面(ガス)と天候面(太陽光)が同時に効いて、電源の選択肢が狭まった形です。
電力価格が急騰:PJM・NY・ニューイングランドで400〜700ドル/MWh
需給ひっ迫を映すように、日曜午後の卸電力価格は、PJMとニューヨーク、ニューイングランドの系統で1メガワット時(MWh)あたり400〜700ドルへ急伸しました。運用側は、需要が想定(予測)を上回り続けていることを値上がり要因として示しています。
ニューイングランド(ISO New England)では、午後1時45分(米東部時間)の需要が約20.2GWとなり、同日後半に見込んでいたピーク予測(19.5GW)を上回りました。「予測を上回る需要」は、スポット市場での高値調達を招きやすく、コスト面でも緊張が高まります。
ニューイングランドは油火力が4割:ただし“補給の弱点”も
天然ガスへのアクセスが制約される中、ニューイングランドの発電は約40%が石油火力(油焚き)に寄ったと報告されています。一方で通常主力となる天然ガスは約30%にとどまりました。
ただ、Mul氏は、ニューイングランドのディーゼル燃料(燃料油)は、危険な冬の気象条件下では枯渇し得る一方、補給も容易ではないと見ています。ISO New Englandの余剰供給力は約1.1GWまで低下し、数GWあったとされる従来見積もりから縮小しました。
バージニアで一時1,800ドル/MWh:データセンター需要も影響
ワシントンDC近郊でも価格高騰が目立ち、ドミニオン・エナジーのバージニア地域では、日曜早朝に1,800ドル/MWh超の時間帯がありました。前日の土曜朝(約200ドル/MWh)からの急変です。
同地域は、人工知能(AI)などの計算処理を支えるデータセンター集積地として知られ、需要増の一因になっているとされます。需要の“底上げ”が起きている局面で寒波が重なると、価格変動も大きくなりがちです。
家庭への影響:日曜時点で約100万件が停電
広域送電網の緊張は、地域の配電線(家庭や事業所に電気を届ける末端)にも影響し、PowerOutage.usによると日曜時点で約100万件が停電。テネシーで30万件超、ミシシッピ、テキサス、ルイジアナでそれぞれ10万件超が報告され、ケンタッキー、ジョージア、バージニア、アラバマなどにも影響が及びました。
今週の焦点:あす火曜日、PJMが冬の需要記録を予測
PJMは、今週火曜日(1月27日)に冬の需要として過去最高を見込むとしています。背景にはデータセンターを含む需要の増加があるとされます。ドミニオン側も、今週の厳しい寒さと大雪が、同社の運用にとって大きな冬のイベントになり得るとの見方を示しています。
週末を通じて米各地の卸価格が高止まりしたことは、需要が予測を超えたとき、電力会社がスポット市場で高値調達を迫られる局面があることも改めて浮き彫りにしました。今後は、燃料の確保(ガス・燃料油)、予備力、需要抑制の発動範囲、地域停電の復旧状況が、短期の見どころになりそうです。
Reference(s):
cgtn.com








